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番外編 みんなで水遊びをした後のこと
「そろそろ子どもたちに専属の従僕をつけるか?」
夜、子どもたちを寝かせた後の夫婦の時間になると、王様がそんなことを口にした。これが初めてではなく、最近は二人きりになるたびに出ている話題だ。メリさんとシロウさんの双子を預かる時間が長くなってきたからだろうけど、ぼくは少し考えて、やっぱり首を横に振った。
たしかにいろいろ大変にはなった。いまだって何人もの人たちが見守ってくれているからなんとかなっている状態だ。それでも本当に大変なときは手伝ってもらっているし、側近として忙しいはずのアルギュロスさんに手伝ってもらうこともある。だから、ぼくができるうちはできる限りのことはしたい。
「大丈夫です。いまでもみんなにたくさん手伝ってもらってるし、ポイニーも手伝ってくれるようになったし。それにすぐに大きくなるって話だから、いまのうちにたくさん一緒にいたいと思ってるんです」
「そうか。おまえは親としてよくやってくれている。だが、大変なときは遠慮せずに周りを頼ることだ」
「はい」
そう言われて心がほわっとした。いまでも王様がぼくのことを気にかけてくれているのがうれしい。それに子どもたちのこともいろいろ考えてくれている。ぼくがもっとしっかりしていれば王様に心配をかけることもないんだろうけど、そんなぼくでもいいんだと言ってくれる王様が大好きだ。
「無理をして体を壊しでもすれば、俺はもちろん子どもたちも悲しむ。自分を労ることを忘れるな」
「はい」
笑ったぼくに王様がキスをしてくれた。そうして大きな手で肩や背中を優しく撫でてくれる。
子どもたちをかわいがっているときの王様も好きだけど、こうしてぼくをつがいとして見てくれる王様が好きだ。胸の奥がキュッとなってどうしていいのかわからなくなる。王様のお妃様になって何年も経つのに、ぼくは相変わらず王様が好きで好きでどうしようもなかった。
(もっとぼくに触って。もっとギュッと抱きしめて)
ぼくの気持ちは天井知らずだ。こういうのは普通なんだろうか。それとも獣人のつがいになったからだろうか。
(どっちでもいいや。だってぼくは王様が大好きなだけだから)
首に腕を回したぼくは、たてがみ見たいな金髪ごとギュッと抱きしめた。
「あぁ、甘い香りがするな」
王様がぼくの首筋をクンクン嗅いでいる。ぼくも負けじと金髪に顔を埋めて息を吸った。今夜もぼくが大好きな匂いがしている。きっとぼくは何年経ってもこの匂いのことが大好きなままだろう。この匂いも王様のことも、ずっとずっと大好きだ。
「……フリソス、あの、」
言いながら両足をモゾモゾさせた。体が熱くてたまらない。王様が好きだと思うだけで体中がどうしようもなく疼いた。
「おまえはいつまでもかわいいな」
そう言った王様が、ニヤッと笑いながらぼくの右手の指先にキスをした。
大きなベッドの上でパジャマを脱がされた。パジャマはメリさんがくれたもので、ちゃんと男用のものだ。それでも胸や袖口に小さなヒラヒラした飾りがついている。本当はシロウさんへのプレゼントにしようと思っていたらしいけど、見るなり捨てられそうになったとかで巡り巡ってぼくのところに持ってきた。針仕事が上手な猫獣人の人がぼくの体に合わせ直してくれたおかげで着心地は最高だ。
そんなパジャマも下着も脱がされたぼくのお尻を、王様の太い指がじっくりほぐし始めた。そうやって準備が整ったら王様が入ってくるんだけど、ぼくの中で出すことはない。
一年と少し前にクリュソを生んだとき、カズ先生から「これ以上続けての出産は体に障りが出ます」と告げられた。もともと人の男は出産に向いていない体をしている。それなのにぼくは立て続けに三人も生んだ。次男のメランと三男のクリュソには二年くらい間が空いたけど、それでもぼくの体には相当な負担だったらしい。
ポイニーとメランは驚くくらいスポンと生まれた。でも、クリュソのときは五日間もウンウン唸ることになった。いわゆる難産というやつだ。そういうこともあって、しばらく妊娠するのは控えたほうがいいと言われた。もし子どもがほしいならもっと太って体力をつける必要があるとも言われている。
(ぼくがもっと大きな体だったらよかったんだろうけど)
でも、ぼくが大きくなることは難しい。
(ぼくが“足りない子”じゃなかったらなぁ……っと、そういうことは考えないようにしないと)
自分で自分を貶めるのはよくない。子どもができてから、ますますそう思うようになった。
そういういろんなことがあって、王様はアレを入れても中で出すことはなくなった。少し物足りないけど、王様も我慢しているんだからぼくも我慢しないといけない。
四つん這いになったぼくのお尻の孔に王様の熱くて硬いものがピタッとくっついた。大きな手がグイッとお尻を掴んで、それから熱いものがぐにゅうと入ってくる。王様のアレは相変わらず大きくて一番大きなところが入りきるまでが苦しい。でも、入ってしまえばとんでもなく気持ちよくなる。ぼくの体はいつの間にかそう感じるようになっていた。
「ぁ……ぁ、あ、ん、ん……っ、あ……ん」
声だって勝手に出てしまう。気持ちよすぎて腕から力が抜けてしまった。お尻だけ持ち上げている格好なんて恥ずかしいだけなのに、そんなことも考えられなくなる。
「アカリの中は温かいな」
「んっ、ぁ、そこ、だ……めぇ……っ」
「嘘はよくない。こうして奥のほうで俺を待ち構えている」
「ん――……っ、や、ぁ……!」
ヌクヌクと小刻みに動いていた王様のアレが、ズン! と深いところを突き上げた。それだけで潤滑液とは違うヌルヌルしたものがお腹の奥から染み出す。ポイニーを生んでから、ぼくの中はそんなふうに濡れるようになった。これも王様のつがいになったからだ。そう思うとうれしくて仕方がない。そんなことを思っていると、お腹に王様の逞しい腕が回ってグイッと起こされた。背中から抱きしめられながら王様の腰の上に下ろされる。
「ぃ、ぁ……――――!」
「グ……ッ。ふぅ、いまのは危なかった。……アカリ、中だけでイッたのか」
「ひ、ひんっ、だめ、まだ、うごかな、で……ぇ」
目も頭もチカチカした。体の奥がゾワゾワして、ぼくのアレから何かがピュピュッと噴き出す。
「こんなに奥まで入るようになった……あぁ、見てみろ。平らな腹が俺ので少し膨らんでいる」
「ひんっ!」
奥をグリグリしながら王様の手がぼくのお腹を撫でた。少しグッと押されただけで体がビクビク跳ねて、目の前で星が瞬き始める。あまりの気持ちよさに一瞬頭が真っ白になった。同時にお腹の中をグイグイ拡げている王様のアレをぎゅうぅと締め上げる。そうすると大きな手がますますぼくのお腹を押して、ぼくは怖いくらいの気持ちよさに何度も頭を振った。
「や、やだ……っ。きちゃう、ちがうの、きちゃう、からぁ……っ! フリソ、スぅ、も、押さな、でぇ……!」
「これ以上動かせば中で果ててしまう。そうできない代わりに、こうしておまえを十分かわいがってやりたい」
「やだやだ、やぁ……! でちゃ、またでちゃ、う……っ。ひ、ひ……っ、ひぁ!」
体の奥深くからゾクゾクした鋭い快感とトロトロとろけそうな気持ちよさが同時に這い上がってきた。それがお腹の中でゾクンと大きく弾けるのと同時に、ぼくのアレからプシュッと液体が噴き出す。
「あ……ぁ……」
噴き出したのは子種じゃなかった。それよりずっとサラサラしたもので、これが出るとぼくはしばらく気持ちがいいのが止まらなくなる。その間、王様はグッと奥歯を噛み締めるように息を吐いて動きを止めた。
ぼくの体の震えが少し落ち着くと、王様がぼくの体をベッドに横たえた。そうしてお尻から抜いたアレを何度か擦って、ぼくの体にビュウッと吐き出した。
(早く、ぼくの中で全部出してほしいなぁ)
体にかけられるたびにそう思った。体の奥に入れたままたくさん出してほしい。ぼくと一緒にたくさん気持ちよくなってほしい。気持ちよくて二人でグチャグチャになってしまいたい。
そんないやらしいことを考えながら、体を少しねじって王様に手を伸ばす。
「フリソス……もっと」
少し荒い息をしていた王様の蜂蜜色の目がギラッと光り、ぼくの体はますます熱くなった。
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