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第1話

「はあっ……矢田くん、キミ……すっごくイイね……」 「長谷部長がスケベだから頑張ってるんですよ」  矢田と呼ばれた男の陰茎が、性器と化した長谷の窄まりをぬぷぬぷと出入りしている。 そのたびに、部長の足がびくついていた。 熱に侵された頭でぼうっとその様子を見ながら、矢田は――なぜこんな状況になったのかを思い返していた。  思えば、今日は最初からどこかおかしかった。仕事もバリバリこなし、女性社員からの人気も高く、男性社員からも尊敬の眼差しを受けている部長。  月に一度ある仕事の飲みの席でもごくごく平凡な俺とは違い、部長のファン、といった人間に囲まれている彼を遠くから眺めていることが多かった。  それなのに、今日に限ってはわざわざ俺の隣に座り、右に壁、左に部長という逃げようのない状況を作り出された。  特に部長信者でもない俺は、彼の話を半分適当に聞き流していたのだが、皆が二次会へ行く前に、ふと呼び止められた。 「矢田くん」 「なんです、かっ……!?」 「ああ、やっぱりこれ……キミなんだねえ」  そこには会社の誰にもバレていないはずの、ゲイ向けマッチングアプリのプロフィール画面が表示されていた。  顔出しもしていないし、何故バレたのかわからず立ち尽くしていると、部長が楽しそうに続けた。 「矢田くん、首筋の所にホクロが二つあるでしょう。あれ、僕ずっと気になってたんだ」 「は……?」 「エロいなって、思ってた」 「ていうか、なんで俺のホクロのことまで……」 「そんな事はどうでもいいよね?そうそう。キミ、タチなんだよね?」  今夜僕のこと抱いてくれないかな、と囁かれ、その妖艶さに逆らえなくなってしまった俺はいつの間にか部長の手を取って二次会会場とは反対方向に進んでいた。  この近くに男同士で入れるラブホテルはなく、普段利用しているビジネスホテルへと歩を進める。 「――部長。いいんですね、抱いちゃって」 「もちろん、それを望んでいたんだよ。僕は」

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