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第1話

嫁に愛想を尽かされたのが三年前、高校生の息子とまだ幼い息子を置いて出ていってしまった。 原因は俺にある。俺がどうしようのないクズだから……こんなクズでも嫁を愛していたんだ。 なのに本当に欲しかったものは手に入らない…… 俺山名邦正(やまなくにまさ)は編集社に務める四十四歳、息子が二人、バツイチ。 俺には中学から仲の良い友人がいた。 末長 壱規(すえなが いつき)は、真面目で俺より優秀だった。特に目立つ奴ではないし、どちらかというとクラスで騒いでる奴らの中で退屈そうにしていた。 あいつなにが楽しいんだろ…… 最初の印象はそんな感じだった。壱規と親しくなったのは、中学三生で同じクラスになってからだった。壱規はクールで何考えてるか分からない奴っぽいけど、たまに見せる笑顔とか意外に優しい奴なんだって知った。 高校も同じでクラスは別だったが、変わらず友人だった。あの夏休みまでは…… 仲のいい仲間がバンドを始めた。ライブに誘われ、壱規と見に行った。俺は飲めやしない酒を飲んで泥酔していた。断片的にしか記憶がないが、クラブのトイレで壱規と初めてキスをしたのを覚えている。 それからだ俺らは欲求のままにキスし、若さ故の快楽に溺れていった。そこに感情なんてない。俺はそういう目的の中の一つなんだと、理由を付けて深く考えないようにしていた。そうでもしないと何が保てなくなるような気がしていたから…… 壱規とそんな関係を続けながら、俺は彼女が出来たら壱規と距離を置いき、別れたら壱規のとこへ戻る。壱規は文句は言ったが拒絶する事はなかった。 俺達は学生から社会人になり、日々の忙しさに追われいった。 壱規もそれでいいのだと俺は思い込んでた……

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