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ソフィアの体には、新しい命が宿っている。
バシリキとの、赤ちゃんだ。
「僕、お兄さんになるんだよ。アルネお兄ちゃん!」
「弟かな、妹かな?」
「どっちでも、嬉しい!」
無邪気なルキアは、少し背が伸びたようだ。
そして、その兄・オアニアも、母の結婚式に出席するため、一時帰国していた。
「アルネ様。専属薬師なのに、お兄様を置いて来ちゃって、ごめんなさい」
「いいんだよ。兄上も、笑顔で承諾してくれたんでしょう?」
「その優しさに、申し訳なくってぇ……」
心配いらない、とアルネは強くうなずいた。
元・仮王だったアルネの兄は、今では体を動かすリハビリを、熱心におこなっている。
『アルネの、結婚式、までには。歩ける、ように、なるから!』
彼は話し方も、しっかりしてきたのだ。
その隣には、母・アミエラの笑顔があった。
『私は少しダイエットする! 若い頃のドレスを、着こなして見せるわ!』
彼女の言葉をアルネが打ち明けると、その場にいた皆が笑った。
エディン、ソフィア、バシリキ、オアニア、ルキア。
遠くでロビーの大笑いが響いていたが、あれはまた別のことで笑っているのだろう。
そして笑いが収まった頃、音楽が流れ始めた。
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