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第11話 真冬に王様に教えられたこと1
王様がぼくにキスをしている。キスというより口を食べられているような感じだ。どうしてこんなことをするんだろう。どうしていいのかわからないままじっとしていると、ようやく王様の口が離れた。
「お、王様……?」
「離縁などさせん」
「り、離縁?」
「離縁したいから家がほしいと言ったのだろう?」
蜂蜜色の目がギラギラしている。首をすくめながらどうしようと焦った。
ぼくは王様の奧さんだ。だから離婚することはできない。ぼくだって離婚したいなんて思っていない。王様がお妃様と仲良くしているのを見たくないだけで、偽物の王子様でしかないぼくから離婚したいなんて言えるはずがなかった。
(それにぼくは……王様のこと、好きだし)
だから離婚したいなんて絶対に言わない。でも、王様はぼくが離婚したがっていると思っている。そして我が儘を言ったことに怒っている。
(どうしよう。なんて説明したらいいんだろう)
いい考えが浮かばなくてグルグルした。返事ができなくて黙っていると、王様が「離縁など考えられないようにしてやる」と唸るように言った。
「ち、ちがうん、……っ」
「違うんです」と言い終わる前にまたキスされた。さっきよりも口全体を食べられているような状態で息ができない。どんどん苦しくなって涙まで出てきた。ぼくは息をしたい一心で王様の体を両手で叩いた。
「んっ、んんー……っ」
叩いても呻いても離してくれない。それどころか叩いていた手を掴まれてしまった。そのまま両手ともベッドに押さえつけられる。
このままじゃ息ができなくて死んでしまう。怖くなったぼくは足をバタバタさせた。なんとか王様の下から抜け出そうと体をねじったけど、ぼくよりずっと大きな王様を押しのけることなんてできるはずがない。それでも体の下で藻掻いていたら、今度は体全体を押さえつけられて完全に動けなくなってしまった。
(く、苦しい……! 死んでしまう……!)
息ができなくて目が回った。夢中で「んん……!」と呻いたら、やっと唇を離してもらえた。
「は、はっ、ハ、ハ、」
息を吸うのも吐くのも苦しい。怒っているのにどうしてキスするんだろう。訳がわからなくて王様を見ると、蜂蜜色の目がぼくを睨むように見ていた。
「おまえは俺のつがいだ。離れることは許さない」
「つ、つがい……?」
「正式な妃という意味だ」
正式な妃……? たしかにぼくは一番目の奧さんではあるけど、お妃様じゃない。ぼくはただの人質で、奧さんになったのも政略結婚のためだ。それなのに「正式な妃」なんてどういうことだろう。
「おまえは俺の妃だ。離縁することなど許さん」
「でもお妃様の部屋が、準備できたって」
「あれはおまえの部屋だ」
「……へ?」
「あの部屋はおまえの部屋だ。俺の妃はおまえしかいないだろうが」
息ができなくなっていたせいで耳がおかしくなってしまった。ついでに頭も変になってしまっている。だって、ぼくが王様のお妃様なんて絶対におかしい。
「ぼ、くは、人質だと、思ってたんですけど」
ぼくの言葉に王様が怖い顔になった。思わず「ひっ」と首をすくめると、のし掛かっていた王様がゆっくりと体を起こした。
「たしかにおまえは人質だ。そのはずだった」
金色の眉毛がググッと寄る。一瞬怒ったのかと思ったけど、ぼくを見下ろしている蜂蜜色の目は睨んでいるようには見えなかった。
「おまえは人質として我が国に来た。おまえの父親もそのつもりで送り出したはずだ」
言われたことに一瞬「え?」と思ったけど、すぐに「やっぱりそうだったんだ」と思い直した。
ぼくと会ったとき、おとーさんはひと言も話さなかった。いろんな説明をしてくれたのは隣にいた偉い人で、馬車に乗るときもおとーさんはいなかった。あのときは「ぼくが王子様じゃないからだろうなぁ」と思った。でも、おとーさんは最初からぼくを人質だと思っていたんだ。それなら見送りに来なかったのも納得できる。
(そっかー……そうだよなぁ)
きっとほかの王子様や王女様を人質にしたくなくて、だからわざわざ遠い街に住んでいたぼくを呼び出したのだろう。それがわかっていたから、おかーさんは泣きそうな顔をしていたのだ。
おかーさんの顔を思い出すと胸が痛くなった。おかーさんのためにも幸せになろうと思っていたけど、幸せになったという手紙は出せないかもしれない。
「だが、おまえを人質にするのはやめた」
「え?」
「おまえを俺のつがいにする。獣人の王、獅子王のつがいだ」
「つがい? え? ししおう?」
「そして俺の子を生んでもらう」
いっぺんにあれこれ言われてよくわからなかった。目をパチパチさせながら「こをうんでもらう」とくり返す。
(それってまさか、ぼくが子どもを生むってこと……?)
まさか、そんなことはあり得ない。だってぼくは男だ。やっぱり耳がおかしくなってしまったんだ。そうでなければ王様がそんなことを言うはずがない。
「こ、子どもって、でもぼくは男だから」
「性別など関係ない。おまえをつがいにして子を生んでもらう」
「王様、……っ」
王様の大きな手が太ももを撫でた。慌てて両手で掴んだけど、ぼくの力じゃ止めることはできない。そのまま王様の手が裾をペラッとめくって直接体を撫で始めた。
(ちょ、ちょっと待って……!)
ぼくにだってこれがどういうことかわかる。まさか男のぼくが王様にそんなことをされるとは思わなくて焦った。
(そりゃあ、男同士でもそういうことができるのは知ってるけどっ)
七番目の王子様には男の恋人がいた。でも、相手はお姫様みたいに綺麗な人だった。ぼくみたいに綺麗でもなんでもない、いろいろ足りない奴とそういうことをしたい人なんているわけがない。
(女の子だって誰もぼくを好きにならなかった。それなのに王様が……あるわけない!)
必死に王様の手を止めようとした。でも止まらなかった。太ももの内側を撫でられて心臓が飛び出そうになる。
「王様、あのっ」
「痛いことはしない」
「そうじゃなくてっ」
「それとも俺に触られるのは嫌なのか?」
そんなことを思うはずがない。だってぼくは王様のことが好きなんだ。好きな人に触られるのはドキドキするけどうれしいに決まっている。でも、こういうことをぼくにするのは間違っている。
「王様、駄目ですっ。ぼ、ぼくは本当は、あの、王子様じゃないからっ」
だから王様の本当のお妃様にはなれない。なっては駄目だ。そうでないと王様が笑われてしまう。ただの平民で、いろいろ足りないぼくなんかをお妃様にしたら王様が馬鹿にされる。
「知っている」
「……え?」
驚いて王様をポカンと見た。
「おまえが王子として育てられていないことはわかっている」
「し、知ってたんですか?」
「調べた」
「そ、そうですか」
王様の腕を掴んでいた手から力が抜けた。まさか平民だということを知られていたなんて思わなかった。調べたということは、ぼくが足りない奴だということもわかったに違いない。
「だが、そんなことは関係ない。おまえは俺の妃でつがいだ」
大きな手がまた動き出した。太ももを撫でていた手が一気に上へと伸びてくる。慌てて押し留めようとすると、王様が「それに」といいながらぼくを見た。
「おまえは俺が好きなのだろう?」
「……!」
言われて顔がボッと熱くなった。
「好きならこのまま身を任せていればいい」
口がわなわなと震えた。
「俺も気まぐれでこんなことをしているわけではない。本気でつがいにしようと思っているから安心しろ」
「ひっ」
耳元で囁かれた低い声に悲鳴が漏れた。首がゾワゾワして鳥肌が立つ。
「それに今日は最後まではしない」
「ひんっ」
「交わるにはそれ相応の準備をしなくては難しいだろう」
「ふぅっ」
「おまえは体が小さい。俺を受け入れるにはそれなりの準備が必要だ」
「んふっ」
何を囁かれても声が漏れた。首がゾワゾワして、それが背中をゾクゾクさせる。下着の上から股間を触られて腰をカクカク揺らしてしまった。
(だ、駄目なのに……!)
王様に触られるなんて駄目なのに、手に力が入らなくて動きを止めることができない。足もだらりと開いたままで閉じることができなかった。
「おまえはここも小さいな」
「ひぃっ」
王様の手に直接アレを握られて悲鳴を上げてしまった。ぼくの声が気に入らなかったのか、王様が眉間にギュッと皺を寄せている。
「なんだ、その色気のない声は」
「だ、だって、そんなところ、汚いから、」
「汚くない。俺はおまえを気持ちよくしてやりたいだけだ」
「でも、ひっ、だ、駄目ですっ。駄目って、言って、っ」
服の裾は胸あたりまでめくれ上がっていた。下ろされた下着から出ているぼくのアレは完全に勃起していて、それを王様の大きな手がクチュクチュと擦っている。とんでもない格好と初めて他人に触られた衝撃で、ぼくは目を回しながら体をブルブル震わせた。
(だ、駄目なのに……!)
熱くて大きな手に擦られるのはとんでもなく気持ちよかった。しかもアレだけじゃなく、その下にぶらさがっている二つの玉まで揉まれている。初めての感覚に腰がカクカク揺れた。
「おまえは何もかも小さいな。だが、俺の手にちょうどよく収まるのは悪くない」
「お、さま、だめ、だからっ」
「やけに玉が張っているな。もしかして出していなかったのか?」
「だめ、ですって、ばぁっ」
玉をコリコリと揉まれて何かがググッとせり上がってきた。我慢できそうにない感覚に足がブルブル震え出す。
「小さいのに健気だな……これはこれで……」
「おう、さまっ、手、はなしてっ」
このままじゃ本当に出てしまう。そんなことになったら王様の手を汚してしまう。ぼくは必死に王様の腕を掴んだ。やめてほしくて何度も駄目だと訴えた。それなのに王様の手はぼくのアレをますます強く扱 いて、玉もコリコリといじり続ける。
「だめっ、ですってばっ、……ひっ!?」
お尻を掴まれたのがわかった。アレを扱きながら、もう片方の手がぼくの尻たぶを掴んでグイッと引っ張る。そうして奥にある孔を指で触った。
「なに、やだ、おうさま、なにしてっ」
「大丈夫だ、入れはしない」
「やだっ、きたな、からっ」
「汚くはない。それに、いずれはここに俺を受け入れることになる」
孔をトンと叩かれた。そんなところを王様が触るなんてとんでもない。
「だめっ、ゆび、はなし、っ!?」
揉むように孔を叩かれて背中がゾクゾクした。思わず腰を突き上げると、今度はアレが大きな手と擦れて目の前がパチパチする。クチュクチュと擦られながらお尻の孔をトントンされる感触に訳がわからなくなった。
「だめっ、はなしてっ。でちゃ、でちゃう、からっ」
「かまわん、そのまま出せ」
「や、ですっ! はなして、くだ……っ。きたな、から、はなしてっ」
「いいから……思い切り出してみろ」
耳元で囁かれて目の前で何かが弾け飛んだ。同時にアレからビュビュッと白濁が噴き出す。腰がビクンと跳ねたかと思えば、そのまま何度も突き上げるように動いた。それにつられたようにお尻の孔もヒクヒクした。それを王様の指が確かめるように撫でている。
ぼくはあまりの出来事に半泣きになっていた。王様にアレを触られてしまった。それどころかお尻も触られて、吐き出したもので手を汚してしまった。
「泣くほどよかったか?」
「っ」
目尻にキスをされて驚いた。おそるおそる王様を見ると蜂蜜色の目がキラキラ光っている。それに顔もなんだかいつもと違って見えた。
(こ、こんなときでもかっこいいなんて、ずるい)
訳がわからなかった。いろんな感情がグルグルして涙がポロポロ出てくる。そんな状態でもむき出しになっている股間を隠さなければと思って足をモゾモゾ動かした。
「あぁ、そのままにしていろ。すぐに湯に入れてやる」
お風呂には入りたい。股間がグショグショでこのままじゃ気持ち悪い。でも歩けるかわからないくらい腰が抜けてしまっている。
「安心しろ、俺が洗ってやる」
「へ?」
「つがいの世話をするのは当然だ」
「だ、駄目です。そんなの、王様にしてもらうなんて」
「王である前におまえのつがいだ。つがいの世話をするのは獣人にとって当たり前のことだ」
「で、でも」
「それに、後ろを慣らすのにもちょうどいい」
「う、うしろ?」
「俺を受け入れる場所だと言っただろう?」
「っ」
お尻の孔をトントンされたことを思い出した。そのせいか孔がヒクヒクしているのがわかる。ぼくは真っ赤になりながらアワアワと視線を動かした。
「すぐに入れるわけじゃない。十分慣らすから心配するな」
「な、慣らすって」
「この指が三本入るまで慣らす」
王様が指を三本、ズイッと目の前に出した。
(そ、そんなの入るわけない)
そんなものを入れられたらお尻が壊れてしまう。想像しただけで涙が出てきた。怖くてたまらないのに、どうしてかドキドキして体が熱くなった。
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