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 火薬は、はるか東の大陸で、ようやく実用化された新しい兵器だ。  敵は、これを海路交易で手に入れ、いよいよ実戦で使う気でいるらしい。 「テミスアーリン王国の領土内に入って、奴らとは何度か衝突したが……」  その際、火薬は一度も使われなかった。  矢に、槍。  そして、剣。  武器を失えば、格闘戦に持ち込んで、エディン軍と敵の武力クーデター軍は、ここ一ヶ月ほど戦ってきた。 「王都決戦に向けた、最終兵器のつもりでしょうか?」 「かも、な。だが、その浅知恵が自らの首を絞める」  火が炎を呼ぶ驚異的な兵器、と伝えられる、火薬。 (しかし、打つ手はある)  エディンは笑みを収めて顔を引き締めると、身をひるがえした。 「そろそろ時間だ。私は、行く」 「ご武運を」 「お前はここで、しっかりと戦況を記録してくれ」 「はい、竜将閣下!」  うん、とうなずき、エディンは丘から降りて行った。  兵士は、その姿が闇に消えるまで見送った。 「閣下なら、きっとこの戦、勝利してくださる!」  それは、エディンの元で戦う兵士たち全員の思いでもあった。

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