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第23話 継母の心得

 3ー3 密談  満面の笑みを浮かべたリュートと疑うように俺を見ているロゼス君を前にして、俺は、すんごく後悔していた。  なんでこんなことに?  俺とリュート、それにロゼス君とラトグリフの4人は、今、グレイスフィールド伯爵の執務室にいた。  「お茶をどうぞ、アンリ様」  ラトグリフがいい匂いがするお茶のカップを差し出すのを受け取るとそのまま、俺は、カップを見つめていた。  「やはり俺が伯爵代理なんて、無理なんじゃないでしょうか?」  「そんなことは、ない!」  ロゼス君が声を上げた。  ロゼス君は、真剣な表情で話す。  「僕が成人するまであと3年。叔父上たちに好き勝手されるぐらいならあなたに形だけでも伯爵代理になってもらいたい!」  「はぁ……」  ほけっとロゼス君を見ている俺にロゼス君は、頬を紅潮させて力説する。  「叔父上は、放蕩のすえにあの女と結婚し勘当同然に家を出された。あの人に戻ってきてほしくはない。それぐらいならあなたに形だけでも伯爵代理になってもらった方がずっとましだ!」  なんか、俺の評価、低くない?  いや。   わかるんだけど、さ。  形だけでもって、2度言ったし!  複雑な思いの俺にかまわずロゼス君は、続けた。  「もし、領地経営とかできないなら僕がやるし、ラトグリフも手伝ってくれるし!」  「そうなんですか?」  俺がちらっラトグリフのことを見たら、ラトグリフがすっと黙礼した。  ううっ。  なんか、流れが変!  今まで俺のこと、継母とも認めないって感じだったのに、なんで急に?  ぽん、と隣に座っていたリュートが俺の肩を叩いた。  「もう、諦めろ、アンリ」  「でもっ!」  「例え、お前にその能力がないとしてもロゼスは、優秀だし、ラトグリフもいる。もちろん、私も力になろう」  リュートがすぅっと目を細める。  「それとも、お前は、この伯爵家が没落するのを望むのか?アンリ」  俺は、ぶんぶんと頭を振った。  俺は、別にロゼス君が不幸になることを望んでいる訳じゃないし、この伯爵家に没落して欲しいわけでもない。  ただ、俺は、平穏無事に暮らしたいだけ!  「でも……グレイスフィールド伯爵家には、その、かなりの借金があったのでは?」  俺が恐る恐るきくとロゼス君が驚きを隠せない様子で訊ねた。  「なぜ、それを?」  「ええっと、そう!ロゼス君の婚約者のラドリー子爵にききました!」  俺が答えるとロゼス君がちっと舌打ちする。  「あいつか!」  「大丈夫だ。そのことなら私とグレイスフィールド伯爵の間で取引があったんだ」  リュートがふっと口許を緩める。  「お前も知っていると思うが、私とロゼスの父は、腐れ縁でな。頼まれて借金の肩代わりをしてやることになっていた」  そう。  リュートは、嘘をついてない。  彼は、伯爵と取引をして借金を肩代わりすることになっていた。  ロゼス君と引き換えに。    

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