25 / 111
第25話 継母の心得
3ー5 約束
夜になって部屋で1人になった俺は、すっかり呆けていた。
何がどうなってこんなことに?
ただ、後添いにと望まれて嫁に来ただけなのに、なんで俺が主人公の代わりに愛人?
しかもあの、変態界の雄であるリュート・ミューゼル・ラインズゲート侯爵の?
助けて!
神様!
俺を見捨てないで!
俺は、ベッドに横たわってうるうると涙を流していた。
「俺……いったいどうなっちゃうの?」
その時、不意にドアをノックする音が聞こえて俺は、がばっと体を起こした。
「誰だ?」
「僕、だ」
静かにドアが開いてロゼス君が姿を現す。
「少し、時間、いいだろうか?」
俺は、涙をそっと拭うとロゼス君を部屋に招き入れた。
ソファに腰かけたロゼス君を俺は、前の椅子に座ってうかがった。
ロゼス君は、肩まで伸ばした栗色の髪に青い目をした美少年だ。
こうしてみるとマンガで見るよりずっと可愛らしい感じ。
色も白いし、けっこう小柄で守ってあげたくなるタイプだと前世では思っていたんだが、今生で会ってみるとなかなかの思春期の生意気ざかりの男の子だった。
こんな子がリュートみたいな奴の餌食にならなくてよかったかも。
俺は、ふぅっとため息をついた。
その代わりに俺が!
俺がピンチなんだけど!
「あ、あの」
突然、ロゼス君が口を開く。
「伯爵代理のこと、ありがと」
「そのこと?」
俺は、素直に礼を言われてちょっと驚いていた。
だって、ロゼス君は、俺のこと嫌ってたし!
この家に来てから数えるほどしか話してないけど、いつだって俺に嫌悪感丸出しだったし!
「別に、大丈夫。気にしなくてもいいよ」
うん。
俺は、頷く。
そのことは、な!
ちょっとホッとした表情になったロゼス君がまた、顔を伏せる。
「それから……あの、ラインズゲート侯爵、のことなんだけど」
はいっ?
俺は、まじまじとロゼス君を見た。
もしかして代わってくれるとか?
「このことの責任は、僕に、ある!」
ロゼス君は、俯いたまま両手を膝の上で固く握りしめる。
「だから!」
ええっ?
俺は、ごくっと息を飲んでロゼス君の言葉を待った。
ロゼス君は。
きっ、と顔を上げると真剣な表情で俺を見つめた。
「だから、責任をとってあなたを将来、僕の……妻にするから!」
はい?
俺は、ぽっかーん、としていた。
ロゼス君は、頬を真っ赤に染めて目を伏せる。
「僕が、あなたを一生大切にするから、だから、僕が大人になるまで。3年だけ我慢して」
何が起こっているんですか?
俺は、あまりにも斜め上のロゼス君の言葉に衝撃を受けていた。
「約束、だから!」
ロゼス君は、そう言うと立ち上がり部屋を去っていった。
残された俺は。
きょとん、だった。
ともだちにシェアしよう!

