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FALL DOWN⑦

     榊原の身体は、すっかり力を失っていた。  脱力した肢体がシーツに沈み、白く乱れた胸元が、わずかに上下している。  眼差しはとろけ、焦点は合っていない。  数度の絶頂を重ね、奥を熱で満たされた身体は、もはや抵抗という概念を忘れてしまったように──ただ、甘えたように眠っている。  「……ふふ」  思わず笑みがこぼれた。  たぶん、他人に見せれば“優しい笑顔”に映るだろう。  けれどその実、黒崎の胸に広がっていたのは──達成感と、圧倒的な所有欲だった。  “飼ってあげますね”──そう言葉にした瞬間、榊原のまぶたが小さく震えたのを見逃さなかった。  あれは恐怖でも屈辱でもない。  むしろ、安堵。  やっと居場所を与えられた、そういう顔だった。  「……ほら、やっぱり。あなたは、僕のものになるようにできてたんですよ」  寝息すら整わないその口元に、指先を軽く滑らせる。  唇は柔らかく、わずかに熱を帯びている。  その唇が、さっき……“好き”と囁いた。 ────無意識の告白。……あれは、きっと本音だった。  理性を手放す寸前、無防備にこぼれた言葉。  だからこそ、信用に足る。  決して無垢ではない。  むしろ、頑なで、ずるくて、強がりで。  でもその奥にある“甘さ”を見抜いたとき──黒崎は、この男を“手に入れたい”と思った。  他人を見下していた榊原孝之が、  自分の手の中で喘ぎ、泣き、イかされ、  そして「好き」と口にするまでに堕ちた。  その軌跡は、何より甘美で、なにより美しかった。  「……大丈夫。もう誰にも渡しませんよ」  黒崎はそっと、シーツを引き上げて榊原の肩を覆った。  抱きしめるようにその背中に腕を回し、唇を耳元へと近づける。  「あなたは僕のもの。これからずっと……ずっと、ね」  榊原のまぶたが、微かに動いた。けれど目を開けることはなかった。  ただ、ほんの少し、指が黒崎の手を掴んだ気がした。  その反応すら、たまらなく可愛いと思ってしまう自分に、少しだけ笑ってしまう。 ────ああ……完璧だ  この夜は、完全なる“支配の夜”。  黒崎啓は、榊原孝之という男を、完全に“手の中”に落としたのだ。  

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