66 / 66

After Story 3

あれから秋也は定期的にメッセージを送ってくるようになり、仕方なく雅はそれに返信する日々を送っている。 『彼氏っていうか、旦那です』 『は?結婚してんの?でも相手男じゃん。結婚できなくね?』 『二年前に法改正が行われて結婚できるようになってるんです』 『あーそういえばそんなこと言ってたな…悪い、興味なくて』  興味ないなら聞いてこなければいいのに…悪態をため息として吐き出す。裕司に何かされるんじゃないかと怯えた雅は、否応なしに返事させられていた。今すぐ携帯を叩き割ってしまいたいという激情を胸のなかに控えさせつつ、雅はぽこん、とまた送られてきたメッセージを見る。 『なぁ、今度会おう』  またこれだ。秋也は何かにつけて会おう会おうと言ってくる。本気で嫌だと思っているのに文章ではそれが伝わりにくいのか、彼は何度も交渉をしてくるのだ。  雅は辟易しながら『無理です』と送った。  深いため息をついたところ、ぽん、と肩に手が置かれた。 「どうかした?」 「裕司…」  隣にそっと座ってくれたのは、愛しい旦那。今日は雅は午後休、裕司が休みというタイミングだった。  雅は今あった出来事を口に出そうとして、ゆっくり首を振る。心配をかけたくない、と雅は秋也のことは一切裕司に話していなかった。そのせいでストレスは溜まる一方。しかし話したところでどうにかなるわけではない。結局は雅の問題なのだ。  だから雅は違う方向に話の舵を切る。 「会社でちょっとめんどくさい新人がいてさ…」 「あー、話が通じない系?」 「そう、うん、そんな感じ」  今新人研修で少し厄介な新人を抱えているのは事実だった。大丈夫?わかった?と聞くとちゃんと返事してくれるのに、いざ仕事に取り掛かると全くもってなにもできていないのだ。わからないところはわからないって言ってと言うのに。  思い出すと頭痛がしてくる。さらにぽこん、とまたメッセージが入ってきて、きっとそれはまた秋也だと思うともう目眩までしてくるのだ。 「お疲れだな、肩でも揉もうか?」 「うん…お願い」  裕司が椅子の後ろに回って雅の肩を優しく揉んでくれる。少し頭痛と目眩がマシになってきた頃に、裕司の唇がスッと肩に触れた。ぴくり、と肩を振るわせ振り返れば、裕司がキスをしてくれる。 「ゆ、じ」 「うん」 「するの?」 「雅がいいなら」 「…」  裕司はあまり自分からしたいとは言ってくれない。今もそう、雅に決定権はあるからと委ねてしまう。そこが少し、残念なところ。もっと最初にしたセックスのように自分を求めて欲しい…そう、思わずにはいられない。 「うん、したい」  したいと思っているのは自分だけなのだろうか。でもそうなら、裕司は雅の肩にキスなんてしてこないだろう。  雅が裕司の首に腕を絡ませると、彼は何度か雅の唇にキスの雨を降らせた。 「ん、ふぁ…」  ぽこん。  雅は後ろ手に携帯の通知を切り、まるでもう見たくないと言うかのように携帯を裏返した。

ともだちにシェアしよう!