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「なーつーめーっ!」 外で人目も憚らず飛びついてくる。 こいつ俺のこと大好きじゃん。抱き返してる俺も人のこと言えないけど。 今までは人目とか気にして外で手繋ぐのとか論外だったけど、最近はもう人とかどうでもいい。 「なに、なんでいんの?俺に会いたかったの?」 「うるせ、離れろ。早く鍵開けて。」 もー、と怒りながら鍵を開けて中に入る。ドアが閉まりきるまで待っていられない。 玄関の壁に夏希を押し付けて唇を重ねた。 「…ん、夏…芽っ…、は、なに興奮してんだよ、」 「は?どの口が言ってんだよ。勃ってんのバレてんぞ。」 俺も夏希も口ではお互いのことを馬鹿にしながら我慢できずに玄関で何回もキスをする。 「ね、先布団行ってて。準備したら行くから。 じゃんけんとかいいから早く抱いて?」 本当は飯食ってゆっくりしたあとにヤるつもりだったのに、そんな計画は一気に崩れていく。 なんだ抱いてって、可愛すぎだろ。 夏希が何度も名前を呼ぶたびに頭がくらくらとして飛びそうになる。 2週間前からずっとそう。 電話で聞いてもこうやって会って聞いても、ずっと。 俺の腕の中にいないと不安で仕事なんて手につかない。 おかげで交換したエンジンオイルに携帯が浸かる羽目になった。 「お前明日休みだよな?」 一戦終えてぐったりする夏希に声をかけると、枕にうつ伏せになったまま頷く。 その状態で上にのしかかるとびくっと身体が跳ねた。 「何反応してんだよ。」 「お前なんでもう勃ってんだよ、俺まだ無理だぞ…?」 「別にいいよ。そのまま寝てて。」 そう言って夏希の股の間で俺のを擦る。 「……っん…は…」 素股が思いのほか気持ちよくて動いていると、夏希が顔を真っ赤にしてこっちを向く。 「…なに?」 「……なんもねぇ。」 そう言ってまたうつ伏せに戻る。 分かった。俺の声でこいつ反応したんだな。 「夏希、ちょっと腰浮かして。」 「いや。…わ、耳舐めんなよ…っ  やめろばか股間触んなっ」 思った通り夏希のも大きくなってて、それを上下に緩く動かすとあっという間に夏希は大人しくなる。 「あっ、や、や…っ」 「俺の声聞いてこんなんなっちゃったの?」 言葉にならないまま頷いて、気持ちよさのあまり腰がさらに浮く。 こういうとこが夢中になる要因のひとつ。 ほんとこいつ無自覚でえろい。 「そのまま肩落として、ケツあげて。」 「あ、ちょ…っと、ま…あっ、やっ」 後ろから夏希の中へ挿れると、声が押えきれないのか細切れに喘ぐ。 こいつ見てると俺まで理性が飛ぶ。 恥も外聞もなくなって何もかもがどうでもいい。 夏希さえそばにいてくれれば何もいらない。 枕に顔を押し付けて声を我慢しようとする夏希をこっちに向けて、手を抑えると首を振る。 「手、離せよ、声…出ちゃうだろ…っ」 「出せばいいじゃん。聞かせてよ。  なぁ、我慢すんなって。」 ゆっくり出しいれするだけで声が抑えられないのに、普通に動いたらどうすんだよ。 「も、やっ、やだっ」 「嫌ならやめるけど?」 「ちが、そうじゃな、あっ、待っ…、」 夏希の口を塞ぐと首に手を回してくる。 それが可愛くて愛おしい。 声が聞きたい、でも出せないのを我慢してるのも可愛くて好き。 赤い顔も、イきたくて涙をためる目も、なにもかもが愛おしい。 抱き寄せて夏希の中に吐き出す。 夏希も同じタイミングで出して、腹に精液が飛ぶ。 肩で息をする夏希にキスをすると嬉しそうに笑った。 *** ちゅるちゅるとうどんを啜りながら夏希がぼやく。 「お前といるといっつもコンビニ飯だな。」 「おぅ、誰かさんが盛るからな。」 と返すと俺じゃねーぞ、と文句を垂れながらローテーブルの下で軽い膝蹴りが入る。 何をし返そうか考えていると食べ終わった夏希が膝に転がってきた。 「…お前明日も仕事だろ。  2週間ぶりなのに全然ゆっくりできねーなぁ。」 「あー、明日休み。有給とった。」 「え、まじで!?…あ、いっっ、たぁ…」 起き上がった拍子にテーブルで思い切り頭をぶつけて、涙目になる。 「なにやってんだよ、大丈夫か?」 「んん、痛い。よしよしして。」 うるうるした目でこっちを見てきてちょっと可愛いと思った自分にため息をつく。 「…ぶってんなよ、バカが。 あぁもう、よしよし。なーでなーで。」 よしよししてってなんだよ。 頭を抱えて適当に撫でつけるとそのまま抱きついてくる。 こんなのが可愛いって思うあたり本当俺も末期だな。 寝る準備をして布団でゴロゴロしながら夏希が携帯を見せてくる。 「なぁこんなのどう思う?  値段も3万くらいで手頃だし。」 携帯をみると指輪の画像。 そうだ、そうだった。俺こいつに結婚したいって言ったんだった。 弱気になってたときとはいえ、思い返せば普通に恥ずかしいこと言った気がする。 別に気の迷いとかではないけど。 「夏芽?聞いてる?結婚指輪として買うなら、もっとちゃんとしたのかなー。  でもそうなると高いよなぁ。」 「いや、今のいいんじゃね。なくしてもそこまで痛くないじゃん。」 「いや、なくすなよ。」 それはそう。なくすつもりはないけど。 でも客の車傷付けるからずっとしてらんないし。 てかそもそも夏希はずっとしてくれんのかな。 「なぁ夏希は指輪買ったら仕事中もずっとつけんの?」 「んー、うん。俺はつけてて困ることないし。 結婚指輪ってそういうもんっしょ」 普通に結婚指輪とか言ってくるけど、こいつ無意識のときが一番ずるい。 寝転がったまま夏希を後ろから抱きしめると、そのまま携帯でまた調べ物をする。 「指輪はさっきのとか似たようなのでいいとして  あとは家だよなぁ。  調べたんだけど結構男同士って拒否されるみたいでさー」 「直で不動産屋行きゃいいじゃん。」 そりゃそうだけど、と言いながら物件を次々に見ていく。 全然こっちを向かない。 それに少しムッとして携帯を強引にスリープ状態にして強く抱きしめる。 「なぁもういいからこっち向けって。顔見せて。」 なんだよ、と文句を言いながらやっとこっちを向いて、見上げてくるその顔が可愛くてまた抱きしめた。 俺本当にこいつのこと好きだ。 「夏希、海外いこ。結婚しよ。」 「は?なに、プロポーズ?」 うん、と呟くと夏希は俺を抱きしめ返して、いいよ、とだけ言う。 普通の男女と違って簡単に結婚なんてできねぇけど。 このままずっと夏希と一緒にいたい。離れたくない。 抱きしめたまま寝落ちたようで、夏希の大きな声で目を覚ます。 「夏芽起きて、朝だよ!準備して出かけよ!」 勢いよく開いたカーテンから差し込む朝陽に目を細める。 なんでこいつは朝からこんなに元気なんだ。 「なーつーめー、おはよ。」 横にころがってきて抱きついてくる。 なんか昨日からずっとくっついてる気がする。 「早く指輪買いいこー?」 目をキラキラとさせながら夏希が言う。 夏希はもう着替え終わっていて、あとは俺の準備待ち。 仕方なく起き上がって準備をしていると、トーストを焼いて持ってくる。 「お前良い奥さんになれそうだな。」 「俺が嫁かよ。」 「そりゃそうだろ。毎回お前が女側じゃん。 あとシンプルに可愛い。」 そう言うと小声で 裸エプロンかぁ なんて呟くから訳わかんなくて笑った。

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