24 / 111

第24話 継母の心得

 3ー4 愛人契約  「その、ただで借金の肩代わりをしてくださるんですか?」  俺は、消え入りそうな声でリュートにきいた。  「何か、その、要求される、とか?」  「要求?」  リュートがきょとんとする。  「私が?」  「ああ、いえ、別になければいいんです!」  俺は、慌てて誤魔化そうとするがリュートは、なにやら考え込んでから信じられないぐらいいい顔して俺を見た。  「それは、いいかもしれないな」  何がいいかもしれないんですか?  俺がびくびくしているとリュートが笑顔でみなに宣言した。  「どうだろう。ただ借金を肩代わりしたのでは心苦しいとアンリもいうことだし、ここは、当然の対価を求めてみるというのは?」  「対価、ですか?」  ロゼス君がちらっとラトグリフをうかがう。  「どんなことでしょう?」  俺は、頭を抱えていた。  しまった!  俺のせいだ!  俺が余計なことを言ったから!  ロゼス君、ごめん!  ロゼス君が酷い目にあえばいいのになんて、決して思ってないから!  俺は、いつだって君の味方だし!  「私が望む対価は」  リュートが口を開く。  しん、と部屋の中が静まり返る。  ごめん!  俺は、必死に心の中でロゼス君に謝っていた。  「アンリを」  はいっ?  予想外の言葉に俺は、ぎょっとして顔を上げた。  ロゼス君とラトグリフも顔を見合わせている。  「アンリ・フランソワ・グレイスフィールド伯爵代理を私の愛人とすることを要求する」  はいぃっ!?  俺は、もう、泣きそうになってしまう。  なんで?  そこは、ロゼス君を要求するとこでしょ?  なんで俺?  「それは……」  ロゼス君がちらっと俺の方をうかがう。  俺は、涙目でロゼスくんを見つめた。  頼む!  反対して!  自分が代わりにとか言わなくてもいいけど、ここは、反対して!  だが、ロゼス君は、神妙に頷く。  「アンリが決めることなんじゃないか、と。アンリがそれを望むなら、僕は、反対したりするつもりはありません」  マジか!  すぅっとリュートが俺の腰に手を回して抱き寄せる。  「反対する者もとくにないし、かまわないだろう?アンリ」  「ふぇっ?」  俺は、口をはくはくさせていた。  なんとかしなくては!  このままだと、俺がロゼス君の代わりにこのヤンデレ男の餌食になってしまう!  「では、そういうことで契約書を用意させよう」  リュートがにこやかに告げる。  まずい!  ほんとにまずいってばっ!  俺は、リュートに抗議しようとしたが、声が出なくて!  「あっ、あのっ!」  「なんだ?アンリ」  じっと見下ろす金色の瞳に俺は、わなないた。  「その、契約って、俺」  「心配するな、アンリ」  リュートが妖しく美しい笑みを浮かべた。   「うんと可愛がってやる」

ともだちにシェアしよう!