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「竜将閣下。見張りでしたら、私共がいたします」
「どうぞ、テントで今しばらくお休みください」
立ち番の兵士が持つ小さな明かりに、エディンの横顔は口の端を上げた。
「休む、などと。あと2時間で夜が明けるのだぞ?」
朝日とともに、敵軍がテミスアーリンへ突入する、との情報は、送り込んだスパイから聞いている。
エディンは、その直前に不意打ちをかけることにしているのだ。
「もう、休んでなどいられない。兵たちにも、準備を急ぐよう伝えろ」
「かしこまりました!」
見張りの一人が走り去った後、エディンはもう一人の兵に声を掛けた。
「敵が火薬を手にしていることは、間違いないのだな?」
「はい。三名のスパイが、同じ内容の報告をしております」
おもしろい、と不敵に喉で笑うエディンは、まさに竜将の名にふさわしい。
そう、兵士は思った。
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