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おまけ2 寝落ち通話

―――眠れない。 いつもなら23時には寝てるのに、気付けば0時過ぎ。 今日も22時まで夏芽と一緒にいたからだ。絶対にそう。 淋しいなんて思いたくないのに、さっきまでいた温もりが恋しくて胸が苦しい。 「寝てるよなぁ…」 そう呟きながら夏芽とのトーク画面をぼんやり眺めて、意を決してメッセージを送る。 <寝てる?> そのメッセージはすぐ既読になって電話が鳴った。 「な、なに?」 『ふは、なに?はこっちの言葉じゃね?  んでなーに、どした?』 聞きたいと思ってた夏芽の声。 いつもはもっといじわるなのにこんなときばっかり優しい聞き方。 「あの、さ。なんかちょっと寝れなくて  寝れるまで通話繋いでちゃだめ…?  いや駄目か、ごめん寝るわ。」 急に自分の言ってることが恥ずかしくなって電話を切ろうとすると夏芽から制止がかかる。 『待てって、寝落ちでしょ?いいよ。でも俺眠いから先寝たらごめんな。』 まさかすんなりOKされると思ってなくて拍子抜けする。 こう言ったらなんだけど、もっと馬鹿にされるかと思った。 寝る準備をして布団に潜ると、スピーカーからはまだ動いてる音がしてつい声をかけてしまう。 「夏芽…?まだ起きてる?」 『んー、ぎりぎりー。5分もあれば余裕で寝れる。』 「ふふ、俺も寝れそ、おやすみ。」 おやすみ、と返事を返されて電気を消した。 ぼんやりと光る携帯をみながら自分の両手を重ねて、夏芽と手を繋いでるのを想像する。 少し骨っぽくて、自分よりも大きな手。 それで少しひんやりとしたさらさらした手。 うとうとしはじめたタイミングで、夏芽が聞こえないくらいの小さな声で「すきだよ」なんて言うから目が覚めた。 夏芽に起きてることを気付かれたくなくて、でも嬉しくて身体をぎゅっと縮める。 『…夏希起きてるだろ。』 「う、なんで分かんの…」 『ほんとに起きてんのかよ…。恥ずかし。さっさと寝ろ。』 カマかけただけかよ。騙されたわ。 でも、好きなんて普段言われないから嬉しくて顔がにやける。 『次は泊まるからそんときちゃんと一緒に寝ような。  んじゃほんとにおやすみー。』 「ん、おやすみ。」 次っていつ?なんて聞けないけど、その次を楽しみにする。 さすがにもう寝ないと明日も仕事だ。 あっという間にスピーカーから夏芽の寝息が聞こえてきて、その音に自分の呼吸を重ねる。 それが思ったより効果があったのか、ただ寝息が落ち着くのかいつもより睡眠時間は短いのに、バカみたいにぐっすり寝れた気がする。 朝起きたら通話は切れてたけど、夏芽から1件のメッセージ。 <おはよ。ゆっくり寝れた?俺は寝た。仕事いってくる。> <おはよ!めっちゃ寝た、ありがと!お互い頑張ろうな!> 変な顔のスタンプが返信できて笑う。 なんだかんだ夏芽は優しくて、ちゃんと愛されてるんだなとこういうところで気付かされる。 寝落ちなんて今までしたことなかったけど、これにハマる子がいるのもわかる気がする。 寝落ち唯一の弊害は夏芽と会った日、寂しくて一人寝ができなくなったこと。 泊まりか寝落ちしなきゃ寝れないなんて、ますます女みたいだ。 次こそじゃんけんで勝って、あいつを泣かせてやらなきゃ。 なんて思ったところで、勝ったとしても全然責められたことないんだけどね。

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