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「だから言っただろ。部屋はちゃんと片付けろって」
「……」
「一緒に探してやるから、何探してんのか教えろよ」
途端に、ハッとしたような表情を結月が浮かべた。
「で、も……」
「いーから」
遮るように、晃大は声を発する。
「急いでんだろ? 二人で探すほうが効率がいい」
結月は少しの間俯いてじっと考えるようにした後、ぽそりと呟いた。
「……USB。黒に、赤いロゴが入ってるやつ……」
「ん。ちなみに、発表は何時からだ? 一時限目なら、もうアウトだと思うけど」
ふるふると、結月は目を瞑って頭を横に振った。
「二時限目……十時、半から……」
「おまえの大学、こっから三十分くらいんとこだったよな。今、九時二十分だから……」
あと四十分か、と呟いて晃大は部屋を一望する。
……まあ、何とかなるだろう。この荒れ果てた部屋から消しゴム程度の大きさしかないUSBメモリを探すのは至難の業だが、時間にはそこそこ余裕がある。
「よし。じゃ、俺はひとまずこっち半分探すから。おまえはそっちな」
言って、晃大はさっそく部屋の左半分――自分サイドのエリアを探し始めた。
二度手間は避けたいので、一度ポケットの中身を確認した服はまとめて晃大のベッドによけていく。正直、いつ洗濯したかも分からない他人の服なんかシーツに置きたくないのだが、この際仕方ない。
十分ほどかけて一通り全ての服のポケットを確認したが、USBらしきものは見当たらなかった。入っていたのくしゃくしゃのティッシュやら、お菓子の包み紙やら、陰毛やら……。
晃大のベッドはすでに結月の服でてんこ盛りだが、それでもまだまだ床にはいろんなものが散乱している。コンビニの袋。漫画。大学の教材。飲みかけのペットボトル。絡まったケーブル。スマホのバッテリー等々。泥棒もびっくりの散らかりようだ。
何かの下敷きになって隠れている可能性を考えれば、少しでも床が見える面積を増やさなければ。百パーセント捨てても問題ないゴミはゴミ袋に、漫画や教材類はそれぞれ重ねて積み上げて端に寄せるなどして、着々と晃大はUSBの在り処を絞っていく。
それにしても……
――ないな……。
もうかれこれ二人で探し始めて三十分ほど経つのに、それらしきものは一向に見当たらない。少なくともこっち半分は、余すとこなく確認したと思うのだが……
「結月、そっちどうだ? こっち、なさそうなんだけ――」
言いながら背後を振り返り、晃大はハッと息を呑んだ。
「結月……?」
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