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FALL DOWN③ 媚薬玩具攻め+イけない地獄

 身体はもう、限界だった。  気を失うほどの強烈な快感を与えられたのに、達することを許されなかった。燃えるような熱が、身体に留まっている。  無意識のうちにヘコヘコと腰を揺らしてナカをバイブに擦り付け、快感を求めていた。 ────イきたいのに。  生理的な涙で霞む視界に映る黒崎は、にっこりと微笑み、こちらの様子を伺っているようだ。 「イきたかったんでしょう?」 「ちが、……ぅ」  黒崎の問いかけを咄嗟に否定すると、黒崎のニヤリとした笑みがさらに深くなる。 「そうですか……」 「んぁああああッ! や、……ッ! ぅうッ!」  ナカ深くまで挿入されたバイブが再び振動し始めた。慈悲のない機械は、細かく震えながら、ぎゅるぎゅると回転をしナカを掻き回していく。 「ぉお゛ッ⁈ ん、ぅあ゛ッ! う、うう……ッ!ぁあ゛ーーーーッ!」  バイブの盛り上がった突起が、前立腺を押し上げる。こしてそこを狙い撃ちするかのように激しく振動をした。  達する直前にまで高められた身体には酷な刺激だった。 「あ゛ぁ〜〜〜〜〜ッッッ‼︎」  快感のあまり、つま先にまで力が入る。足をピンと伸ばした状態で、榊原は喉が枯れそうなほど叫んだ。 「公安のエリートだとは思えない、汚い声ですねぇ」 「う、、るさ……! あ゛ッ……いや、だッ! つ、よくしな、……ん゛ぉッッ‼︎」  バイブの振動が強まる。前立腺に与えられる刺激も当然強まり、目の前が真っ白になった。口をぱくぱくとあけ、酸素を必死に取り入れようとするが、うまく呼吸ができない。 ────気持ちいい。気持ちいい。 ──────頭がおかしく、なりそうだ。  悔しいけど、もう、それしか考られなかった。  だらりと開けた口から唾液が垂れ流れていく。しかし、それを気にする余裕などまったくなかった。  榊原はただ、強制的に与えられる快感に喘ぐことしかできない。 「こっちも大好きでしょう?」 「ぉお゛ッ⁈ や、だぁッ! ちく、び……やめ……ッ!う、ぐぅ! はぁ、んッ! ぁ、あ゛ッ‼︎」  ヴーーーっと低いモーター音とともに振動を始めた小さなブラシが、再び両乳首にそっと近づけられた。高速で震える無数の突起が、媚薬ローションで限界まで敏感にされた性感帯を直撃する。 「気持ちいいんですか? 僕みたいなヤクザにこんな玩具で虐められて」  黒崎が嘲るように言った。  榊原は首を左右に振って否定する。  最後まで残ったプライドのかけらが、肯定することを拒んだ。 「へぇ? じゃあもっと振動を強めますね」 「んぉお゛お゛ッ⁈ ぁああああ! う、くはぁんッ! や、だッ! だめ、……も、だめだ……って、ゔぁッ! ひ、ぁああああああああッッ!」  ビリビリと身体中が痺れる。呼吸もままならないほどの快感だった。黒崎は、榊原の乳首とアナルを徹底的に虐め抜く。そこに容赦はなかった。 「ほら、認めてください。認めないならずーっとこのままですよ」 「う、ぁあああッ! いや、だッ! やめ、、ぁああああ!」  黒崎がニヤリと笑いながらリモコンをちらつかせる。  身体はもう限界だった。  榊原はプライドを捨てる覚悟を決めて、口を開く。 「ぎ、もぢぃいッ! きも、ちいい……ッ! から……ッ! ぁあ゛あ゛ッ」 「ふふ。公安刑事がヤクザにこんな玩具で嬲られて、気持ち良くなっちゃうんですね? 変態だなぁ」  くすくす。  黒崎は笑いながら、リモコンを操作する。アナルバイブの振動が一段階激しくなる。 「は、、ぁ……ッ! や、ぁあ゛あ゛あ゛ッ! も、やめてッ! ねぇッ!くろ、さ……きくんッ! いや、ぁあ゛あ゛あ゛ッ!」  たまりにたまった熱が身体の中で暴走する。その熱を吐き出したいという身体の主張に従うように、榊原はヘコヘコと無様に腰を振る。そしてバイブにナカを擦り付けた。  そして────── 「ん、ぁあ゛ッ! い゛ッ、い゛ぐ……ッ! あ゛ッあああ!!」  射精感がぐっと込み上げる。  やっとイける。やっと熱を出せる。 ────そう思ったのに。  黒崎はやはり悪魔だった。 「駄目ですよ。まだイかせてあげない」  突然、胸の突起を刺激していたローターとナカを蹂躙していたバイブの動きが弱まる。 「へ、ぁ……ッ! なん、でぇ……!」  涙声になりながら、榊原はそう言った。  限界ギリギリでまたお預けを食らってしまった。  まるで、全力で走った先のゴールテープを、直前で引き抜かれたような喪失感。  追いつめられ、追いつめられて、でも……絶頂には届かない。  火照った熱だけが、取り残されている。  もう耐えられなかった。  イきたい。イきたくて仕方がない。 「ねぇ……ッ! …………いじ、わる……しない、で……ッ!」  榊原は哀願するように黒崎の切れ長の瞳を見つめた。  無様な声が漏れる。  自分でも信じられないほど、情けない声だった。  黒崎は、黙って笑っている。  何も言わずに、ただ“こちらの反応”を見て、じっと観察している。  ────ああ、まただ。  この視線。  まるで、実験動物でも見るような。 「…………イ、かせて……よ……」  言葉にした瞬間、頭の芯がじん、と痺れた。  そんな台詞、自分の口から出るなんて……認めたくない。  だけど、それでも、言ってしまった。 「ん?」  黒崎がわざとらしく首を傾げて聞き返す。 「何ですか? ちゃんと、言ってくださいよ、榊原さん」  そんなやりとりをしている間も、ナカのバイブは緩く振動したままだ。イク直前で敏感になっているナカは、そんな緩い振動さえ、致命的なダメージを受けてしまう。  榊原はぎゅっと唇を噛み締めた後、観念して口を開いた。 「……イ、かせ、て……ッ……! もう、無理……だって……!」  涙が滲む。  熱に浮かされて、頭がぼうっとする。  もう、何を言っているのか、自分でもよくわからない。  ただ──身体が、これ以上の寸止めに、耐えられそうになかった。  すると、黒崎はゆっくりと榊原に顔を近づけて、甘く囁いた。 「無理じゃないですよ。……公安のエリートなら、もう少し我慢できるでしょう?」 「っ……そんな、……ッ、言わない、で……」  苦しげに首を振る。  否定したい。拒否したい。  でも────“堕ちている”ことは、自分が一番よくわかっている。  それを、この男は楽しんでいるのだ。 「イかせてほしいなら……そうだな、もう一度、ちゃんとおねだりして?」  まただ。  また、寸前まで追い詰めて、恥をかかせて──  それでもまだ、“主導権は渡さない”という意思表示。  悔しい。  でも──それ以上に────  自分の身体は、正直だった────── 「……黒崎くん……ッ、お願い……っ……イかせて……ください……っ」  声が掠れていた。  でも、ちゃんと届いたはずだった。  なのに。 「…………そうですね」  黒崎はにこりと笑って、 「じゃあ……もう一回だけ頑張ってみましょうか」  ────え?  ──────嘘でしょ? 「ま、待って……ッ、うそ……ッ!」  その瞬間、バイブが再び作動する。  しかも、さっきよりもかなり強い振動。 「んんッ、ッあああああああああアアアアッッ!!」  腰が勝手に跳ねる。  黒崎はまた両手に電動ブラシを持って、また乳首に押し当てた。突起が乳首を掠めるたびに、身体がのけぞった。  そして────ナカをかき回す感覚に、全身が焼き焦げるようだった。 「も、う……ッ、だめッ! ぁ、あああ…………ッ!!」  限界の波が、押し寄せる。  今度こそ、と思ったその時。 「……はい、そこまでです」  ぷつん、と音が鳴ったような錯覚。  全ての機械が、再び、止められた。 「…………ぅ、あ、……」  喉の奥から、声にならない音が漏れる。  榊原は頭を垂れ、肩を震わせた。  泣いてなどいない。  でも──目の奥が、勝手に熱かった。 「まだ、イかせませんよ。……今夜は、榊原さんが“ちゃんと堕ちるまで”躾けますから」  黒崎の声が、遠く聞こえた。  そして、再び何かが“ぬるり”と肌を這う。  ああ────  まだ、終わらせてもらえない。

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