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第4話
「先生、こんにちは。俺、先生の部屋来たの久しぶりかも。」
「そうだな。突然どうした。今人が来ているから玄関口でしか話せないけど、ごめんな。」
修悟が恋人ができてからは、うまくいかない時にしか訪問することはなかったから。
今日突然現れたのは、修悟にとってよくないことが起きたのかもしれない。
もう速見が修悟と恋人に関わっていないと信じたいけれど、対面は避けたい。
だからといって修悟を無下に返すこともできず、玄関口で応対することにした。
「人って誰?今まで部屋の中に入っていたじゃん。用事が終わるまで待ってたらダメ?」
「玄関口って失礼だったよな。本当にごめん。込み入った話なら明日修悟の家まで行くから、」
「今日聞いてほしいんだけど。」
「修悟、、、」
我儘なのは今さらだけど、ここまで聞き分けのないことはなかった。
いつになく硬い表情の修悟に困っていると修悟はため息をついた。
「ここでいいよ。先生、いつもみたいに抱きしめてよ。俺が一番かっこいいって言って。」
「修悟、突然なにを」
「いいから、やってよ。いつもしてくれてたじゃん」
「修悟、」
てこでも動かない、と言った様子の修悟に観念して修悟を抱きしめる。
俺から抱きしめたのは初めてで、ぎこちない抱擁をすると、修悟も強く抱きしめかえした。
「先生、今来ている人って、速見だろ。」
「、、、っ。」
突然の発言に言葉を返せずにいると、修悟は続けた。
「先生、あいつに騙されているんだよ。きっと俺の先生だから目をつけられたんだ、先生は優しくて騙されやすいから。だって、あいつの周りにいるのは美男美女ばっかりで先生みたいに平凡な人はいないんだよ。似合わないよ。」
先生面食いだからな、とカラ笑いする修悟。
「そう、かもな。心配してくれてありがとう。でも、」
「先生もあいつのほうがかっこよかった?俺よりもあいつを取るの?」
「そういうわけじゃない。」
「じゃあ、俺にキスして。好きって言って。」
「は?お前恋人がいるだろうが、」
「いいから。」
「そんな勝手な」
「お熱いネ〜。」
修悟の勝手な言い分に狼狽えていると、部屋のドアが空いて、ニヤニヤと笑う速見の姿が。
最近は見ていなかった、人を喰ったような笑顔だ。
「速見、お前先生まで騙して、本当最低だ。俺への嫌がらせでここまでするなんて。」
「それは褒め言葉として受け取っておこうかな。修悟の言う通り、俺も面食いだからセンセーは好みとは違ったけど。ここまでいろいろ楽しかったよ、センセー。もう会うことはないだろうけど、、、またね。」
そう言いながら、速見は玄関から出ていってしまった。
最後まで人を喰ったような笑顔で出ていく速見の姿が気になって追いかけようとするも、修悟に阻止された。
「先生、キスしてよ。あいつとはしていないよね。俺が一番だよね。」
終
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