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第11話 継母は、難しい

 2ー1 初夜  使用人が俺を夕食に呼びにきたのは、辺りがすっかり暗くなった頃のことだった。  さすがにこの時間までお茶の1つも出されなかったので俺は、喉も乾いていたし、腹もすいていた。  待ってましたとばかりに部屋を飛び出す俺に使用人が呆れた顔をしている。  仕方ないし!  短い赤毛の男の使用人は、俺を屋敷の1階にある食堂へと案内するとぺこりと礼をして去っていく。  俺は、1人で寒々とした食堂へと入っていった。  食堂は、広い部屋の中央に大きな黒いツヤツヤのテーブルが置かれていてその両側に椅子が並んでいたが、食器が用意されているのはテーブルの端っこの1ヵ所だけだった。  俺がそこに向かうと椅子の脇に立っていた使用人が椅子をひいてくれた。  そこは、貴族として扱ってくれるらしい。  席に着くと料理が運ばれてきた。  濃厚な味わいのスープに白パン。それに焼いた肉といったメニューだ。  うん。  俺は、普段からあまり食事を与えられていなかったので夢のようだった。  貴族として恥ずかしくないように気をつけつつも美味しく味わわせていただく。  全てを食べ終わった後、使用人がお茶を運んできた。  このお茶もなかなかいいものだ。  さすがは、伯爵家。  俺がお茶の匂いをくんくん嗅いでいるとどこからか現れたラトグリフがえへん、と咳払いをした。  「主より、今夜は、屋敷に戻れないので1人で休まれるようにとのことでございます」  はい?  俺は、露骨にホッとしてしまう。  今夜は、伯爵は、帰ってこないらしい。  いや。  それなりの覚悟はしてるつもりだけど、やっぱり男に抱かれるのは、きっついし!  まあ、今夜がなくてもいつかは、抱かれることになるんだがな。  それでも、とにかく、安心した。  初夜がなくなったことを聞いても別段、気落ちした様子もない俺にラトグリフは、不満げに眉をひそめる。  俺は、ラトグリフににやっと笑ってみせた。  初夜がなくなったぐらいでへこむ訳がないでしょ!  ラトグリフは、俺をじろっと睨み付けると礼をして部屋を出ていく。  俺は、ゆっくりとお茶を楽しんでいた。  うん。  確かに伯爵家は、裕福らしいな。   家族の使う食堂ですら豪華な魔法石をふんだんに使ったシャンデリアを飾っているし。  俺は、最後の一滴までお茶を飲み干すと部屋を後にした。  見物がてらふらふらと廊下を歩いていたら階段のところで人が争っているのを目撃してしまい立ち止まる。  思わず近くにあった大きな石像の後ろに身を隠してしまった。  「触らないで!」  栗色の髪の少年が冷ややかに相手を見上げている。  「父上がなんと言おうとも僕は、あなたのもとになんて行かないから!」  「しかし、私は、君を妻にする代わりに伯爵の事業に出資しているんだよ?ロゼス」  見知らぬ太った髪の薄い中年男がしまらない笑顔を浮かべて少年に言い寄る。  「約束を守らないというなら、伯爵家は、破滅だ」  「くっ!」  ロゼスが悔しげに唇を噛む。  「父上が戻られたら、あなたなんかに好き勝手させはしない!」  「それは、どうかな」  男がにやにやと厭らしく笑いながらロゼスに手を伸ばす。  「今夜、君を自由にしていいと言ったのは君のお父上なのだよ?ロゼス」  「そんなバカなこと!」  俺は、階段の上で言い争っている2人を物陰から見ていたがなんだか、厭な気分だった。  

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