12 / 14
FALL DOWN③ 媚薬玩具攻め+イけない地獄
身体はもう、限界だった。
気を失うほどの強烈な快感を与えられたのに、達することを許されなかった。燃えるような熱が、身体に留まっている。
無意識のうちにヘコヘコと腰を揺らしてナカをバイブに擦り付け、快感を求めていた。
────イきたいのに。
生理的な涙で霞む視界に映る黒崎は、にっこりと微笑み、こちらの様子を伺っているようだ。
「イきたかったんでしょう?」
「ちが、……ぅ」
黒崎の問いかけを咄嗟に否定すると、黒崎のニヤリとした笑みがさらに深くなる。
「そうですか……」
「んぁああああッ! や、……ッ! ぅうッ!」
ナカ深くまで挿入されたバイブが再び振動し始めた。慈悲のない機械は、細かく震えながら、ぎゅるぎゅると回転をしナカを掻き回していく。
「ぉお゛ッ⁈ ん、ぅあ゛ッ! う、うう……ッ!ぁあ゛ーーーーッ!」
バイブの盛り上がった突起が、前立腺を押し上げる。こしてそこを狙い撃ちするかのように激しく振動をした。
達する直前にまで高められた身体には酷な刺激だった。
「あ゛ぁ〜〜〜〜〜ッッッ‼︎」
快感のあまり、つま先にまで力が入る。足をピンと伸ばした状態で、榊原は喉が枯れそうなほど叫んだ。
「公安のエリートだとは思えない、汚い声ですねぇ」
「う、、るさ……! あ゛ッ……いや、だッ! つ、よくしな、……ん゛ぉッッ‼︎」
バイブの振動が強まる。前立腺に与えられる刺激も当然強まり、目の前が真っ白になった。口をぱくぱくとあけ、酸素を必死に取り入れようとするが、うまく呼吸ができない。
────気持ちいい。気持ちいい。
──────頭がおかしく、なりそうだ。
悔しいけど、もう、それしか考られなかった。
だらりと開けた口から唾液が垂れ流れていく。しかし、それを気にする余裕などまったくなかった。
榊原はただ、強制的に与えられる快感に喘ぐことしかできない。
「こっちも大好きでしょう?」
「ぉお゛ッ⁈ や、だぁッ! ちく、び……やめ……ッ!う、ぐぅ! はぁ、んッ! ぁ、あ゛ッ‼︎」
ヴーーーっと低いモーター音とともに振動を始めた小さなブラシが、再び両乳首にそっと近づけられた。高速で震える無数の突起が、媚薬ローションで限界まで敏感にされた性感帯を直撃する。
「気持ちいいんですか? 僕みたいなヤクザにこんな玩具で虐められて」
黒崎が嘲るように言った。
榊原は首を左右に振って否定する。
最後まで残ったプライドのかけらが、肯定することを拒んだ。
「へぇ? じゃあもっと振動を強めますね」
「んぉお゛お゛ッ⁈ ぁああああ! う、くはぁんッ! や、だッ! だめ、……も、だめだ……って、ゔぁッ! ひ、ぁああああああああッッ!」
ビリビリと身体中が痺れる。呼吸もままならないほどの快感だった。黒崎は、榊原の乳首とアナルを徹底的に虐め抜く。そこに容赦はなかった。
「ほら、認めてください。認めないならずーっとこのままですよ」
「う、ぁあああッ! いや、だッ! やめ、、ぁああああ!」
黒崎がニヤリと笑いながらリモコンをちらつかせる。
身体はもう限界だった。
榊原はプライドを捨てる覚悟を決めて、口を開く。
「ぎ、もぢぃいッ! きも、ちいい……ッ! から……ッ! ぁあ゛あ゛ッ」
「ふふ。公安刑事がヤクザにこんな玩具で嬲られて、気持ち良くなっちゃうんですね? 変態だなぁ」
くすくす。
黒崎は笑いながら、リモコンを操作する。アナルバイブの振動が一段階激しくなる。
「は、、ぁ……ッ! や、ぁあ゛あ゛あ゛ッ! も、やめてッ! ねぇッ!くろ、さ……きくんッ! いや、ぁあ゛あ゛あ゛ッ!」
たまりにたまった熱が身体の中で暴走する。その熱を吐き出したいという身体の主張に従うように、榊原はヘコヘコと無様に腰を振る。そしてバイブにナカを擦り付けた。
そして──────
「ん、ぁあ゛ッ! い゛ッ、い゛ぐ……ッ! あ゛ッあああ!!」
射精感がぐっと込み上げる。
やっとイける。やっと熱を出せる。
────そう思ったのに。
黒崎はやはり悪魔だった。
「駄目ですよ。まだイかせてあげない」
突然、胸の突起を刺激していたローターとナカを蹂躙していたバイブの動きが弱まる。
「へ、ぁ……ッ! なん、でぇ……!」
涙声になりながら、榊原はそう言った。
限界ギリギリでまたお預けを食らってしまった。
まるで、全力で走った先のゴールテープを、直前で引き抜かれたような喪失感。
追いつめられ、追いつめられて、でも……絶頂には届かない。
火照った熱だけが、取り残されている。
もう耐えられなかった。
イきたい。イきたくて仕方がない。
「ねぇ……ッ! …………いじ、わる……しない、で……ッ!」
榊原は哀願するように黒崎の切れ長の瞳を見つめた。
無様な声が漏れる。
自分でも信じられないほど、情けない声だった。
黒崎は、黙って笑っている。
何も言わずに、ただ“こちらの反応”を見て、じっと観察している。
────ああ、まただ。
この視線。
まるで、実験動物でも見るような。
「…………イ、かせて……よ……」
言葉にした瞬間、頭の芯がじん、と痺れた。
そんな台詞、自分の口から出るなんて……認めたくない。
だけど、それでも、言ってしまった。
「ん?」
黒崎がわざとらしく首を傾げて聞き返す。
「何ですか? ちゃんと、言ってくださいよ、榊原さん」
そんなやりとりをしている間も、ナカのバイブは緩く振動したままだ。イク直前で敏感になっているナカは、そんな緩い振動さえ、致命的なダメージを受けてしまう。
榊原はぎゅっと唇を噛み締めた後、観念して口を開いた。
「……イ、かせ、て……ッ……! もう、無理……だって……!」
涙が滲む。
熱に浮かされて、頭がぼうっとする。
もう、何を言っているのか、自分でもよくわからない。
ただ──身体が、これ以上の寸止めに、耐えられそうになかった。
すると、黒崎はゆっくりと榊原に顔を近づけて、甘く囁いた。
「無理じゃないですよ。……公安のエリートなら、もう少し我慢できるでしょう?」
「っ……そんな、……ッ、言わない、で……」
苦しげに首を振る。
否定したい。拒否したい。
でも────“堕ちている”ことは、自分が一番よくわかっている。
それを、この男は楽しんでいるのだ。
「イかせてほしいなら……そうだな、もう一度、ちゃんとおねだりして?」
まただ。
また、寸前まで追い詰めて、恥をかかせて──
それでもまだ、“主導権は渡さない”という意思表示。
悔しい。
でも──それ以上に────
自分の身体は、正直だった──────
「……黒崎くん……ッ、お願い……っ……イかせて……ください……っ」
声が掠れていた。
でも、ちゃんと届いたはずだった。
なのに。
「…………そうですね」
黒崎はにこりと笑って、
「じゃあ……もう一回だけ頑張ってみましょうか」
────え?
──────嘘でしょ?
「ま、待って……ッ、うそ……ッ!」
その瞬間、バイブが再び作動する。
しかも、さっきよりもかなり強い振動。
「んんッ、ッあああああああああアアアアッッ!!」
腰が勝手に跳ねる。
黒崎はまた両手に電動ブラシを持って、また乳首に押し当てた。突起が乳首を掠めるたびに、身体がのけぞった。
そして────ナカをかき回す感覚に、全身が焼き焦げるようだった。
「も、う……ッ、だめッ! ぁ、あああ…………ッ!!」
限界の波が、押し寄せる。
今度こそ、と思ったその時。
「……はい、そこまでです」
ぷつん、と音が鳴ったような錯覚。
全ての機械が、再び、止められた。
「…………ぅ、あ、……」
喉の奥から、声にならない音が漏れる。
榊原は頭を垂れ、肩を震わせた。
泣いてなどいない。
でも──目の奥が、勝手に熱かった。
「まだ、イかせませんよ。……今夜は、榊原さんが“ちゃんと堕ちるまで”躾けますから」
黒崎の声が、遠く聞こえた。
そして、再び何かが“ぬるり”と肌を這う。
ああ────
まだ、終わらせてもらえない。
ともだちにシェアしよう!

