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ヒクッと、肩を揺らして結月が鼻を啜る。ぺちゃんと床に座り込み、細い腕でごしごしと瞼を擦る姿を見て、ちくりと胸の奥が痛んだ。
「おい、結月」
そっとそばまで歩み寄って、目線を合わせるようにその場でしゃがみ込む。
「泣くなよ、まだ時間あんだから」
目の前で人に泣かれるのは、苦手なのだ。女の子限定だと思っていたけれど、どうやらそういうわけでもないらしい。……あるいは、目の前でしくしくと啜り泣く結月が、女の子さながらに華奢で可愛らしい容姿をしているからかもしれないが。
「だっ、て……こんなに、探してるのに……っ、全然、見つからないし……っ。発表のデータ……っ、全部、俺が預かってるのに……っ」
相当やばい状況なのはわかる。グループの評価が下がるのはもちろんのこと、自分のミスで他人にまで迷惑をかけたとなると、今後の付き合いにも影響が出かねない。大学というコミュニティにおいて、人間関係を甘く見ると何かと損をする機会は多い。
「だからって、泣いててもどうにもならないだろ。時間ギリギリまで探して、だめだったらそんときは全力でグループのやつに謝る。で、後日再評価してもらえるよう教授に頼み込む。とにかく、今は探すしかない。な?」
俯く顔を覗き込んで、晃大は問いかける。
目を腕で覆ったまま、ややあって、こくんと結月が頷いた。
「ん、えらい。じゃあほら、もっかい片っ端から探すぞ」
くしゃりと結月の寝癖頭を撫でながら立ち上がり、晃大はもう一度、腰に手を当ててぐるりと部屋を見渡す。
それにしても、すごい散らかりようだ。けれど今は、怒りや呆れよりもまず、一刻も早く目的の物を見つけて結月を送り出してやらなければという一心だった。
晃大が確認した方面には、恐らくUSBはなかったはず。結月の方面に見落としがないか、晃大はまた一枚ずつ落ちている服を拾い上げてポケットの中を探し始めた。結月もグスッと鼻を啜りながら、また懸命に手を動かし始める。
しかし、それからさらに五分が経っても、十分が経っても、USBは見当たらなかった。もういよいよ、寮を出なければ大学に間に合わない。
「なあ結月、もっかい鞄の中だけチェックしてみろよ。内ポケットとかも、全部」
「鞄は一番に見た。でも、どこにも……」
ヒクヒクと肩を揺らしながらも、結月は言われた通りベッドに腰掛けて鞄の中を再確認する。まあ、これだけ部屋中探し回っておいて、よく見たら鞄にありました、なんてふざけたことは流石にないと思うが――
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