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 ダンスホールでは多くの人々が、次の音楽を待ちながら歓談している。  その中に今日の主役、バシリキとソフィア新郎新婦の姿もあった。 「おめでとう、ソフィア」 「フェリックス殿下! はるばるお越しいただき、ありがとうございます」 「おめでとう、バシリキさん」 「アルネ坊ちゃん! ……じゃなくって、陛下!  若草色の、ふんわりとしたドレスを纏ったソフィアは、美しい。  そして、一つしかない目を、もう隠してはいなかった。  そんな彼女の隣には、少し瞼を腫らしたバシリキがいる。 「式では、男泣きだったからなぁ。バシリキ殿は」 「竜将親分、それは言わないでくれよ!」  あれは、いい涙だったよ、とエディンは心から彼を称えた。

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