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エピローグ「航海は続く」
「ジン。結局、御神木の成長を促したのは、なんだったと思いますか?」
船内の薄暗いバーカウンターで、二人並んでアルコールを楽しんでいる。貴重なプライベートの時間だ。
「そんなの、アイツらが俺に説明したように「ハクが愛を込めて歌を歌ったから」なんじゃねぇの」
「愛ね……」
「イツキ。オマエは世間のイメージよりずっとドライだよな」
「私は、ジンがしてあげたことを知っていますから。アナタなりに色々考え、土があの芽に合わないんじゃないかって結論に辿り着いた。タロウとケンに、一番近い寄港地だったメキシコのカンクンまで、村の土を運ばせたでしょ?」
「たまたまだ。たまたま土を入れ替えた翌朝、ハクが歌を歌って御神木がみるみる成長した。言うなよ、土のこと。アイツらには」
「やさしいですね、ジンは。そう言うところが、好きですけど」
コテンと彼の肩に頭をのせ、もたれ掛かってみた。バーテンダーはプロフェッショナルだから、見ないふりをしてグラスを拭いている。
近づいた分、小さな声でジンに告げた。
「ハクは充分に幸せだと思いますよ。ルイも頼もしくなってきましたし。ジン、もうアナタが負い目を感じる必要はなにもない」
ジンは何も返事をしなかった。ただ私の肩を抱いてくれた。
「部屋、行くか?」
そう甘く囁いた。
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