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Pro.
私立・晴風学園。この学園は共学で、制服は指定の物から好きな種類が選べる学校。
そんな晴風学園に通う僕・近重 唯は、昔から可愛い格好や物が好きな為女子用の制服を着用している。最初は勇気が必要だったけど、いざ登校してみたら周りに恵まれていたようで批判される事はほとんどなかった。
「颯希、おはよう!」
「よぉ唯!おはよう」
僕が教室に入ると、入学時から仲の良い男子・枢木 颯希がいた為挨拶をする。振り向いた颯希はいつも通り挨拶を返してくれた。
「なぁ唯、宿題やったか?」
「そう聞くって事はやってないの?しょうがないなぁ」
颯希からの問に僕はいたずらっ子な表情をして見せる。もちろん上目遣いで。
実は僕は颯希の事が好き。今まで誰かを好きになった事は無かったけど、颯希に対してだけ感じる思いを姉に相談してみたら「それが恋だよ」と言われて納得したのは2年生になってから。
だけど颯希は全く振り向いてくれなくて。必死にアピールしてるのにいつも空回り。きっと颯希には仲の良い友達としか思われて無いんだろうな。
「唯?何か悩んでるのか?」
「え……?あ、何でもないよ!はい、宿題今の内に写しな?」
颯希に声を掛けられて気がついた。いつの間にか暗い表情になってしまったみたいだ。このままじゃ颯希に心配かけちゃう。すぐにいつもの笑顔に戻して宿題のノートを差し出した。
「何か悩んでるなら相談しろよ?」
「……うん。ありがとう」
いつもそうだ。僕の恋心には気づかないのに、困っている時や悩んでる時にはいつも助けてくれる。それだけじゃない。入学時に女子用の制服で登校した僕を貶すどころか似合っていると褒めてくれた初めての人。それから僕は颯希を意識するようになった。
「唯ちゃ~ん、今日も空回りだねぇ」
「藍くん」
颯希にノートを渡した後、離れた窓際でぼーっと外を見ていると静かな声で話しかけて来たのは唯一僕の恋心を知っているクラスメイト・結城 藍くん。
1年の時に転校してきた生徒で、最初は颯希経由で仲良くなったけれど藍くんには僕が颯希を好きな事かバレていて。それから相談に乗ってもらっている。
「なんで気づかないのかなぁ……まだアピールが足りないのかな」
「いやぁ、内心ではどう思ってるか分からないよ~?」
「藍くんは颯希の本心分かるの?」
藍くんの言葉に呆れた表情を向けてみるも、いつもニコニコしているその表情からは何も分からない。でも、確かにそうだ。本心なんて聞いてみないと分からない。
「でも、聞く勇気は無いなぁ……」
「そんな唯ちゃんに朗報。実は──」
ため息を吐く僕に藍くんが何かを言おうとした瞬間、すぐ側に颯希が来ていた。手にはノートを持っているから、きっと宿題を写し終えたのだろう。
「ありがとうな唯、助かった!」
「どういういたしまして」
そのタイミングでチャイムが鳴った為席に着く。結局藍くんが何を言おうとしていたのかは分からないままだった。
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