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#6
左手の薬指にお揃いの指輪。
目当ての物はなかったけど別デザインのものなら即日で用意できるって事で即決。
たかが指輪、でも形として分かると嬉しい。
で、問題は家。大手は行き尽くして
『個人経営の不動産屋さんとかどうですかねぇ』
って言われた。
そんな男同士って難しいのもんなの?
いや俺たちが条件つけすぎてんの?
いや、んなわけ。
2人で住めてそこそこの駅近で1LDKから2LDKくらいならってだけじゃん。
築年数とかなーんもわがまま言ってないって。
んでここが4軒目。
目の前のおじちゃんっていうか、おじいちゃんに単刀直入に聞く。
「男同士で入居できる部屋ないですか。」
「うちにある物件ならどこでも問題ないよ」
そうあっさりと言ってのけたおじいちゃんに、夏芽と目を見合わせる。
もしかしてめっちゃ古いとか、風呂共同とか、もしかして事故物件とか?
おじいちゃんが出してきた物件情報の紙を夏芽と見比べながら、トントン、と夏芽が1枚の紙を叩く。
家賃は8万、1LDKの築13年。
結構広めでLDKが13帖。寝室が8帖でこっちも広い。
場所は駅から少し離れるけど悪くないし、互いの職場まで歩ける距離ではある。
20分くらいかかるけど、まぁ歩ける。
「ここ!おじいちゃんここ今見に行ける?」
おじいちゃんの車に乗せてもらって15分、住宅街から少し離れた場所に建つそのアパートは写真より綺麗で、中も写真どおり。
俺の中ではもう決まりだったのに、夏芽がそれを制止した。
「ここ、壁薄いですか?」
ちらっとこっちを見るのがまたむかつく。
夏芽が意地悪さえしなきゃ声くらい我慢できるっての。
「楽器を馬鹿みたいに叩いたり吹いたりしなかったら
大丈夫なくらいには厚いはずだけどねぇ。」
「じゃあ大丈夫か。な、夏希。」
「お、おぅ…。」
胡散臭そうな笑顔で見やがって。
ちくしょう覚えとけよ。
戻って即契約を交わして引渡しは1ヶ月後。
おじいちゃん管理の物件だから煩わしい手続きもほぼなくて、ちょうど良かった。
家賃手渡しなのがちょっとめんどいけど。
指輪も家も今日のうちに決まると思わなくて誰に対してでもないけど、感謝したくなる。
不動産屋から出ると夏芽が「壁薄くなくてよかったな。」なんて言うから、思い出してケツに一発いれてやった。
あとは自分のとこと夏芽のアパートを引き払ったら終わり。
「今日で一気に決まったの嬉しいけどさー
なーんかデートらしいデートできてねぇよなー。」
「あー、じゃあ夜景でも見に行く?車取り行かなきゃだけど。」
いく!と即答。
夏芽は基本的に車移動が多い。いつもは家が近いから歩いてくるだけ。
駅近で探してたのは俺の移動手段が徒歩か電車くらいしかないからで、夏芽は迎えきてほしいとか行きたいとこあるなら車出すよって毎回言ってくれるけど、都合のいい足みたいな使い方したくなくて断ってた。
本当は夏芽が車を運転する姿を見るのが好きで、こういう風に誘われると嬉しい。
***
夏芽の車は大きくて車高が高い。
車に全然詳しくない俺はこれがなんて車か分かんないけど、それに乗ってる夏芽はかっこいい。
「見すぎだって。」
前を見ながら髪をくしゃくしゃと撫でられる。
普段運転してるところなんて見ないから今のうちに見とかないとって思ったけど、一緒住み始めたらたくさん見るようになるのかな。
買い物とかデートとか今よりもっと出来るようになる?
「夏希、手。」
「手?はい。」
何も疑問に思わずに普通に繋いだけど、なんか妙に照れるな。
夏芽の薬指の指輪。
装飾とかなんもついてなくてシンプルなやつ。
夏芽の綺麗な指には良く似合う。
「なぁ、夏芽と結婚したらなんかかわるかなぁ。」
「は?国籍かわんじゃん。」
ばか。そうじゃねーって。
なんて多分夏芽もわかってると思うけど。
駐車場について夏芽が車を停めると伸びをする。
さすが平日、俺たち以外だれもいない。
「よし、見に行こーぜぃ!
晴れてるから綺麗だろーなぁ。」
車から降りて手を繋いで歩く。
こんな風に手を繋ぐことなんて今までなかったのに。
なんか緊張して手汗がひどい気がする。
何を緊張してんだか分かんないけど。
少し歩いて高台へ上がると夜景が遠くに見える。
横をむくと夏芽がいて、それが当たり前なのになぜか急にさみしくなる。
「俺、夏芽と離れたくないなぁ…。」
「なんだよ。離れねぇって。一緒住む家も見つけたじゃん。」
「そうなんだけど…
一緒住むまでの1ヶ月なげーなぁって。
たかが2週間会えないだけで寂しかったしさぁ。」
夏芽は俺のことを抱き寄せて軽くキスをすると、もう一度抱きしめた。
夜景なんてほとんど見ないまま車に戻ってきて、何度も唇を重ねる。
何回言っても足りないくらい夏芽が好き。
こんないつ誰が来るかも分からないところで夏芽がほしくなる。
駄目だと頭で思っても自分じゃ止められそうにない。
したい気持ちだけが先走ってどうやって誘えばいいか分からなくなる。
「夏希お前どうしたいの?ちゃんと素直に言ってみ?」
「……夏芽としたい。家まで待てない。」
「いつもそんだけ素直だと可愛いのにな。」
そう言って運転席からこっち側へ身を乗り出してキスをしてきた。
舌じゃ届かない奥まで夏芽がほしい。
後部座席に移動してドアにもたれかかりながら、夏芽を欲しがる。
「ん、夏芽…っ、もっとキスして…」
手を伸ばして何度キスしてもらっても全然足りない。
好きの気持ちが溢れて仕方ない。
「夏希、上乗って服捲って。」
「…ん、」
胸を舐められて息が漏れる。
胸だけじゃ足りない、もっと奥まで。
我慢できなくて夏芽にねだると愛おしそうに笑うから、それだけで胸がぎゅっと掴まれる。
「もうしていい…?」
「いいよ、車狭いしゆっくりでいいから自分でやって?」
夏芽にくっついてゆっくりと少しずつ腰を落とす。
その途中で腰を持たれてシートに転がされる。
「夏芽?どした、あっ…待っ、なんで…っ、」
正常位のまま挿れられて条件反射で口を手で抑える。
意地悪そうに笑う夏芽に手を掴まれて、口元を隠せない。
声が出るのも、喘いでる顔を見られるのも恥ずかしい。
「やっ、やだ、声、出ちゃう、ってばっ」
「出せよ。どうせ誰もいねーんだから。」
掴まれた手を離してそのまま手を繋がれるのが嬉しくて力をこめる。
空いた方の手で髪に触れて、困ったような顔でこっちを見るから一瞬だけ時間がとまる。
「…なんでそんな顔してんの?」
「いや、なんでお前そんなに可愛いの?
そんな顔してたら我慢できなくなるって…」
「じゃあもう一緒イこ?」
そう言って夏芽の服を掴む。熱い吐息にくもる車内。
夏芽の肩をぎゅっとを掴んで、夏芽に抱き返されて最後、夏芽の熱を身体の中で感じた。
「「あ。」」
2人の声が揃う。
「ごめん、服とんだ…」
「いや別に夏希のせいじゃないよ」
軽く笑う夏芽が愛おしくて仕方ない。好きで好きで仕方ないよ。
早く一ヶ月後にならないかな。同じ家に早く帰りたい。
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