77 / 111

第77話 始祖の再来

 8ー7 最高最愛  『まあ、そんなに案じることはない。いざとなれば我も力を貸してやるしの』  俺は、ふよふよと辺りを浮遊しているイキナムチをじとっと見つめた。  怪しいもんだし!  俺は、また、町から人払いをすると今度は、町の入り口の辺りに立って傾斜している町を見上げていた。  しかし、家を造るって。  俺は、考えていた。  どんな町並みにすればいい?  とにかく実際に住むのは、ライゾさんたちなわけだし、彼らが好むような建物にしたい。  俺は、広場の噴水の前に立って意識を集中した。  みんなが住みやすい、いい街になればいい。  それでもって美しければ、なお、いい。  俺は、魔力を練りながら考えていたが、なかなか思い付かなくて。  「どうした?アンリ」  俺の背後に立っているリュートが俺を背後からそっと抱き締める。  「お前が造る町だ。どんな町であってもきっといい町になる。もっと自分を信じろ」  背中に感じる温もりに俺は、こくん、と頷くと目を閉じて思い描く。  どうか。  ライゾさんたちの望む姿を描けますように!  俺は。  前に突き出した両手の平に魔力を集めてそれをこの町一帯に放っていく。  よい町に。  平和で、優しい町になりますように!  俺の魔力が何を形作るのか。  俺は、ちょっと不安で。  でも。  背後から俺を抱いていてくれるリュートの温もりが俺を守ってくれていた。  リュートは、俺が魔力切れを起こさないように俺を抱きながら自分の魔力を注いでくれていた。  魔力供与は、本来、粘膜接触でするのがいいのだというが、ただ、抱き締められただけでも十分、魔力が流れ込んでくる。  俺は、できるだけ細部までも思い描いていく。  傾斜した町の上から順番に積み木を積むように造り上げていった。  最後に俺は、町を守る門を造り上げた。  回りを山に囲まれた窪地だった場所にじょじょに町並みが造られていった。  リュートは、俺に魔力を流し込みながら俺の耳元に囁く。  「すごい。アンリ、お前は、ほんとにすごい奴だ!」  リュートは、俺の頬にキスした。  「私の最高最愛の番。世界で1番大切な人、だ」  俺は、リュートの言葉に耳をくすぐられてちょっと顔が熱くなったけど、決して集中を切らすことはなかった。  最後にできあがった入り口を守る門を見てリュートが笑みを浮かべる。  「最高の町だな」  俺は、魔力を放出し終わるとほぅっと熱い吐息をついた。  やっぱり、魔法、気持ちいい!  このまま、いってしまいそうなぐらいの快感を感じていたが、俺は、達することはなかった。  それは、リュートのリングのせいで。  俺は、門を開いて駆け寄ってくるライゾさんたちを見てちょっとだけリュートに感謝していた。  リングのおかげでみんなの前でいっちゃうような醜態をさらさずにすんだのかも。    

ともだちにシェアしよう!