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第3話
誰もいない喫茶店でふざけた取引をもちだした高校生は速見了と言った。
許可した覚えはないが、勝手に優一と呼び出した速見に呆れながらも、すぐに飽きるだろうと放置すること数週間。
未だに飽きないのか面白がっているのか、恋人らしいラインやら電話をしてくる。
最近の高校生はマセたもんだと呆れながらも、まあ、もう少しすれば飽きるだろうと適当に返事を返す日々。
マセた、と一言で済ますにはえげつない「取引」をしてきた速見に初めこそ不信感を抱き、警戒していたもののやって来るラインは、本当にあいつなのかと思うほどの何気ない日常の会話がほとんどで、毎日のようにやって来るラインに多少の高校生らしい部分に思わずほくそえんだ。
一方の修悟の方とも和解したのか、修悟が嬉しそうに速見が恋人にちょっかいを出さいない、と今までのことを謝罪されたと報告があったときは良かったな、と一緒にジュースで祝杯をあげた。
その報告以降修悟とはアルバイト以外で会うことはなくなり、恋人と順調にいっているであろうことに両手を上げて喜んでいるといえば嘘になるけど、それでも修悟が幸せならばそれで良かったのだと言い聞かせた。
……
「優一、今日暇?」
講義が終わって帰っている途中、速見から電話があった。
時間を見れば高校も放課後になった時間みたいで、速見の電話口はガヤガヤとしている。
アルバイトや他の予定もないし、暇といえば暇だ。
そう言えば、速見は笑いながら「じゃあ、優一の家行っていい?」と聞かれた。
悪い理由はないが場所はわかるのかといえば、わかるわけないじゃん、と当然の返事を聞き、適当なところで待ち合わせをして、自宅へ向かうことになった。
…
「おじゃましまーす。あれ、思ったよりきれい。」
相変わらず失礼なことを言いながら部屋に入り込む速見に若冠呆れつつも、部屋に促し、インスタントコーヒーを準備する。
部屋に入ると、速見は初めて来たとは思えないくらいに寛ぎながら、一人用の座イスに座っていた。
その様子が、もうほとんど訪れることのなくなった修悟を思わせて、思わず笑みがこぼれる。
いつも、座イスを占領して恋人とののろけを話したり、不満を言ったり。
ほとんどはぶすくれた表情しか見れなかったなあ、と思いを馳せる。
そんな俺を見て何を思ったか速見は「なになに」とにやにやしながら聞いてきた。
「優一にやにやしてる。なに、エロいことでも考えてるの。」
俺優一の部屋に連れ込まれてるし、優一ってば肉食系ー!
とふざけたことを言い出す速見に「ばーか」と笑った。
インスタントで何の手間もかかっていないコーヒーは不満だったのか、夕食を所望した彼に仕方なく夕食作りに取りかかる。
といっても、男子学生の家にある食材なんてほとんどが賞味期限切れのものかインスタントラーメンかくらいで「賞味期限切れのものたちで作ったチャーハンとインスタントラーメンどっちがいい?」と聞けば、即決で「賞味期限が切れていないラーメン」と言った速見に失礼だな、と言いながらラーメンをつくってやった。
「いやー、美味しかった。麺だけのラーメンはじめて食べたけど。」
「サンヨー食品様々だな。」
「ほんとそれ。」
「おい。」
具材もほとんど入っていないインスタントラーメンを食べ尽くした速水は満足げにお腹をさすっている。
それならよかったよ、と食器を片付けるために速水のもとへ近づくと、速水が俺の首をぐっと引き寄せた。
「優一、俺、、、」
速見が何か言いかけたとき、ピンポーンとインターホンがなった。
速見はハッとしたように、何でもないよーとヘラヘラと笑い、宅配かなあと視線を玄関に向けた。
いつもとは違う雰囲気が気になりながらも、速見に促され玄関を開けると思わぬ人物がいた。
修悟だった。
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