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穂積×雪成

穂積(ほずみ)しつっこい!どけって!」 そう言って押しても押しても全然ビクともしない恋人は、ベッドの上で俺を押し倒して跨ったまま動く気配がない。 「穂積聞いてる?今日はそういう気分じゃねぇの!」 「やだ。雪成(ゆきなり)ん中入りたいもん。」 って。図体だけでかくなって中身はいつまでも子供とおんなじ。 俺が穂積みたいにでかかったら、こんな風に組み敷かれることもないのに。 何度も触れるだけのキスをしてきて、こっちがその気になってきたタイミングでやめられる。 「そんな気分じゃないのにごめんね」 退こうとする穂積の胸ぐらを掴む。 タイミングが合わないせいで俺が誘うみたいになってんじゃん。 穂積は俺を見下ろしたまま不思議そうな顔でずっとこっちを見るし。 「……行かなくていいから…」 そう言うのが自分の中で精一杯。 誘うのは苦手だから、いつも直接的な言葉では誘えない。 その点で穂積は分かりやすく誘ってくる。 俺だってしたくないわけじゃないけど、言葉にしようとすると恥ずかしくてなかなか言えない。 「それは…えーっと、したい方?  したくないけどくっつきたい方?」 手を首に回して穂積を引き寄せて、自分の大きくなったを穂積にあてる。 「誰のせいでこんなんになってると思ってんの?」 「あはは、俺のせいか。雪ほんと可愛いねえ」 結局なんだかんだ毎日のようにセックスしてて、今日だってどうせするんだろうなって思ってはいたけど。 だからちゃんと後ろの準備だってしてたし。でもなんか気分じゃない時ってあるじゃん。 そんなことを考えていたら穂積がまた何度もキスをしてくる。 キスしながら制服のボタンを外すってなかなか器用だよなぁって、また余計なこと。 「穂積お前キスしすぎ…唇腫れるわ…」 「んー、だってしたいんだもん。  それとも口下手な雪なりのお願いだったりする?」 「は?なにが?」 何を言ってるのか分からなくて疑問をぶつけると、繋いだ手に軽くキスをされた。 「他のとこにしてほしいのかなって」 「…そうじゃねぇけど……」 意地悪そうに けど? なんて聞かれて今度は自分から穂積の口を塞ぐ。 穂積とキスするのは好き。何回してもセックスは恥ずかしいけど。 上に跨ったままの穂積は俺と手を繋いだまま上から下へ、まるで飴を舐めるみたいに小さく舐めていく。 それがもどかしくて、でも自分から求めるのも恥ずかしくて言えないまま。 もっと、なんて言って欲しがりだと思われるのもシャクだし。 つないだ手を離して下半身まで下がって俺のを穂積が触る。 舐めてほしいとかそんなんも恥ずかしくて言えない。 穂積がふいに顔をあげて飴をひとつ食べる。 ――なんでこのタイミングで? そう思いながら見ているとキスをしてきて、口の中に甘い味がひろがる。 「…んむ、なにこれ……」 穂積から口移しで食べさせられたのは、りんごの味がする飴。 「おいしいけど、今…?」 「んー?エッチな気分になる飴だって。  もらったやつだけど、ほんとかなー?」 「は、お前そんなん信じてんの?ないって」 「やってみないとわかんないでしょ?」 挑発的な笑みを浮かべたあとキスをして、手を繋いだまま横になってずっと見つめてくる。 ボタンこそ留めないものの、露わになった胸元はきちんと隠されて下半身も収められる。 「なに、やっぱしないの…?」 「んや、雪がしたくなるの待ってるの」 「だからなんねーって」 そうは言ったものの下半身がむずむずする。 触ってほしいって思うのは飴のせいなのか、半端に触られたせいなのか。 「ゆき、」 「ひゃっ…ぇ…ぁ、なに…?」 名前を呼ばれただけなのになんで、穂積だって俺に食べさせる前にちょっと舐めてたじゃん。 なんで俺だけこんなおかしくなってんの? 「ゆき、何してほしい?」 「…や、言いたくない…っ、」 下着越しに触ってくるせいで先走りがシミになって拡がる。 触ってほしいとか舐めてほしいとか、そんな考えで頭がおかしくなりそう。 こんなぬるい触り方でイキそうになるのが嫌だ。 「あっ、あ…っ、やだ、や…っ」 「あはは、イッたらダメだよ?  してほしい事言えてないもんね?」 パッと手を離して笑顔でこっちを見る。 むかつく、むかつくのにイキたい気持ちの方が大きくて我慢ができない。 恥ずかしいとかそんなのもうどうでもいい。 「穂積のでイかせて、挿れてよ…っ」 「あっは、まじ?思った以上じゃん  可愛すぎ。よく言えたねぇ」 ベルトを外す音さえ頭に響く。 今聞こえてる音が全部エコーがかかったみたいに聞こえて、頭がくらくらする。 穂積がローションを用意するのも待てなくて、自分のを触って準備する。 「ねぇ雪成、俺の舐めてって言ったら怒る?」 いつもなら絶対しない。なんでそんなこと俺が、って思ってたし。 なのに穂積には舐めてもらいたい矛盾。 「ゆき初めてなのに上手だね、気持ちい…」 舐めてる最中に頭撫でられて嬉しいとか。 気持ち良くなってる声聞いて俺も気持ちよくなるとか。 頭掴まれてちょっと強引に口ん中犯されてるのがいいとか。 もうそんなんばっかり。 「あー…ゆき可愛い。もういいよ、ありがと。」 穂積は普段優しいけど、たまにSっぽくなるのがどうしようもなく好き。 本当は舐めるのだって命令みたいに言われたら、絶対言うことを聞くと思う。 「穂積はやく、はやく挿れてっ…」 はいはい、と上に乗ってきて穂積が少しづつ俺を侵していく。 ゆっくりなのが逆に良くて一気に快感がのぼってくる。 「うっ…んん…っ、あっだめ出ちゃう…っ」 「あらら、イッちゃったかぁ、ほんとえっちだねえ」 穂積の声が俺を冷静にさせてくれない。 今出したばっかりなのにまだ欲しくて身体が疼いて仕方ない。 そんな俺を穂積は分かっていて動かない。 自分じゃうまく動けないから動いてほしいのに、上から見下ろすだけで何もしてくれない。 「動いてほしそうな顔してるね」 「…分かってるなら動いてよ…っ…」 くすくすと穂積が笑って動き始めると、悔しいくらい気持ちよくて涙が出てくる。 それ以外考えられない。 「あっ、穂積…っ、ぁ、ん、んんっ」 「あー、ほんと馬鹿みたいに感じてるとこ可愛い。  理性飛んじゃってるゆき大好き。」 首に嚙みつかれて痛いはずなのに、穂積がすること全部が快感に変わっていく。 これは飴のせいなのか、俺が単純に変態なのか分からないけど。 気持ちいい以外考えられない。 「ゆきもうイケる?一緒イこ?」 返事がしたいのに口から出るのは喘ぎ声ばかりで、何も答えられない。 ただ穂積が気持よさそうな顔をしていると胸がぎゅっとなって、それと連動するように一緒に気持ちよくなっていく。 「あー、だめ、イく…」 そのタイミングで穂積が抜いて、俺のも穂積のも腹にかかる。 俺のが二回分と穂積ので割とえげつない量の精液が腹に乗っていて、腹から一筋布団へ落ちた。 起き上がるわけにもいかず拭いてもらうのを待っていると、ティッシュとウェットティッシュまで使って綺麗に拭いてくれる。 「よし、きれいきれい」 そう言ってティッシュを丸めて投げると、綺麗な弧を描いてゴミ箱へ吸い込まれいった。 布団で穂積に腕枕されながら穂積の顔を窺う。 「なーに?」 「さっきの飴、どんなやつ?」 あぁ、と脱いだズボンをとってポケットからごみをとりだす。 「これただの飴じゃん!!」 「ん?うん、騙されてたね」 あっけらかんとそう言ってきてすごい腹が立つ。 プラシーボ効果ってすごい。 すごいけど、もう二度とセックスの最中に飴は舐めないと心に決めた――。

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