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03襲撃
僕はまた離宮の庭先に生ごみが投げ入れられるようになったと侍女たちから聞いた、そして侍女たちに口止めと片づけを命じておいてフィーネ子爵令嬢に会いにいった。
「フィーネ子爵令嬢、僕の離宮に嫌がらせをしているの貴女ではないですよね」
「…………私です」
「どうしてそのようなことをなさるのです。ユーディ様とベスティア様の最期はご存じでしょう」
「もう私はうんざりなのです、あの方は私を抱きながら貴方の名を呼びます」
そんな失礼なことをカーレント殿下はしてたのか、それなら僕の離宮に嫌がらせしたくなっても仕方がなかった。僕は嫌がらせは止めるように言ってフィーネ子爵令嬢の元を去った。でも彼女はまだ嫌がらせを続けた、それがカーレント殿下の耳にはいって、フィーネ子爵令嬢は処刑された。
「おい、面白い女をみつけたぞ、ノエル」
「どのような女性でしょうか、カーレント殿下」
「お前と同じで髪が白く瞳が赤い、俺は彼女を側室にする」
「婚約者にはされないのですか? それではいずれ王妃がいなくなってしまいます」
「いいんだ、俺が王になった時に王妃なんかいらない」
「そうですか」
そうしてパーチェ子爵令嬢がカーレント殿下の側室として王宮にきた、本当に真っ白い髪と赤い瞳をしていた。僕はカーレント殿下がパーチェ子爵令嬢に惚れるように願った。
「おい、ノエル。俺の愛人にならないか?」
「僕には荷が重すぎる大役でございます」
「チッ、それでは何が欲しい」
「そうですね、経理の本をお願いします」
「お前はいつも本を欲しがるな、面白い本をいれておこう」
「ありがとうございます」
そうしてカーレント殿下は経理の本をくれたが、他にも男同士の愛し合い方という本が入っていて僕はびっくりした。貰ったからには読んだが、結論は僕には無理だと思った。腸内の洗浄の仕方とか、フェラチオのやり方とか、前立腺を刺激すればいいとか、僕はめまいを起こしそうだった。男同士でどうやって愛し合うんだろうと思っていたけど、女性と違って穴がないぶん肛門をつかうわけか、やっぱり絶対に僕には無理だと思った。
「ノエル、どうしたの?」
「痛い、痛いした?」
「何でもありませんよ、ティアラ様、カルム様」
それからしばらくしてパーチェ子爵令嬢は妊娠した、今度はどんな子どもが産まれるのだろうと思った。
「ティアラはね、妹が欲しいの」
「僕は弟がいいな」
「そうですか、どちらでしょうね」
ティアラ様は三歳、ノエル様は二歳になられていた。いやいや期があったりもしたが、カーレント殿下がこうお二人を脅していた。
「お前たちノエルに逆らうと処刑するぞ」
「処刑って何?」
「こわいの?」
「処刑っていうのは首を落とすってことだ」
「ティアラは駄目、やだちゃんと言うこときく」
「僕も駄目、ちゃんと言うこときく」
僕は怖がる二人の頭を撫でてやった、二人とのそれからはよく言うことをきいた。いやいや期など吹っ飛んでしまった、二人は処刑が怖いとカーレント殿下がいない時、僕のベッドに潜り込んできた。子ども部屋からはかなり距離があるだろうに、器用に僕のベッドを探し当てて潜り込んできた。そうして僕はティアラ様とカルム様を両脇において眠った、朝になってカーレント殿下がきて僕は起こされた、ティアラ様とカルム様はそのまま寝かせておいた。そして僕はカーレント殿下と執務にいった、戻ってきたらティアラ様とカルム様が大泣きしていた。ノエルと僕にだきついて、やっと二人の涙は止まった。それからは朝起きると僕はティアラ様とカルム様を起こしてキスした、それでもう二人が泣くことはなくなった。
「俺にもキスしろ、ノエル」
「え? どうしてですか?」
「ティアラとカルムにはしてやってるだろう」
「ああ、そうですね」
「だから俺にもキスをしろ」
「それでは少しかがんでください」
僕はカーレント殿下の頬にキスをした、何故だろうか少しドキドキした。ティアラ様とカルム様の時にはこんなことは無かった。僕はそれを気のせいだと結論付けて、ティアラ様とカルム様の世話をした。一度キスするとカーレント殿下は度々それを要求した、僕は慣れてしまいドキドキすることもなくなっていった。
「ノエル、俺の愛人になれ」
「僕には過分な重責なためお断りします」
そんなことをしているうちにパーチェ子爵令嬢が子どもを産み落とした、男の子で白い髪と赤い瞳を持っていた。その子どもはライと名付けられた。カーレント殿下はその子どもを見て喜んだ、パーチェ子爵令嬢が自分で育てたいと言ったが、やっぱり僕のところに連れられてきた。僕は久しぶりの赤ちゃんを可愛がった、ティアラ様とカルム様も可愛がっていた。二人は赤ちゃんが母乳を飲む姿を見ていた。
「ティアラ様もカルム様も一緒だったんですよ」
「私も赤ちゃんだったの?」
「僕も赤ちゃんだったの?」
「ええ、そうですよ。もう少し大きくなったら一緒に遊びましょうね」
「はーい、分かった」
「うん、分かった」
ある日、パーチェ子爵令嬢が僕を訪ねてきた。僕はなんの警戒もせずにお茶をお出ししようとした。そして刺された、脇腹の少し横を刺されて真っ赤な血が溢れ出た。
「カーレント殿下は貴方の名前しか呼ばない!! 貴方が悪い、貴方が悪いのよ!!」
僕が刺されたのを見て、ティアラ様とカルム様が悲鳴を上げた。すると外の護衛騎士が気が付いてパーチェ子爵令嬢を取り押さえた。僕は内蔵を傷つけていなければいいけれどと思いながら気絶した。
「『|完全なる《パーフェクト》|癒し《ヒーリング》|の光《シャイン》』」
気が付くと僕はいつものベッドに寝かされていた、その横にはカーレント殿下と神官がいた。神官が回復魔法を使ってくれたおかげで僕は助かった。
「ティアラ様やカルム様は泣いてませんか?」
「先に俺の心配をしろ」
「カーレント殿下、泣いていらっしゃるのですか」
「お前が死にかけたりするからだ、馬鹿者め」
僕はカーレント殿下を抱きしめてもう大丈夫だと伝えた、カーレント殿下がキスをしろというので僕は彼の頬にキスをした。久しぶりに何故だかドキドキした、襲撃にあったせいだと思うことにした。カーレント殿下は長く僕を放さなかった、そのまま抱き上げられて僕は離宮につれていかれた。
「ノエル、もう大丈夫?」
「もう痛い、痛いしない?」
「お二人とももう僕は大丈夫ですよ」
「良かったぁ」
「うん、良かった」
「お二人が悲鳴をあげたおかげで僕は助かりました」
そうして僕はティア様とカルム様を褒めた、二人は得意げにしていた。カーレント殿下は今後はナイフなどを離宮に持ち込ませないように護衛騎士に言っていた。その夜は特別にカーレント殿下と僕それにティアラ様とカルム様とで一緒に寝た。ライ様はまだ幼いから乳母に頼んだ。その後パーチェ子爵令嬢は処刑され、実家もおとり潰しになった。カーレント殿下の怒りはそれほど凄まじかった。
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