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おまけ1 お持ち帰りの日

高校の同窓会なんてはじめてで浮かれて調子乗ってた。 高校時代、名前が似てたせいで生き別れの双子とか言われてよく一緒にからかわれたやつもいて、余計楽しくなって生ビール3杯、焼酎の水割り1杯、梅酒も3杯だったかな。 とにかく色んな酒を飲んで騒いで、最後に赤ワインを乾杯したところで記憶がなくなってる。 俺と一緒にからかわれてた北川 夏芽(きたがわ なつめ)は、顔はいいけど口が悪くて校内でも電話でもよく女と揉めてた。 引っぱたかれてる現場をみてはからかったっけ。 仲はそれなりに良かったけど、卒業してからは疎遠になってほとんど連絡なんてとってなかったのに。 そんな奴がなんでおれの家で寝てんだよ。んで、なんで俺もこいつも裸なの。 俺が昨日履いてたボクサーはどこに消えたの。 「おい、おい夏芽起きろ。  なんかとんでもねぇこと起きてるかもしんない。」 「…うるせぇな、なんも起きてねぇよ寝ろ。」 なんだよ、相変わらず口悪ぃな。 俺も口悪いけど俺より悪いんじゃねぇかな。 そんなことより気付かないふりをしてたけど、腰とケツが痛いのはどういうわけだ。 もしかして俺こいつとヤッたのか?男同士で? 俺はホモじゃないし、こいつもしかして男も女もどっちもイケるタイプ…? イケメンには多いとか聞いたことあるけど。 「なぁ夏芽起きてって。お前ホモなの?俺お前とえっちしたの…?」 「はぁ?ホモじゃねぇよ。てかお前昨日のこと覚えてねぇの?」 昨日の?と聞くと夏芽は身体を起こして頭をガシガシとかいた。 「お前が俺にくっついて離れなかったんだろ。  俺のことお持ち帰りしてーって言ってたじゃん。  俺んち汚くて連れていけないからお前んち来たんだろ。」 「は?…はぁ?俺が?まっさかぁ。」 やべー。なんも覚えてない。俺そんなに酒癖悪いの? てかシンプルに飲みすぎただけだよな…。 「思い出せないなら思い出せるように同じことしてやろうか。」 「やっぱホモなんじゃん!変態!  や、腕引っ張んなって!うわ、」 腕を引っ張られて布団に転ばされる。 こういうのに慣れてるのかすぐ上に乗ってきて心臓がバクバクうるさい。 首筋に熱い舌の感覚が触れてゾワゾワする。 「ひ、や、やだ…変な声出る…っ  夏芽待って、俺女じゃないよ…?」 「んなもん知ってるよ、いちいちうるせぇな。  喋んないで喘いでろ。」 首元でしゃべられて熱い息がかかる。 ただでさえ弱いとこなのに余計変な声出ちゃうじゃん。 AVで見たようなことをなんで俺がされる側になってんだ。 俺はたった一回しかそういう経験しかないけど、それにしたってこいつ慣れすぎ。 なんで首から胸元まで舐めていくのに自然な流れでいけるわけ? 「…いっっ、たぁ!お前なんで急に乳首噛むんだよ!  せっかく気持ち良かったのに!」 「へぇ。気持ち良かったんだ?男にやられて  悦んでんならお前も充分変態じゃん。」 悔しいけどド正論すぎて何も言えない。 意識せず出た言葉だからこそ本心なのは間違いない。 俺、夏芽に胸舐められて気持ちよくなってたんだ。 夏芽の馬鹿にしたような顔がむかつくのに、下半身が疼いて仕方ない。触りたい。 「どうすんの?やめる?続ける?今ならやめられるけど。」 「……やめない、思い出してないし。」 夏芽は小さく 変態 と呟いて意地悪そうに笑って、また胸元に顔を埋めた。 夏芽のひんやりした手が下半身に触れて、身体が強ばる。 恥ずかしいのに触ってほしい、恥ずかしいからやめてほしい。 自分が今どっちを考えてるのか分からない。 「夏希わかる?お前今ガン勃ちしてんの。やらしすぎ。」 「そういうのわざわざ言うなよ…っ」 「大丈夫だって、ほら。」 俺の手を持って夏芽の下半身に触れさせる。 同じだ。こいつも俺に興奮してこんなんになってるってこと? なんかそれって――。 俺単純かもしれない。昨日のことなんて思い出せなくていいや。 夏芽が俺の身体でこんな風になってくれてるのが、なんていうか嬉しいって思ってる。 夏芽はゆっくり時間をかけて俺を愛撫していって、俺は全身ふやけんじゃないかってくらい気持ちよくしてもらって、なんかうまく考えがまとまらない。 「夏希。」 急に名前を呼ばれてハッと我に返る。 「なんだよ。…な、なに、顔ちけぇって…」 「キスしていい?」 返事なんて待つつもりないみたいで、何回も触れてくる。 「んぅ…、お前舌いれんなって!」 「なんで?やなの?」 くそ、顔がいいせいで目が合うと変に緊張する。 何回も見た顔なのに状況が状況なせいでドキドキが止まらない。 「や、嫌じゃねぇけど…」 じゃあいいじゃん、とぐいぐいくる。 このままじゃほんとに最後までヤッちゃう。 それでほんとにいいのか?俺は後悔しないのか? でもここで夏芽を拒否したら、もう友達にも戻れない気がする。 でも天秤にかけるなら、友達に戻れないほうが嫌だ。 「…キスはするけど、勘違いすんなよ」 はいはい、と言って唇を重ねる。 勘違いすんなよ、とか言っておいて俺の方が勘違いしそうになる。 「あ…っ?ぇ、ちょ、待って、待って夏芽…っ、そんなとこ触ん、……っ」 夏芽が俺の先走りを使って、指で慣らすたびに変な声が出て本当にやだ、恥ずかしい。 痛いとかはないけど違和感がすごいのと、目に入る夏芽のが入る気がしない。 「夏芽待って、本当にいれんの?そんなの入るの?」 「昨日入ったけど?お前後ろの才能あるんじゃない?  後ろでイケるやつ少数派らしいよ?」 そんな才能いらない、俺は可愛い女の子と付き合いたい…はずなのに なんで夏芽とこんなんになったんだっけ。 「まてまてまてまて、まだ準備が…っ」 「準備なら俺がした。はーい力抜いてー。」 むり、絶対むり。 そう思ってるのに夏芽はどんどん俺の中に入ってきて、苦しくて息が詰まる。 「ふ、ぅ…う、痛…っ」 「痛い?だよなぁ。でも俺待たないよ、ごめんな。」 そう言ってゆるゆると動いて、その度に鈍い痛みが走る。 全身を違和感が通っていくような変な感覚。 あるときを境に違和感より先に気持ちいいのがきて、目の前がチカチカ光る。 「夏芽待って、やだ、俺、俺なんかおかしい…っ  なんで、なんでっ…?」 「大丈夫だって、おかしくねぇよ。ほら手握って。」 言われるままに手を繋いで、夏芽が求めてくる度にキスをして頭がおかしくなりそう。 「も、やだ、やだ…っ、変な声、出るのも…っ  気持ちいいのも、こわい…っ」 「夏希、大丈夫だよ。不安にならなくていいから。  俺のこと見て?一緒に気持ちよくなろ、な?」 夏芽の優しい声に馬鹿みたいに安心して、夏芽の背中に手を回す。 夏目も俺の事を抱きしめるようにくっついてきて、夏芽の腕の中でイッた。 夏芽は肩で息をしていて、それが落ち着くと俺の中からソレを抜いて俺の髪をくしゃくしゃと撫でて唇に触れた。 さっき俺に触れた冷えた手とは違う、熱い唇。 「…夏芽は俺のこと好きなの?」 「あ?もし好きだって言ったらどうすんの?」 「…言われてみなきゃ分かんね。だって俺ホモじゃねーもん。  でもお前とキスするのも手繋ぐのも、さっきのセックスも嫌じゃなかったよ。」 夏芽はコツンと俺のでこを小突いて、そのあと同じ場所にキスをした。 「じゃあ付き合お。できるだけ大事にするから。」 「できるだけかよ。まぁいいや、じゃよろしく!  あ、今度からどっちが攻めるかじゃんけんな!お前に負けんのヤダ。」 はいはい、と適当に流して夏芽はまた俺にキスをする。 こいつ好きって言ってねーけど、実は俺の事大好きだな。 昨日のことは思い出せないままだけど、まぁいいや。 とりあえず疲れたし二度寝しよ。 おやすみ。

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