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第13話
この期に及んであがく御影を咎めることなく、天城は穏やかに微笑んでいた。だからちょっと甘えたくなってしまうのもむりはないと、自分でもおかしな言い訳をしてしまう。
「……運命の番だから、ミルクが滲むんだろうか。こころより身体が反応するから、運命なのか? それが恋なのか?」
理屈っぽいなと天城自身も辟易するけれど、根拠がほしい。
焦れた身体が天城をほしがるのは事実だが、もっとはっきり目に見えるかたちで納得させてほしい。
「理論だてて説明されたら信じます? 怖がらせるつもりはないけど、それっぽい言葉を並べてエビデンスを仕立てて、抑制剤を開発するあなただって騙すこともできますよ。俺、営業職なんで口はうまいです」
「……確かに」
妙なところで納得してしまった。こっちは日頃から化学式と数式を相手に格闘し、よりよい結果を導き出すために研究を重ねている。
理論武装なら絶対に勝てるはずなのだが、天城のように情につけ込んだ物言いをしてくる男に体当たりされたら、絶対に勝てない。丸め込まれてしまう。
「だからこそ、俺はいくらでも嘘をつけることも知ってる。でも、あなたの身体は違う。本能的に嫌悪する相手に、こんなに目を潤ませたりしないと思うけど」
「生意気だぞ」
眉間に皺を寄せると、天城は頬をゆるめてそっとくちびるを吸い取ってきた。
「先輩のこと、なにがあっても気になってしまいます。ただの俺の思い過ごしで勘違いだから目を覚ませと自分に言い聞かせても、だめなんだ。絶対あなたがこころにいる。夢のなかにも出てくる。いつだって、どんなときだって、かならず御影さんのことを考えてるんだ。俺の感情は間違いなく恋。だから、いまもあなたとくっついてたし、少しでも深く繋がりたい。御影さんは俺だけのものだって確認したい。何度でも。御影さんは?」
やさしいキスの合間に囁かれたら、どうしたって視界が潤んでくる。
自分でもわかっている。一から十まで説明がつく恋なんてあり得ない。瞬時に揺れ動くこころを逐一説明できるようだったら、その時点でもう恋ごころは醒めている気がした。
だから御影も、おずおずと天城の逞しい首にしがみついた。
「私も……したい。きみともう一度、気持ちいいことがしたい。今日もミルクが出るようなら、もう諦める。私はきみの番なんだろうな」
「認めるんじゃなくて、諦めるんだ」
くすくすと笑い出す天城が、ちょんと人差し指で天城の鼻をつついてきた。
「それ、なんかめちゃくちゃそそられる。あなたほど美しくて理知的な大人が、俺みたいな男に屈するなんて。……安心して。あなたのいいところ、ぜんぶ見つけ出して、快感の虜にするから。悦くて悦くて、『もっとしてほしい』って腰を振って泣いちゃうぐらい。……ううん、やっぱり諦めないでほしいな。俺なんかに簡単に屈しないで」
「どっちなんだ」
「複雑なんです、俺も」
言うなり、熱くて大きな舌でちろっとくちびるを舐め上げられ、背筋が震えた。
ただ重ねるだけでも十分気持ちいいキスなのに、天城の厚めのくちびるはやわらかくてしっとりと濡れ、ひどく官能的だ。角度を変えて押し当てられるたびに、胸の奥に熱い塊が生まれる。ちょっとしたことでは溶けそうにない塊は、欲情そのものだ。
「ん、っ……ん、――ふぁ、っぁ……ぁ」
割り挿ってくる舌に搦め捕られ、息が苦しい。反応を試すみたいに、最初はちゅるっと軽く吸うだけのくちづけが、しだいにねっとりと舌全体を擦り合わせる濃密さに変わり、頭がくらくらしてくる。
目を閉じていると、くちゅ、ちゅく、と吸い上げられる音が脳内にやたらと響くせいで羞恥心が高まり、慌てて目を開いた。睫毛が触れそうな距離で、天城が微笑んでいる。
「そのまま目を合わせて、舌を突き出して」
「……っ、ん……」
頬が燃えるように熱い。そろそろと舌を突き出すと、天城がちゅぷりと先端を舐ってきて、唾液を吸い上げる。視線は至近距離で絡めたまま。胸の奥に押し込めた熱情がぜんぶバレてしまいそうな近さでちゅくちゅくと舐られ、じゅわりとした唾液を絡め合い、羞恥と快感に身悶える隙にシャツの前を開かれ、アンダーシャツの上から胸の尖りを探られた。
「あ、あ」
「もうふっくらしてる……キスだけでこんなになってくれるなんて、俺のこと、少しは好き?」
「う……ん……」
「はっきり言って」
くるり、くるりと円を描くような指先にめまいがしてくる。だんだんと中心に向かってくる長い指は、しまいに敏感な御影の肉芽をしっかり捉え、きゅうっと根元からつまみ上げてきた。
「あ、っ、ん、ぅ、う、バカ、最初から……そんな……」
「えっちな声。気持ちいい?」
「んぅ、っん、っ、んぁ、ねじるな、あぁっ、とけ……ちゃい、そうだ……きもち、い……」
「ですよね。もう声がぐずぐずだもん」
鼻にかかる甘えた声が自分でも恥ずかしい。だけど、乳首をくりくりと揉み込まれるたびにじゅわじゅわとした快感が身体の奥からこみ上げてきて、じっとしていられない。
うなじがしっとりと汗ばんでくるのがわかり、無意識にのけぞる。
天城がアンダーシャツをまくり上げてきて、ふっくらと腫れ上がった乳首を目の当たりにし、楽しそうに笑う。
「御影さんのおっぱい、今日も最高にえっち。舐めちゃってもいい?」
「……ん……舐めて、くれ……」
「かわいい声……犯しちゃお」
とたんにべろりと大きく舐め上げられて、怖くなるほどの快感がぶわりと広がって頭から呑み込まれた。
「あ、あ、あ……っ……! や、や、だめ、噛んだら……っ」
熱を孕んでふくらんだ先端をこりこりと噛み転がす天城の頭を、両手で抱え込む。あまりに強い刺激が怖くて押しのけたいのに、ちゅるっとやさしく啜られる絶妙な心地好さに吐息を漏らし、逆に引き寄せてしまった。
すると、またがじりと噛みつかれ、もっと乳首が大きくなってしまいそうだ。
「あー……おいしい……かわいい……。噛んでるだけで俺もバキバキになりそう。ね、触ってもらえます?」
「……ん、あ、……ほんと、だ……おっき、い」
彼の下肢に手を這わせると、ジーンズ越しでも大きく昂った熱の塊がわかる。ずしりと重たいそれが育ちきると、とてもうしろでは収めきれないほどの長さと太さなのに、根元まで深く咥え込んでしまいたくなるから不思議だ。
劣情に煽られた震える指でジッパーを下ろすと、天城が腰を軽く揺すり、ジーンズを脱ぎ落とす。ボクサーパンツの縁から勃起した肉竿をぶるっと飛び出させ、御影の臍に押しつけてきた。
漲った亀頭で臍のくぼみを擦られる卑猥さに、声が掠れそうだ。
ぐにゅ、にゅぐ、と張り詰めたペニスが触れるたびにうなじが熱い。全身の産毛がぞわぞわするほどに感じていることが、自分でもわかる。
そのまま天城は片手で御影の乳首を揉み込みながら、すべての服を取り払い、汗ばむ身体を重ねてきた。
「……ッ……!」
大きくしなる性器が自分のそこに触れ、ずるりと擦られる勢いで射精してしまいそうだ。
「あ、ミルク」
「え、……」
「先輩のミルク、滲んでる」
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