29 / 43
第29話
花吐き病。
その名の通り口から花を吐く病気らしい。元は日本の小説らしく、片思いをずっとしてたらかかる病気で花弁などを喉に詰まらせて死ぬ可能性がある。あと、花に触ると伝染るらしい。
大学の講義が終わり、2人と分かれて歩いている。講義中に調べたことを思い返しすと、つくづくそっくりなドラッグで笑えてくる。
スピリティングフラワーは触っただけじゃ伝染りはしないが、その血自体はスピリティングフラワーの成分が入っている。そのせいでスピリティングフラワーをやってる人は変なやつらに捕まってるんだけど。
なんでこんな意味わかんねぇ薬なんかに手を出してんだよ〜!っとニアを思い出して歩いていると、目の前に見たことある、てか結構よく知っているナンパ男がいる。
そいつはこの大学の女性に手を出しているのか、何人かの女性が周りに群がりそれに仲良さそうに話している。つくづく思う。あれはなんでモテるんだ。
「ガッハッハッ!そりゃーいいなぁ!」
どうやら女性陣の話を聞いていたのか、笑っているそいつに近づく。
「おい、グレイ」
「ん?おー!ガキンチョ!来たか!」
無視したかった。と思いながらグレイを見る。大学でも有名な美人達が周りを囲んでいるグレイはいつもの姿だ。
「グレイの知り合い?」
「知ってる〜、日本人の子でしょ〜」
「ふふっ可愛いわね」
美人が思い思いに詰め寄って来るので、ジリジリと後ろに下がってしまう。美人過ぎてやばい。てか、俺の事知ってんのかよ。
「おいおいガキンチョ。美人に詰め寄られてるからってキョドるなよ」
グレイが俺の方を向いていた女性達の肩に寄りかかる。それだけで女性は甘い声をあげる。
うん、お前は何しに来たんだよ。
「キョドってねぇよ。はぁ、お前は何しに来たんだよ」
女性とイチャコラしているグレイに言うと、あ、忘れてた。と言う顔でグレイが女性達と離れて俺の方に来る。忘れるな。
「ほら、ガキンチョがサージの誕生日に練習見に来るって約束しただろ?」
グレイに言われ、あ、確かに。と思い出す。誕生日プレゼントは練習見に来て欲しいって言ってたなたしか。
「あぁ、そうだな」
「だろ?で、今日練習試合だからサージが今日来いだとよ。」
「それはいいけど、よくお前俺をむかえにきたな」
いや、本気で正直女でも迎えに行かねぇと思ってたわ。
「ガッハッハッ!近くにいたのと、この大学美人が多いからな!」
堂々と大声でそう言うグレイに、周りの女性達はくすくすと笑っている。そーですか。感心した俺が馬鹿だった。周りからの視線も多く集めているのでササッとここを去りたい!と思いながらグレイの背中を押す。
「もう行くのか?」
「お前!今日練習試合なら軽いアップぐらいしろよ!」
「ガッハッハッ!俺ぐらいになるとそんなもん要らねぇんだぜ!」
お前、ほんとスポーツマンに向いてないと思う。もうとりあえずムカつくのでさっさっと背中を力いっぱい押す。微かにしか進まないのがウザイが、美人軍団が一緒にグレイの手を引っ張ってくれて楽になった。ありがとう美人さん達。
グレイの背中を押してグレイの車に乗り込む。ジャックの車に負けず劣らずの高級車でバリバリのスポーツカーだ。
女性陣へ投げキッスをして車を進めようとしないグレイの頭を、一発叩いてさっさっと発進しろ!と言って発進させる。
いや、運転が荒い、速い、揺れる、酔う。
「そーいや、まだジャックの家から出て行ってないのか」
「出ていこうとした」
うえっとなりながら答えると、グレイの手が俺の頭の上に乗る。
「ガッハッハッ!ガキンチョはジャックのお気に入りだからな!連れ戻されたか!」
うるせぇ。と言いながら手を払って外の景色を見る。どうせ今までの彼女とか連れ込んでは、あいつのことだから毎日しこたまやるせいで逃げられたんだろ。
「あいつとの同居で1番続いた人でどんぐらいなんだ?」
ふと、思った。ジャックの事だ。今まで一晩の相手だけでも相当連れ込んでいるはずだ。
「あ?あいつガキンチョ以外を家に連れ込んだことねぇぞ?」
「.....は?」
外を見ていたのをやめ、グレイの顔を見るとん〜?と考えるような顔をしている。
「あぁ、たしかねぇはずだぞ。」
「は?嘘つけ。あいつだぞ?節操の概念もどっかに置き忘れてきたような、むしろ知らなそうなアホ野郎だぞ?んなわけあるか」
「ガッハッハッ言うなぁ。でも、本当だぜ。一晩の奴でも絶対家には連れ込まねぇ、やるとしてもホテルだ。あいつの家を知ってる奴なんて、俺たちファフニールのメンバーとガキンチョだけだぜ。」
・・・・・・は?.....いや、いやいやいやいや、まてまて、は?今まで女と暮らしたことがない?嘘だろ。は?
は!って事は、
「あいつって、ホモ?」
「ん〜、いや、男相手はガキンチョをだけだぜ?」
「いや、最近目覚めたのかもしれねぇ!」
「いや、それは可哀想だろ」
あいつが不憫すぎる。というグレイに俺の中で何かが固まる。なるほど!今まで女と遊んでいたのはカモフラージュで、実は男の人が好きなんだ!それで手っ取り早くやれる俺を傍に置いていると。
しかも、家に女を連れ込むと男を連れ込む時に面倒になるため同居は俺だけど、なるほど!
そう呟きながら1人で納得し、首を縦に振っているとグレイが横でポツリと呟く。
「.....まぁ、うん、知らねぇ」
「ん?なんか言ったか?」
首を傾げてグレイを見ると、大きな手が俺の頭の上に置かれる。
「うん、まぁ、とりあえず頑張れ」
「ん?あ、あぁ?」
意味がわからない。あ!なるほど!早くジャックの好きな人を見つけてられと、そう言うことか!なるほど!
ともだちにシェアしよう!

