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05婚姻
国王陛下が亡くなられた、そうして自動的にカーレント殿下が国王に即位することになった。それはいい、それはいいのだが、何故俺が飾り立てられているのだろうか。俺は宝石類をこれでもかと付けられた。そして白いベールを被せられてカーレント陛下のところへ連れていかれた。
「おお、わが妻よ。綺麗に飾り付けて貰ったな」
「カーレント陛下、これはどういうことですか!?」」
「これから新王としてパレード、その隣に妻がいなかったら変だろう」
「だからってどうして僕がその妻なんですか!?」
「これから婚姻証明書にサインするからだな」
「男同士は結婚できません」
「いや、できるように法案を通しておいた。だから我が国では男同士でも結婚できるぞ」
「そんな法案いつ通して、いやだからといって貴方と結婚しません!!」
そう言った途端に周囲の空気が変わった、そこにいた側近たち全てがこっちを見ていた。どうか国王陛下と婚姻して欲しいという思いでその場は満ちていた。
「陛下やはり男同士の婚姻など無理があったのです、そのくらいなら我が娘を妻に…………」
そう言いだした側近の一人を国王陛下が持っている剣が斬り捨てた。他の側近たちは黙って座っていた、誰も何も言いださなかった。いや男同士の結婚っておかしいだろ、僕はそう抗議した。
「もう法律で男同時の婚姻は成立するとなっている」
「いやだからといってどうして貴方と僕が結婚するんですか!?」
「ティアラは可愛いだろう、カルムだって可愛がっているよな、ライも全てお前の子だ」
「はぁ!?」
「さぁ、この結婚証明書に記入しろ、お前が書かないならそこにいる側近たちの首をはねる」
「わ、分かりましたよ!! どこに名前を書けばいいんですか?」
「そこに旧姓のノエル・ビルヘン、こっちにこれからの名ノエル・グランシュタインだ」
「くっ、後で覚えておいてくださいね」
こうして何がなんだか分からないうちに僕は国王陛下の妻になった。男同士の婚姻なんて法案いつ通したんだ、最近僕を執務室に連れて行かないなと思っていたらこれだ。それから僕はひきつった笑みを浮かべながら国王陛下と一緒にパレードに出た。国王陛下はご機嫌だった、俺を抱き寄せてキスまでした。国民は無邪気に喜んでいた、彼らにしてみれば国が平和でありさえすればいいのだ。
「さぁ、俺の国王就任と結婚パーティだ。遠慮なく飲み食いするといい」
貴族たちは皆、新しい国王陛下のところへ挨拶に来た、隣に座っている僕にも声がかけられたが白いベールを深く被って聞こえないふりをした。そうしてパーティも終わって皆が帰り始めた。僕は国王陛下に抱き上げられて、国王陛下の寝室に連れてこられた。
「ノエルこれで俺とお前は夫婦だ、仲良くこの国を治めていこうな」
「国を治めていくのには賛成します、でも夫婦生活は特に夜はお断りします」
「ノエル、もういいじゃないか。俺に足を開け優しくしてやるから」
「いいえ、結構です。そんなことをするぐらいなら死にます」
僕はカーレント陛下を突き飛ばしてバルコニーに出た、そしてそこから飛び降りた。凄い衝撃を受けたことは覚えているだがそれから僕は気を失った。
「『|完全なる《パーフェクト》|癒し《ヒーリング》|の光《シャイン》』」
目を覚ますとカーレント陛下と神官がいた、くそっ生き残ってしまったのかと僕は顔を歪ませた。なぜだか体が上手く動かせなかった、僕はどうにか起き上がった、だけどそれで限界でまたパタリと倒れた。
「体中の骨という骨が砕けておりました、しばらくは体が上手く動かせないでしょう。しかし訓練をつめば昔を同じように動けるようになりますよ」
僕は死に損なってしまった、加えて不自由になった体、一刻も早く訓練をはじめたかった。その為に神官が残ることになった。カーレント陛下は僕に近づいてこなくなった、僕はまた離宮にもどってきた。そこで体を動かす訓練を受けた、最初はなかなか動かなかったが訓練するにつれて元の体に戻っていくのが分かった。
「ノエル、私からこれお見舞いのお花」
「僕も姉さまと一緒に摘んだんだよ」
「のえる、げんき、げんき」
ティアラ様やカルム様それにライ様がお見舞いに来てくれた、僕は上手く動かせない体を何とか動かして三人の頭を撫でた、お見舞いの花は枯れるまでずっと僕を励ましてくれた。僕は訓練を続けてとうとう元の体を取り戻した、少し痩せてしまっていたがもう体は自由に動いた。木剣をもって素振りをし、体が完全に元の状態に戻っていることを確かめた。するとカーレント陛下が現れたので警戒した。カーレント陛下も少し痩せられたようだった。
「ノエル、どうやったら俺を愛してくれる?」
「敬愛はしております、しかしそれ以上は無理です」
「ノエル」
「――――ッ!?」
カーレント陛下が僕に触れようとしたが、僕の体は反射的に後ろに飛んで下がった。それをカーレント陛下は寂しそうに見ていたが、こんなことを言いだした。
「訓練も終わったようだし働いて貰いたい、仕事が山積みになっている」
「そうですか、分かりました」
そう言って執務室に行くと確かに仕事が溜まっていた、僕は王妃用にまわされた仕事を片付けていった。望みはしなかったが僕はもう王妃だった、だからその仕事だけは片付けた。
「ノエル、元気になったの!!」
「良かった、ノエル僕は嬉しい」
「のえる、抱っこ」
ティアラ様とカルム様それにライ様が来てくれた。ライ様を抱っこしたら、次は私、次は僕と三人を抱っこすることになった。あの時に死ななくてよかった、もし死んでいたらこの子たちが悲しんだだろうと思った。
カーレント陛下は僕に近づいて来なかった、ただ何でも好きな物を買うようにと予算を渡された。それで僕はまた本を買った、それから遠目では女性に見えるように白いベールなどの服や小物を買った。執務中は邪魔なので脱いでいたが、それ以外では白いベールを身に着けて王妃らしく振舞った。
「カーレント陛下がまた女性を抱いている、それは良かった。また子どもが産まれるかもしれないね」
「いえ、ノエル様。コンドームという避妊用の道具があり、メイドたちの中に妊娠した者はおりません」
「何にせよ、良かったよ。陛下に手をつけられたメイドにはお給金を増やすことにしよう」
「ではそのように、お元気になって嬉しいです。ノエル様」
侍女長が僕に現在のことを報告して去っていった、僕はカーレント陛下がメイドとはいえ女性に手をつけているのは良いことだと思っていた、その分僕の身の安全が保たれるからだ。
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