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第4話

 マッチングアプリで一晩限りの男と寝たことは数あれど、職場の上司を抱くのは当然初めてな矢田がここからどう動こうか決めかねていると、部長が顔を寄せて口づけてきた。 「はっ、え、部長……?」 「あれ、キスはNGだった?」  きょとんとした様子の部長を見て心の中でため息をついた矢田は、噛みつくように口づけ返す。  さほど力の入っていない唇をこじ開けて舌をねじ込むと、歓迎するように部長の舌が絡みついてきた。  ちゅ、じゅる、とわざと音を立てながら部長の歯列をなぞったり上顎をくすぐったりすると、その度にぴくぴくと反応する姿にグッときてしまった矢田は、その苛立ちをぶつけるように部長の耳を軽く塞いだ。 「んむっ……!?」 「長谷部長、目閉じて下さい」  値踏みするような目線を一瞬した後で笑いながら目を閉じた部長の耳をさらに強く塞ぎ、ぴちゃぴちゃとわざと音を立てながら唇をくっつけたり離したりする。  それを繰り返していると部長の感度もだんだんと上がっていっていたようで、びくつく強さがだんだんと増してきた。  仕上げと言わんばかりに舌を吸い上げて、ちゅぽんと音を立てながら離れ塞いでいた耳を開放すると、確かに情欲が滲んだ様子の部長が顔を赤らめてうっとりとこちらを見ていた。 「はは。すごいね……皆にそうしてるのかな」 「部長なんでサービスですよ」 「ふうん」  口角を上げて満足気な顔をしている部長の表情がなかなか崩れないことに微かな苛立ちを覚えつつも、両手首を掴んでマットレスへと押し付ける。  前が閉まっていないパジャマの合わせがはらりと身体を滑り落ち、使い込まれて少し大きくなっている胸の尖りが顔を出した。  矢田はしばらくそれを眺めていると、無遠慮に片方の乳首を口に含む。 「んっ……!矢田くん、優しくしてね」 「部長次第ですかね」  甘えた声で優しくしてね、なんて言われたら、優しくなんてできるわけがない。  唇で側面を摘みつつ先端を舌で突くと、んん、という声とともに部長が身じろぎする。  部長がこれ以上動かないように両手に力を込めると、彼の瞳の奥に確かな興奮が見え隠れしていた。

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