7 / 9

#7

一緒に住み始めて1週間。今日は夏希が休み。 基本は俺が料理担当だけど、休みの日くらいは、と言って今日は作ってくれるらしい。 鍵を開けて家に入ると普通にいい匂いがしてリビングへ急ぐ。 「ただい…お前どうしたその格好。」 「うわー!!!帰ってくんなら電話しろよ!  うぅ、見られたくなかったぁ…。」 いやいや、裸エプロンなんて見られるための格好じゃん。 ぺたんと床に座り込んで泣く振りをする夏希をみて、家を決めた日の朝に呟いた裸エプロンってこのことなのかと笑う。 「まぁまぁ。飯はいいから。」 せっかくの裸エプロンだし、するするとエプロンの中に手を突っ込む。 こんな可愛い格好で待っててくれたんなら、飯より先に頂かないと。 据え膳食わぬは男の恥って言うしな。 「あっ、馬鹿…鍋が…っ」 そんな安いAVみたいな台詞をはいてしっかり勃ってんだから笑わせる。 *** 夏希いわく試しに着ただけで、なにもこんなことをするためじゃないと怒る。 帰ってくる前は電話しろってぷりぷりと可愛く怒ってくるから途中から寝たふりをする。 「おい寝てんじゃねぇ起きろ。」 ぺし、と頭を叩かれても寝たふり。さてどんな行動にうつるのか。 「お前が散々奥突くせいで腰が痛くて料理なんてもうできねぇぞ  鍋吹いちゃうどころか焦げたし…って、なぁおい聞いてる?  あれ、夏芽?ほんとに寝ちゃった…?」 「んーん、起きてる。」 もう一度頭を叩かれて、仕返しとばかりに夏希の乳首をぎゅっとつねる。 「いててててて、お前そこは反則だろ!  頭には頭!乳首には乳首!もう!ばか!」 「ふは、なにそれ、ハンムラビの乳首バージョンなんて聞いたことねぇよ」 二人でひとしきり笑って起き上がる。 鍋の中の肉じゃがが焦げて部屋がこげくさい。火事にならなくてよかった。 次からちゃんと火止めてからセックスしよ。 結局買ってきた惣菜と作り置きしてたおひたしで飯は済ませて、風呂上がりの夕涼み中。 ベランダでアイスを食べていると、名前を呼ぶと夏希がこっちをむく。 夏希のアイスを一口かじってまた外をむくと夏希がぼやく。 「食うなよ。俺のチョコミントだぞ。」 「歯磨き粉の味するわ。」 「はん、お子ちゃま。…ん。」 口移しで俺のアイスを食べさせて顔が赤くなるのが見える。 「ぶどうも、おいしいけど…」 「だろ。歯磨き粉はうまくないけどな」 なんかこういうのいいな。 日常の中に普通に夏希がいて、むかつくけど幸せ。 多分こういうのをずっと求めてたんだと思う。 目が合うと笑いあって、喧嘩とかしながら歳とってなんかまた壁にぶつかって、そんでも一緒にいて。 夏希がくっついてきて「暑い」なんて言ってみたけど、離れるのは嫌。 「夏芽ってさ、実は俺の事大好きだよね」 「あ?好きっていうか愛してるけど?」 自分でもびっくりするくらいさらっと出た言葉。 「あっ…、えぇ……」 顔を真っ赤にする夏希にキスをして、一人で先に中に入る。 固まる夏希を部屋から眺めてくすくすとひとりで笑う。 夏希は負けず嫌いだからきっと顔を赤くしながら同じことを言ってくると思う。 チョコミントのアイスをぱくぱくと子供みたいに食べすすめて 急ぎ足でかけてくると俺の上にまたがってキスを一つ。 「俺も!俺も夏芽のことあ、愛してるけど!」 「どもんなよ、もっかいちゃんとスマートに言ってみな?」 照れる夏希が可愛いのともう一回聞きたくてそんなことを言う。 「…もう一回ききたいの?愛してるよ、夏芽」 普段の夏希とは違って少し色っぽい言い方に不覚にも顔が赤くなる。 実は主導権を握られているのかも、と思いながら今日も一緒に寝る。

ともだちにシェアしよう!