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「さあ、踊ろう。アルネ、私をリードしてくれ」 「えっ? エディン様が、リードしてくれるのでは?」 「誰がそんなことを? 私は、ダンスは苦手なんだぞ」 「変な威張り方、しないでくださいよ」  いいから、手を。  手を取ってくれ、アルネ。 「踊ろう、アルネ」  では、とアルネは、優雅な所作でエディンの手を取った。  苦手でも、構いません。  音楽に乗り、心の向くままに。 「踊りましょう、エディン」  ダマビアの音楽に乗り、二人は踊り始めた。  聴き慣れないメロディーなので、戸惑ってしまう。  それでも二人は、自己流でステップを踏み、躍った。  速く回り、ゆっくりと近づき。  身をひるがえして離れ、手を繋いで再び向き合う。  唇が触れ合うほど近づいた時、アルネは唱えた。 「フェリックス・エディン・ラヴィゲールに、永遠の愛を誓います」  髪が交わるほど近づいた時、エディンは応えた。 「アルネ・エドゥアルド・クラルに、永劫の愛を誓おう」  手を繋ぐよりしっかりと、心は繋がっている。  音楽が、喧騒が、静かに消えていく心地だ。  視線を絡ませ、想いを結び、二人はそっと口づけた。  一足早い、誓いのキスだった。

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