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第28話
目の前のカロリーたっぷりの食堂のご飯を眺める。ハンバーガーにポテト、野菜とばかりにオニオンリングが添えてあるが、結局の所揚げてあるため野菜の定義を問いたい。
「さっきから何首傾げてんだ?」
目の前を見ると、いるのはいつものメンバーのグレンとケニーだ。ん〜、と唸った後、2人をみて首を傾げてる。2人も俺につられて首を傾げる。ケニーを見て、グレンを見て、またケニーを見て、またグレンを見て、うん。と頷くとため息をつく。
「なんか〜、めっちゃ嫌なこと思われた気する〜」
あはっ、と笑いながら俺の方にフォークを向けてくるグレンは、話さなければ刺すぞと言うことだ。うん、怖いぞ。
軽く親友にホラーの才能あるんじゃね?と思いながら俺もポテトの1つをフォークに刺す。
「なぁ、香里奈・ガブリエラ・ヴィーラントって知ってるか?」
「「................」」
イムピラトリーツァのことを問うと、2人が驚いたような顔をする。その顔は当たり前だろ、何言ってんだお前、と言う顔だ。うん、殴んぞこんにゃろ。
ムカついて拳を振り上げると、どうどうとグレンが俺の前に手を出してくる。暴れ馬か俺は!
「それで、そのトリーツァがどうしたの?」
直ぐにまたご飯を食べながら聞いてくるグレンに俺も座り直して問う。
「いや、よく知んねぇから」
「え?お前ここ来てもう数年経つだろ?」
「もう2年だな」
「あはっ、よく知らなくて今まで死ななかったね〜」
不吉なことを言ってくるグレンに嫌な顔をすると、ケニーから結構本気で驚いてる、と指摘される。まじか。
「まぁ、彼女はここら辺、てか、この州のまさに女帝。州知事以上にこの州をおさめてるのが彼女だよね〜」
「てか、トリーツァいなかったらこの街はもっとやばいな」
「あぁ、それは確実だね〜」
「そんなにか?」
「まぁ、元々この州はドラッグの売人がよく集まる州だからね」
そりゃ治安も荒れるわな。と思いながら頷く。
「なら、スピリティングフラワーってのは?」
カランカラン。と音を立ててグレンのケニーのてからフォークが落ちる。いや、マジでホラーだよ。え、後ろになんかいる?え、居ないよね?いたら困るよ?ゆっくりと後ろを向くが何もいない。安心してため息をついて2人に向き直る。2人は相変わらず目を白黒させている。
「え、え?なに?て、手出すの?え、やっぱり日本人は童顔ってこと気にしてるの?」
「まて、待ってくれ、俺が悪かった。童顔ってバカにして悪かった。だからあれはやめとけ。」
「てめぇらがくっそムカつくことを思ってるのはよーくわかった」
日本人が童顔じゃなくててめぇらが老けてるだけだ!と言いながら1発ずつぶん殴る。
「いった〜い!」
「まじ痛てぇ」
自業自得だ。といいながらハンバーガーにかじりつく。
「いや、割と真面目な話し。あんなものに手を出さない方がいいよ〜」
「あれはさすがに人生狂うよな」
真面目な顔をして話し始める2人に俺も真剣な顔をして聞き始める。
「まぁ、俺は最近出回ってるドラッグで、女性が綺麗になる〜って事しか知らな〜い。こういうことはケニーの得意分野だよね〜」
グレンの言葉に、俺は驚いたような顔をする。いや、やっぱり情報を持ってそうなのはいつもコロコロ女が変わるグレンの方じゃね?と思ったが、ケニーは彼女の作らないだけで大抵女と遊んでるな。うん、刺されろ。
「ん〜、スピリティングフラワードラッグ自体がまたまた出来た産物らしいぜ」
「たまたま?」
「そう、だから今解毒剤も一切ないからトリーツァが作るの急いでるって」
「ねぇー、なんでトリーツァが解毒剤作んの?別にこの州全員が薬漬けになっても気にしそうになくない〜?」
「そしたら稼げないだろ。本当に上手い売人ってのは、客の状況を見て渡す量を決めるんだよ。いちいち新しい人をヤク漬けにするのも面倒だしな」
ケニーの説明に、へ〜っといいながら俺とグレンが2人で頷く。
「じゃあさ、なんでスピリティングフラワーって血を吐くんだ?」
「あ、それ思った〜、普通止められないとかじゃないの〜?」
「さぁ?そこら辺はよく知らねぇけど、綺麗になるんだからわざわざ依存性の方向に持っていく必要が無いんじゃねぇか?」
「まぁ、確かに」
そりゃあ、女性なら綺麗になりたいからめちゃくちゃ飲みそうだよな。
「でも、スピリティングフラワーは他のドラッグよりも圧倒的に値段が高い。しかも女性には嬉しいことに、細すぎるのを気にしてるなら太り、太り過ぎが気にしてるなら痩せる」
「万能だ.....」
「魅力的だ.....」
グレンと俺で、ゴクリと喉を鳴らすとケニーからチョップが落とされる。痛い。
「ま、結局飲み始めたら血反吐を吐いて太ってた人なら干からびるほど痩せて、痩せてた人ならやばいぐらい太るらしい」
「どんだけの量飲んだら血を吐くんだ?」
「知らね。でも、知り合いの女性も血を吐くまで飲んだらすんごい綺麗になるらしいわ!って言ってた」
ケニーの女言葉の気持ち悪さに、俺とグレンは物理的に距離を取っていると、モノマネだ馬鹿野郎。と言われた。うん、話を戻そう。距離は戻さねぇけど。
「簡潔に言えば、早死する薬か.....」
「ま、綺麗になるから需要はえげつないほどあるけどな」
「ん?てか、トリーツァはこの薬許可してないんだよな?」
「あ?あぁ、確かそのはずだ」
それがどうした?と首を傾げてくる2人に、次は俺が首を傾げる。
「誰が売ってるんだ?」
「.....」
「.....」
「ん?」
「あ〜、それ、外じゃ言うなよ?」
「ここで良かったね」
ケニーが呆れた顔をし、グレンがくすくすと笑いながら最後の一口を口に入れた。
「どゆこと?」
「トリーツァが許可してない薬ってことは、流してるのは流れ者って事だよ」
「しかもトリーツァが勧告してるのに関わらず買う女性がいるからね。その流れ者は調子に乗ってるって訳」
「そのせいでトリーツァは薬を売ってるやつにカンカンらしい」
あと、買ってる人にもというケニーに、ニアの事が心配になってくる。それに、流れ者ってことは他の州から来たばかりのドラッグの売人ってことか。なら、ニアもトリーツァが許可してないって知ってて買ってたのか?
「警察は?」
「あはっ、無理無理。上手く操作されてるのか表にスピリティングフラワーの事は出てないよ」
「だから余計正確な情報が回ってないせいで売ってるやつを捕まえられない」
スピリティングフラワーをやってるやつは相当人脈を持ってて、その人脈に目をつけられた人か、金持ちからしい。と言うケニーに、グレンも感心している。
ならニアは、どっちだ?悪いけど金持ちかどうかなんて知らない。まぁ、戸籍を買おうとしてたぐらいだから金は持ってるのか.....
「あ、そうそう」
もう話終わったケニーは、残っていたハンバーガーをもりもりと食べている。それにちょっかいを出しながらグレンが思い出したように呟く。
「なんだ?」
「スピリティングフラワーって、日本語で確か、花吐き病?みたいな名前だったよ!」
花吐き病?なんだそれ?とグレンに聞くが、グレンもそこまでは知らな〜い。と言う。
花吐き病、ね。
※これはフィクションです。
麻薬などの違法薬物に解毒剤などありません。
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