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FALL DOWN②(玩具調教のはじまり)

      ────本当に、綺麗だ。  榊原孝之。  誰もが一目置く警察庁のエリート。地位も、頭脳も、振る舞いも、誰より優れている。  そして他人をチェスの駒のように操る狡猾さと、不要になったらあっさりと切り捨てる冷徹さを持つ男。  そして、こちらのことも手駒にしようと、牙を隠して接触してきた獰猛な獣────  だが、しかし。  その冷徹な獣は、今、大きく脚を開いて秘部を晒し、目隠しをされ、息を荒げて身悶えていた。  脚枷に繋がれた足首が、わずかに震える。彼は今、恐怖でも羞恥でもなく、“欲望”で震えているのだ。  黒崎にとってその事実は、たまらなく愉しいものだった。  黒崎もまた、他人を支配することに悦びを感じるタチの人間であった。そして支配する相手は、強者であればあるほどよかった。だから、公安のエリート──榊原孝之はうってつけの相手だった。 ────本当に無様だ。そして────美しい。  榊原が身体を揺らすたび鎖が金属音を立てる。そして羽織っているだけの、はだけたワイシャツがふわりと揺れた。  黒崎は、この日のために購入した高級品の筆をケースから取り出す。そして榊原に近づいた。  榊原は、気配を察知したのか、目隠しをされた顔を上げた。  そんな様子を見て、黒崎はほくそ笑む。 「んぁ、……ッ! なに、を……ッ!」  筆で首筋を撫でてやると、榊原は面白いほど反応を示した。 「人間は五感の一つを奪われると──残った他の五感がより鋭くなるんです」  次にどこで何をされるか────榊原にそれを想像させてやる。 「ひ、ぅ……や、ぁ……ッ!」 「くすぐったい? それとも気持ちいい?」 「や、だ、ぁ……ッ! それ……っ!」 「嫌じゃないでしょう?」  ワイシャツをめくり、乳輪を優しくなぞる。榊原は甲高い声を上げた。そのままゆっくり、やさしく、なぞりつたけると、それだけで乳首はぴん、と存在を主張する。 「は、ぅ……んぁ……っ!」  両方の胸の突起の周りをなぞり、二つともしっかり勃起させる。しかし、先端は触ってやらない。あえて焦らすように、首筋やふともも、脇腹だけをなぞってやれば、榊原は身体をくねらせた。 ────ああ、触って欲しいんですね。 「く、ぅう……」  榊原が唇を噛み締めて悶えている。  そんな様子を愉しみながら、敢えて榊原の弱いところを外して優しく愛撫する。直接的な刺激を与えていないのに、榊原のペニスはまるで腫れ上がっているかのように大きくなっていて、だらだらと先走り液が垂れ流れていた。  全身をなぞった後、弱点を攻めないまま、黒崎は筆をケースにしまった。  そして今度はボトルにはいったローションを取り出す。ただのローションではない。これは裏社会で出回っている、違法薬物入り────いわゆるラブドラッグがたっぷり入ったローションだった。  たらり、とローションを手に垂らす。そして手のひらで十分あたためたあと、榊原の両胸にたっぷりと塗り込んだ。 「ひ、ぁあッ⁈ なに、……?」 「ふふ。ただのローションですよ」  榊原がほっとしたような顔をする。  その顔を見て、自然と口角が上がった。 「ええ……ただの────媚薬入りのローションです」 「な、────ッ⁈」  榊原がわかりやすく動揺する。ガチャガチャと手枷足枷が音を立てた。 「ちょ、……っと、それ……は、」 「まずいんですか? 気持ちよくなりたいんだと思って。ああ、こっちにも塗ってあげないとだめですね」  ボトルからさらにローションを垂らし、今度は丸出しになっている秘部へ塗り込める。 「あ、ああ……ッ! あつ、い……ッ! これ、……やめ、て……ッ!」 「駄目です。榊原さん。あなたはもう────逃げられないんですよ」 「────ッ!」  目隠しで隠れてはいるが、榊原が悔しそうな表情を浮かべていることはよくわかった。 「ね。もっともっと気持ちよくなりましょう?」 「ひ、ぁあっ!」  ぬるぬるとローションを纏った指を、後孔へ差し込む。肉壁は差し込んだ指をぎゅっと圧迫し、押し返してくる。 「や、ぁ、……ッ! ん、、ふぅ……はぁ……っ!」  指をゆっくりと押し進める。そしてゆっくりと肉壁をなぞった。 「ん……しっかりキツイですね」 「は、ぁ……ふ、、ぅ、ッ! く、はぁッ」  二本目の指を挿入し掻き混ぜる。ぐちゅぐちゅという淫猥な音と榊原の吐息が、部屋にこだまする。 「もう、いいか……」 「ひ、ぁっ!」  柔らかくなったそこから、黒崎は指を引き抜いた。そして、バッグから黒い布の袋を取り出す。その中には、今日のために用意した選りすぐりの性玩具が入っている。  一番初めに取り出したのはピンク色のアナルバイブだ。太さもしっかりあって、前立腺を刺激できるよう突起もついている優れものだった。  バイブに媚薬ローションをたっぷり絡ませてたあと、榊原の後孔に押し当てる。 「何を────⁈」 「榊原さんはこういう太いのが好きでしょう?」 「んぁああああッ!」  ぎゅっと押し込むと、それはぬるりと奥へ吸い込まれた。手元のリモコンを操作してスイッチを入れると、ヴヴヴヴというモーター音と共にバイブが動き出す。 「ぉお゛⁈ は、ぁ……ッ! や、だ……これ、なに……っ」 「ただのバイブですよ。榊原さんなら経験くらいあるでしょう?」  煽るように言ってやる。  榊原は何かを言おうとしたようだが、すぐに喘ぎ声にかき消された。 「ああ、そろそろ乳首のローションが効いてきたころかな?」 「ぁああああッッ!!」  ぬるぬるとローションが反射する胸の突起をきゅっと摘む。すると榊原は悲鳴のような声を上げた。 「かわいいなぁ。榊原さん。本当に……哀れでかわいい」 「ぅおッ! それ、やめ、……ッ! んは、ぁ……っ!」  乳首をコリコリといじった後、黒崎は再び黒い袋に手を伸ばす。  今度は、電動歯ブラシのような、持ち手のついた小さなブラシを二本取り出した。先端の極細ブラシ部分はシリコーン素材となっている。これは乳首専用の触手型突起付きローターだ。  さっきのアナルバイブも、このローターももちろん榊原のために購入した。馬鹿馬鹿しい買い物だとは思ったが、榊原のよがる姿を想像しながら動画を選ぶのはとても愉快だった。  性的な拷問というのは、実は、痛みによる拷問よりも効果が出る場合がある。特に、プライドの高い“男”に対して有効だ。強制的に快楽を与えられ、意に反してよがり狂わされる。そんな屈辱を散々与えてやれば、屈強な軍人でも心が折れ、精神的な支配を受けてしまうのだとか。  この精神的支配の方法は、裏社会では有名な話である。だから、この媚薬ローションも性玩具も、裏社会の売人から購入したものだった。  カチ、と二本ともスイッチを入れる。アナルバイブと同様に低いモーター音を立ててブラシが小刻みに振動し始めた。そのモーター音に榊原の方はぴくりと跳ねた。 「な、に……を…………」 「ねぇ榊原さん。媚薬ローションのせいで神経が敏感になっている乳首に、こんなもの当てられたら────どうなると思います?」 「んん、……ッ!」  榊原の鎖骨の周りを、電動ブラシでなぞる。榊原はくすぐったいのか、身じろぎした。 「ほん、、と……ふ、、ぁ……っ! く、……悪趣味……だね……っ!」 「ふふ。でもそんな悪趣味なことをされて、気持ちよくなっちゃうんですよね?」 「い、ぃああああああッ! や、ぁあああああッッ!」  二本のブラシをそっと乳首に沿わせる。無数の柔らかい突起が、ローションで滑る突起を拘束で擦り続けた。  榊原は絶叫しながら、身体をばたつかせる。 「う、ぁああああッ! ねぇ、それ……ッ! やめ……てッ! や、ぁあ゛あ゛ーーーーーッ!」  媚薬ローションと玩具のコンビネーションの効果は絶大だった。榊原はベルトを引きちぎる勢いで身体を暴れさせ、快感から逃げようと必死だ。 「ああ、そうだ。まだナカのバイブ、弱なんですよね。少しあげますか?」 「いや、だ……ッ! やめ、て……ッ! んは、……ッ!ぁあああ、いや、だッ! たえ、られない……からッ!」  もちろん、黒崎はそんな懇願を聞き入れたりはしない。リモコンでバイブの振動の強さを一段階上げた。 「お゛ぉ゛ッ⁈ んぉ、お゛ッ! や、、んぁあ゛あ゛ーーーーーッッ!」  榊原の叫びは、もはや動物の鳴き声だ。媚薬のせいで敏感になった部分を無慈悲にも機械で徹底的に虐められている。  逃れ慣れない快感から必死に逃れようと喘ぐ榊原の姿は──────  ────ただただ無様で美しかった。 「そろそろイきそうですね? イきたいですか?」 「い゛や、……だっ! イきたく、ない……ッ!ん、ぁああああああーーーーーッ!」  榊原の身体が跳ねるその瞬間。  黒崎はバイブのスイッチを切った。同時に、乳首からブラシを離す。 「ふ、ぇ……はぁ……なん、で……?」  榊原が口を大きく開けて、はぁはぁと荒い呼吸を繰り返す。 「なんで? 榊原さんもしかして────イキたかったんです?」  少し煽るように言ってやると、榊原は口をつぐんで俯いた。 「イきたくないって、自分が言ったんですよ?」  黒崎が、汗ばんだ髪を撫でる。そして榊原の目元を覆っていたシルクの布を取り払った。  榊原の目は、泣き腫らしたように真っ赤だった。そしえ生理的な涙で、ぐちゃぐちゃになっていた。  そんな姿を見た瞬間、黒崎の身体の中心は燃えるように熱くなった。 ────最高だ。  あの、榊原孝之が。こんな姿を晒している。  黒崎はごくりと喉を鳴らした。  そして──── ────もっともっと。乱したい。 ────もっともっと無様な姿を晒してほしい。  これからのことを想像するだけで、口元は緩んでしまう。  黒崎はうっとりと、正面の榊原の姿を眺めた。

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