111 / 111

第111話 継母冥利につきますな!

 11ー11 継母冥利  それから。  俺を誘拐した罪でロートルワーズ子爵家は、取り潰され、父と義兄は、投獄された。  グレイスフィールド伯爵家は、おかまいなし。  俺は、継母として引き続きグレイスフィールド伯爵代理をつとめることになった。  リュートは。  屋敷の執事からたまには家に戻るようにとなきつかれしぶしぶ自分の屋敷へと戻っていった。  俺は、今、グレイスフィールド伯爵家の屋敷にいろいろ手を入れていっている。  庭には、色とりどりの花を植え、緑の木々を茂らる。  リュートの提案で、夏には、ちょっとしたランドリンのコンサートを屋敷で開くことにした。  冬がくる前には、領地にも行かなくては。  今度は、ロゼス君も同行する予定だ。  ロゼス君は、といえば、あれからゆっくりと話をしたんだが、なんと、アンギローズではなかった。  ええっ?  こうなると、もう、前世での『闇の華』のストーリーなんてどこにも残されてないのでは?  俺は、首を傾げる。  なんでこうなった?  でも。  俺は、まあ、いいか、と微笑んだ。  週末には、リュートも戻ってくる。  リュートは、最近、ますます俺に甘くなっている。  あまり、甘やかさないで欲しいものだ、と思う。  だって。  俺は、リュートがいなくなることが怖くて。  もし、リュートを失えば俺は、生きてはいられないんじゃないかって怖くなる。  魔力的にも、な。  ロゼス君は、学院の夏季休暇で俺と一緒に領地を訪れることを楽しみにしているようだ。  なんでも、ロゼス君は、まだグレイスフィールド伯爵家の領地を訪れたことがないらしい。  「とても美しいところですよ」  俺は、ロゼス君に話した。  そこは。  イキナムチの守る土地は。  どこにもまして美しい場所で。  豊かで、祝福されている。  ロゼス君に俺は、イキナムチのことを話して家宝の短剣を返そうとしたんだが、ロゼス君は、それを受け取ろうとはしなかった。  「約束は、必ず、叶えられるので」  ロゼス君が俺の頬にそっと口づけを落とす。  はいっ?  俺が驚いているとロゼス君は、口許に笑みを浮かべて俺を見つめた。  「絶対に、あなたのことを奴から奪ってみせますから!」  うん?  きょとんとしている俺にロゼス君は、子供らしくじゃれついてくる。  「僕、アンリが好きだから!」  そうなの?  まあ、こんなに好かれたら継母冥利につきますな!  

ともだちにシェアしよう!