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第5話
「……は?」
「だって、たまにしか会えないし、連絡もほとんどない。会えばあったで抱き合うだけだし、すぐ帰るじゃないか」
「ちょ、ちょっと待て!」
遥斗は勢いで言っていて、悲しくなってしまう。また、ポロリと涙があふれた。溢れる寸前だった想いが、とうとう決壊した。
慌てた泰生はベッドに座り、まだ素肌をさらしていた遥斗を、シーツで包んで抱きしめる。落ち着かせるように、背中をトントンとあやすようにたたいた。
泰生はしばらく考えこんでいたが、おそるおそる遥斗に聞いてきた。
「……もしかして、俺はお前に好きだと伝えていなかったのか?」
「えっ?」
遥斗は自分に都合のいい幻聴を聞いた気がした。
「……そんなの、初めて聞いた」
「すまない。こんなに不安にさせていたんだな。最近は元気なさそうで、遥斗も仕事で疲れているのに、無理をさせていたのかと思って、我慢していたんだ。」
遥斗は驚いて、涙が止まってしまった。泰生の遥斗を抱く力が少し強くなる。
「我慢していたの?」
「ああ。遥斗に触れずにはいられないから、せめて負担にならないようにと思っていた。」
「負担?」
「一度だけにしようと思って。でも顔を見れば、際限なく求めてしまいそうだった。バックからなら、遥斗も翌日に負担はかからないと思っていたから。」
遥斗は、じわじわと期待してしまう。
「……セフレだから、欲の発散の為だけかと思ってた。」
「すまない。遥斗も俺と同じ気持ちだと思っていた」
「えっ?」
「どんなに遅くても会ってくれるし、別れる時は寂しそうに見つめてきてたから」
遥斗はとっくに気持ちがバレていたことが気恥ずかしくて、少しだけ拗ねてみせた。
「でも、キスくらいはして欲しかった」
「俺もしたかった」
「ん……」
優しくキスされて、遥斗の胸は震えた。官能をもたらすものではなく、慈しまれていると実感できるキスだ。
遥斗は、泰生を失うのが怖くてずっと胸に秘めていた言葉をついに口にした。
「好きだよ、泰生。失うのが怖くて、ずっと言えなかった。やっと言えた……」
「俺も遥斗のことが好きだ。不安にさせてごめんな」
「嬉しい……泰生」
しばらく二人は、通じあった気持ちを噛み締めるように抱きしめ合った。
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