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第22話 継母の心得
3ー2 伯爵代理?
「そんな」
俺が反発しようとした時、リビングの扉が開いてリュートが入っていて俺とロゼス君の叔父上との間に割り込んできた。
「久しぶりだな、ピエストル男爵」
「ラ、ラインズゲート侯爵ではないですか」
ロゼス君の叔父上が急に青ざめる。
「この度は、いろいろとロゼスがお世話になったようで。ありがとうございました」
うん。
まだ、いたんですか、的な感じ?
いや、俺も驚いてるけどさ。
でも、露骨に嫌そうな顔してるな、ロゼス君の叔父上。
「伯爵家の今後については、ロゼスと伯爵の奥方であるアンリで話し合う予定になっているが、君が心配するようなことにはならないだろう」
リュートがいかにも高位貴族らしく傲慢な態度で話すとロゼス君の叔父上がちらっと嫁と家族を振り返った。
「しかし、ロゼスは、まだ学生で……」
「ならば、奥方であるアンリがロゼスが成人するまで伯爵代理をつとめればいいだろう?」
リュートの言葉にロゼス君が顔を上げる。
ロゼス君の叔父上がなおも口を開こうとするのをリュートがぴしゃりと制した。
「もちろん、この私も微力ながら後ろ楯になろう」
はい?
ぎろっとロゼス君の叔父上に睨まれて俺は、びくっと震え上がった。
この人、何、言ってくれてるの?
俺が、伯爵代理なんて、無理に決まってるだろ!
てか。
俺は、この家を出ていくつもりなんですけど!
じわっと涙目になっている俺を笑顔でリュートが振り返る。
「それでいいだろう?アンリ」
答えあぐねている俺を見てロゼス君の叔父上が勢いづく。
「いいわけがないでしょう!ねぇ、アンリ殿」
「お、俺は……」
俺は、突然のことに頭がぐるぐるなっていた。
この家に残って伯爵代理になる?
そんなこと、できるわけがないし!
だいたい、ロゼス君たちにも嫌われてるし、皆さんが認めるわけがないし!
「ほら、アンリ殿は、ご自身の身の丈を理解されているではないですか!伯爵家を女子供が継げるわけがないでしょう?」
はい?
女子供ですと?
俺は、ぴくっと顔を上げてロゼス君の叔父上を見た。
俺のことをバカにしきった顔。
俺が。
抵抗できないと確信している。
その顔がギードと重なる。
なんだか、すごく、嫌な気分だ。
この家に残るのも嫌だが、こいつらの思い通りになるのも嫌だ!
「そうでしょう?アンリ殿」
「俺は!」
俺は、にっこりと口角を上げた。
「短い期間とはいえ伯爵様の妻となった身ですから、その子であるロゼスの成人までは、俺に責任があると思っております故に、責任持ってロゼスが成人するまでこの家を守り抜きます!」
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