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第20話 継母は、難しい

 2ー10 詰み  ロゼス君の婚約者(仮)は、ラドリー子爵と名乗った。  本人の説明によれば、どうやら最近子爵位を金で買った成金のようだ。  「何もご心配はいりませんよ、奥方様」  ラドリー子爵は、俺の手をとりにちゃあっと微笑んだ。  「これからのことは、この私にお任せください。アンリ様のこともロゼスのことも私が悪いようにはいたしません」  俺は、ぞわぞわしてラドリー子爵の手を払うと貴族のよそいきスマイルを浮かべた。  「ありがたいお言葉ですが、その心配はございませんから」  俺は、口許に張り付けたお貴族様の笑いを浮かべたままラドリー子爵を睨み付けた。  「私もロゼスも、あなたのお世話にはならなくても大丈夫でございます」  「では、あなたは、やはりラインズゲート侯爵様と親しくされているのですか?」  ラドリー子爵が黄みがかった丸い目で俺をねっとりと見つめる。  「俺がラインズゲート侯爵と親しい?」  俺は、きっ、とラドリー子爵を睨み付けた。  「とんでもない!侯爵とお会いしたのは昨日のことです。親しいわけが」  「そうでしょうか?」  ラドリー子爵が訳知りげに目を瞬かせる。  「噂では、あなたと侯爵が2人きりで会っていたとか」  うぐっと俺は、呻いた。  さっきのリュートとのキスが思い出されて顔が熱くなってくる。  「そ、それは……」  「お話し中、失礼する」  かっかっと靴音高く部屋に入ってきたリュートがラドリー子爵に微笑んだ。  「なんでも私の噂をしておられたようだが」  「い、いえ、その、私は、ただ、あなたとアンリ様がお親しい関係なのではないか、と思いまして」  「親しい?」  リュートは、突然、俺を背後から抱き締めた。  「とんでもない。私たちは、親しいのではなく、運命の出会いをした番同士なので」  「はひっ?」  リュートの言葉に俺は、頭が真っ白になっていた。  ラドリー子爵が目を輝かせた。  「なんと!」  「グレイスフィールド伯爵には、私から話すつもりでした。それが、こんなことになってしまうとは」  リュートが俺の耳元で囁くので俺は、びくっと体を強ばらせた。  「ずいぶん、楽しそうなお話をしておられますね」  声の方を振り向くとそこには、怒りに青い目をぎらぎらと輝かせているロゼス君とラトグリフが立っていた。  マジ、やばい!  俺は、リュートの腕を振り払おうとしたが、リュートは、俺のことを離そうとはしない。  詰んだ。  俺は、血の気が引いていくのを感じていた。  

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