御影が唐突に腰を引いたことでずるりと太竿が口から抜け出て、とつぜんの空虚感に「――あ」と声が漏れた。 　腰を抱かれ、ふたりしてもつれるようにベッドに移動し、どさりと厚みのある身体がのしかかってきた。 　こんもりと大きな影に覆われた瞬間、喰われそうだと本能的な恐怖ががこみ上げるが、真剣に逃げたいわけじゃない。 　真面目な顔つきの天城は御影の膝を掴んで左右に割り広げ、そのまま、ぐっと押してきた。ふわっと腰が持ち上がって身体をほとんど二つ折りにされ、性器どころか、秘部をすべてさらす格好に頬が燃えそうだ。 「ひくひくしてる。かわいいな。このあいだ一度だけ繋がったのが嘘みたいに小さい孔だよね。いーっぱい舐めちゃおっと」 「あ……ぁ……っ！」 　指で開かれた孔に舌がねじ込まれ、ちゅるりと啜り上げられるだけで理性のヒューズなんか簡単に吹っ飛んでしまう。 　快感の球を一突きしてくるような天城の迷いのない舌遣いで、身体中にぞくぞくするほどの心地好さが広がっていく。自分のそこもたいがい熱を帯びているのだろうが、天城の舌はもっと熱い。 「っ、ん、っぁ、っあ、あ、あま、ぎ……っぁん、っ、きもち、い……っ」 「うん、気持ちいいね……俺も御影さんのお尻舐めてるだけで×××がズキズキしてくる……ん、っん、ほら、唾液を垂らすとどんどん吸い込んでいくよ。トロトロになってる。やわらかいな……こんないやらしいお尻で俺を搾り上げるんだ？　天城先輩のぜんぶを今夜もらわないと、俺、おかしくなりそう。もし他のやつがさあ……こんなふうに天城さんの丸っこくてかわいくてエロいお尻を掴んで腰振ったら……うん、俺、そいつを間違いなく殴り倒す。だって……ちゅ、ちゅ、ここも……ちゅ、……ってして、あなたをよがらせるのは俺だけだもん」 「だめ、だめだ、あっ、あっ、むずむずする、っから、もぉ、天城の、……あまぎの……」 「俺の、なに？　俺がほしい？　詳しく教えて。さっきみたいにいっぱいおしゃべりして。真面目で綺麗なあなたが額に汗を滲ませて、えっちなこと言い続けるのが好き」 　御影の媚肉を舌と指で押し広げながら、とろーっと唾液を垂らしてくる男の淫らさは言葉にならない。 「あまぎの……ほしい……きみのおおきな……もの、ここ、挿れてくれ」 　羞恥を堪え、懸命に言い募った。「お願いだから」と何度も繰り返した。 「おおきなものってなに？」 「……ッいちいち訊くな……！　恥ずかしくて死にそうだ……」 「俺しかいないから、どんなえっちなことでも言って。すぐ忘れちゃうから大丈夫」 「う、ん……っん、あ――……きみの……あ、天城の……おっきな、××××で貫かれたい……っん、んぅ！　あっ、あっ、壊れ、――る……っ！」 「壊れない壊れない、大丈夫……ちゃんとゆっくりするから」 　真上から太竿で刺し貫かれ、みちみちと食い締めてしまう。あまりの質量に息が止まりそうだ。薄い胸を激しく上下させて酸素を取り込み、深く吐き出す瞬間を狙って天城がずんっと突いてきた。 「――は……っぁっ……っ挿ってくる、はいってくる……おっきいの、あっ、私の中、もっとずんずんして……くれ……っ天城の、天城の極太××××、っん、っう、すごい、硬くて、熱くて……っ、ぁぁっ……だめだ、うねうねの筋まで……感じる……っ」 「ね、ぴったりだね俺たち。最高だよ先輩……こうしてゆーっくり突いてあげると、天城さんのお尻の最奥が蕩けて俺の×××にちゅっちゅて吸いついてくるんだ。わかる？　こういうの、なんて言うんだろ。キスハメ？　いまさらだけどゴムつけたほうがいい？　あー……すっごい締まる……天城さんとの生ハメセックス、癖になる……いつか天城さんのここ、縦割れしちゃうまで、俺としようね」」 「っん、んっ、いい、っ、おく、あぁっ、とど、く……っ」 　ずちゅ、じゅぽ、とねじ込まれていくたび、肉壷がいやらしくわななき、熱い涎を垂らすのが自分でもわかる。オメガの身体が男を受け入れるために、ここまで変化するとは知らなかった。 「きもちいー……ずっとしてたい。あなたが孕むまで」 「イく、もぉ、だめだ、イきそうだから……っ」 「ん、俺も一緒がいい。中……出していい？」 「出して、中……っぁ、ぁ、っ、あっ、あっ、はげし、だめ、だめ……イく――イくイくイく……！」 　息を切らして腰を打ち付けてくる天城に両足を絡みつけ、思いきり引き絞った。 　突かれれば突かれるほど声があふれ、快感が暴走する。きゅうっと締めつければ内側を抉る男根がより逞しくなり、御影は声を掠れさせながら極みに昇り詰めた。 「あっ、っ、ッ、――ん、っぅ、イ、く、い、いい……っイってる、あまぎ……っイってる、から……ぁ……っ」 「ん。いっぱい注いであげる」 　どちゅどちゅと突き込まれ、目の前が真っ白になる。喉がからからに渇き、めまいがするほどの絶頂感に酔いしれる御影の中を捏ねて、貫く天城が息を呑み、最奥でぐっと亀頭をふくらませて、次の瞬間どくどくっと射精し始めた。 「ああ……っぁ……っぁ――……っ」 「は……とまんない」 　熱いしぶきがどろりと最奥にかかり、狂おしさに目頭が熱くなる。泣きじゃくりながら達する御影を抱き締めながら、天城は執拗に揺すってくる。天城の精液は多すぎて、受け止めきれない。尻の狭間からとろりとこぼれる感触がいやらしくて、たまらなく好きだ。 「好き……好きです、先輩。御影さん、大好き。一生あなたに尽くします。なんでもします。言うことはぜんぶ聞きます。だからお願い、俺だけの番になって。恋人になって」 「……そんなに自分を安売りするな。一生、恋人……のままか？」 　なんの気なしにそう呟くと、繋がったまま、ぱっと顔をほころばせた天城が大型犬のように抱きついてくる。 「プロポーズもさせてくれます？　だったらいま、ここで」 「ま、待て、いまはまだいい」 　そのまま生涯を約束しそうだったから、慌てて彼の口を両手でふさぐ。それから可笑しさに負けて、互いに吹き出した。 「もう、まったくきみは。なにを言い出すかほんとうにわからないやつだな」 「だって、ぜんぶほんとのことだし。えっちなことも、将来のことも」 　ふふ、と笑う御影と鼻先を擦り合わせれば、甘やかな空気がこみ上げる。キスを繰り返す男のそれが最奥でむくりと硬くなるのを感じて、ちらっと彼を見上げると、「あ、バレた？」と天城が微笑む。 「バレるもなにも……この格好じゃ」 「ですよね。もう一度したい。ううん、朝までしちゃおうかな」 「腰が壊れる」 　急いで止めようとしたけれど、ゆっくりと動き出す天城の心地好さに細く息を吐く。たっぷりと中に出された蜜のおかげでぬるりと滑る卑猥な摩擦が悦くて、虜になってしまう。 「愛してます、御影先輩。ずっとそばにいさせて。あなたのミルクも俺だけに飲ませて」 「ん……」 　鼓膜に染み込む低く甘い声に、夢見心地で何度も頷いた。 　天城という強い吸引力を持つアルファに出会った衝撃により、胸からミルクが出るようになってしまっていまだ動揺するところもある。 　いったい、この身体はどうなってしまうのか。 　いつか、天城のために孕む日もくるのか。 　――わからないことばかりだけど。 　生きていくうえでなにが起きるのか、すべて知ってしまったら、とたんに毎日は色褪せるはずだ。 　不安だからこそあがき、もがき、前に進む。 　変わらないなんてことはひとつもない。すべてはゆるやかに変化していく。 　以前だったらなんに対しても慎重で、臆病で、前に一歩踏み出すことが怖かったけれど、天城と一緒なら進んでいけそうだ。どこまでも。 　ミルクが滲むオメガ男子は、きっと自分以外にも存在するのだろう。そして、彼らはいまこのとき、途方に暮れているに違いない。 　だったら、製薬会社の開発者としては仕事をまっとうするだけだ。 「まーたまじめな顔しちゃって。天城さんがぜんぶひとりで背負わないように。その荷物、俺にも半分わけてくださいね。一緒に背負っていきましょ」 「……うん」 　胸をくすぐる甘い言葉に、天城はこころから微笑んだ。