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第2話
嫁だった人は会社の上司で、仕事が出来るキャリアウーマンだった。女性向けのファッション誌の編集・企画課に配属されて嫁と知り合った。
「結婚なんてしない!」とか姉御肌で頼りがいのある彼女は同性にも異性にも人気があった。
仕事では鬼のように厳しいのに……
俺は最初、彼女が苦手だった。ある企画が大成功し、課の皆で飲みに行った。またま彼女が俺の隣に座った。彼女が珍しく酔っていて、頬がほんのり赤くなっていた。いつもの強気な彼女ではなくとても可愛く見えた。
「貴方、女に興味ないでしょう」
「え?! あ……いや……」
俺はその言葉に動揺してしまった。茶化して流せばいいのに、そんな話を聞いてきた女なんて今までいなかったから……
「その方が私も都合がいいの。私達付き合わない?」
「……あ、えっと……はい」
酔った勢いで男女の関係になり、彼女と付き合うようになった。彼女は意外にも女性らしく、とても素敵な人だった。俺には勿体無い相手だと思っていた。
ある日、久しく会ってなかった壱規から突然会いたいと連絡がきた。壱規から会いたいなんて言われた事がなかった。俺は嬉しくて壱規の住むマンションへ向かった。
俺は普段と変わりなく壱規に話し掛けた。なのに壱規は黙ったままで……
「どうした? 壱規?」
「俺達もうこんな関係止めよう。このままじゃいけないんだ」
「え……」
会いたいって言ってくれたじゃないか! 始めて会いたいって……
「俺……結婚するんだ」
「う…嘘だ! なんでそんな嘘言うんだ!」
「嘘じゃない!」
「俺は…俺は!」
「邦正それ以上言ってなんになるんだ。話は終わった出てってくれ……」
俺はこんなに!
「……分かったよ」
俺はその時、壱規への気持ちを自覚した。壱規から「結婚」という言葉が出てくるなんてショックだった。
壱規は体だけ、しかも男同士の無意味な関係が嫌になったんだろう。
俺は家族を作れない……下手すれば失っていくモノの方が多くなる。
壱規の選択は真っ当だと思う。
だけどこれじゃ……おまえは所詮、男だろ。結婚出来ないじゃないかって言われてるみたいじゃないか!
クソ! 壱規の馬鹿野郎!!
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