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21話 天使は、悪魔に食われる

「ルイ、試験はどうだったんだ? 人は殺せたか?」  夜ご飯の時間になると、天馬の父親は首をかしげた。 「……殺せてない。俺が殺せないままだったら、次はノアが悪魔界の王なのに」 「いや、そうじゃない」  天馬の父親は首を振る。 「え、ノアだろ?」  変に思って、天馬はつい尋ねる。悪魔界の王は王族の男か悪魔界の中で、戦闘能力が最も高い奴がずっとなってきたはずだ。それなのにどうして。 「あいつは道端でお前を殺そうとしたんだ。目撃者もいた。だから王の候補から外れたんだ」 「え、でも悪魔界って殺しは黙認されるんじゃ」  そう聞いた気がする。 「ああ、そうだ。でもあいつは殺しすぎだ。黙認されるのは十人以内まで。あいつは天馬で十一人目だった」  そういうことか。  父親は天馬をじっと見つめる。 「天馬……何か思うことがあるなら今話しに行っても暴力は振るわれないと思うが、行きたいか?」  天馬は首を振る。 「いやいいよ。ノアにはもう会わなくていい。俺にはルイがいるし、そんなことになったなら相当傷ついていると思うから、そっとしといてやりたい」  父親とルイが微笑む。 「そうか。悪魔界では初めて、王女が誕生することになった。そのリヴィア王女の誕生を祝うパーティが明日催される。お前達は参加するか?」  ルイと天馬は顔を見合わせる。リヴィアが王女なのか。 「色々な屋台が出るらしいわよ。天馬が食べられるものがあるかはわからないけれど」  ユリシアが教えてくれる。  意外と楽しいかもしれない。でも今はルイといたい。 「いや……今日と明日は家でゆっくりしてるよ。ルイとせっかく再会できたし」  ルイの頭を撫でて天馬は笑う。ルイが目を線にして微笑む。可愛いな。 「ルイ、俺の部屋行こう」 「うん」  手を握ってくれた。とても嬉しい。 「天馬……人間界でずっと何してたの?」  部屋に着くと、すぐに聞かれた。 「人と仲良くなって、そいつから食べ物もらって生きてた」  ルイは口をとがらせる。 「じゃあその人は俺が知らない天馬を知ってるんだ。嫌だな、そういうの」  え、もしかして。 「やきもち?」  頬を赤らめてルイは頷く。可愛すぎるだろ。 「はは、顔赤すぎ。可愛い」  笑っていると、手を握ってもらえた。 「ルイ?」 「天馬、俺達って親友?」  なんだ、急に。 「ああ。そうだ」 「でも天馬、キスしてた」  全身の血が沸騰するみたいに身体が熱くなってしまう。 「なっ、は、はぁ? お前、まさかあの時起きて……っ?」 「うん。でも天馬が、声かけて欲しくなさそうだったから黙ってた」 「俺がお前を愛してるっていったら、どうす……んっ」  肩を撫でられて腰を抱かれる。首、肩、鎖骨を順番に舐められてしまう。舌が熱い。 舐められたところに少しだけ電気が流れているみたいに、身体が痺れる。  なんだこれ。怖い、これから何が始まるのかわからなくて。でもその怖さすら、嫌なものとは思わない。やめてほしいとも思わない。変だ。ルイが恐ろしいと思うのに、続けてほしいなんて。 「天馬、続けるよ?」  耳元で囁かれ、耳の筋を舐められる。 「あっ、あぁん」  自分でも信じられないくらい高い声が出る。なんだよこの声。女みたい。こんな声、ルイに聞かせたくない。 「あう!」  耳たぶ噛まれた。血出ない? 悪魔の牙ってとがっているんだよな。 「可愛い、天馬。そんな声出るんだ?」  息が耳にかかって、心臓の鼓動が早くなる。 すごくからかわれている。 でもそれすらも、恥ずかしさや快楽を誘発する要素にしかならなくて、下半身が疼く。 服を爪で切り裂かれて、胸を掴まれてしまう。 「ひゃっ? あう、あんあん」  爪が肌に食い込んでいる。赤い突起を喰われて、吸われる。牙が突起にあたって痛い。でも気持ちいい。 訳がわからない。 「ルイ……やっ、何しようとしてんだよ」  ズボンとパンツを脱がされて裸にされてしまう。  慌てて毛布を掴んで、身体を隠す。 「天馬、隠さないで」 「やっ、そこだめ……な、あぁぁ」  嫌だっていっているのに、毛布を剥ぎ取られる。太ももをざらついた舌で舐められ、股に顔を寄せられてしまう。  ベビーオイルを塗られ、濡れた蕾の中に指が入る。いった! 出口に物入ってくるのきつい。 「んぁ、あぁん!」  二本目が入った。快楽のせいで意識が遠くなる。当たってはいけないところに当たっている気がする。 「ルイ……そこ、当たると声がんう、あうあう」      三本目も入ってきて、首を振っているのにまたそこに当てられてしまう。  気持ち良すぎて怖い。性器からもう我慢汁が溢れてる。 「天馬、気持ちいいんだ?」  瞳から溢れている涙を舐められる。 「き、気持ちいいけどいた……やぁ……見ないで」  身体はもう我慢の限界で、じわじわと精液をこぼし始める。淫らなのが恥ずかしくて、慌てて顔を手で、白く濡れていく足を毛布で隠す。 「ひあ、ダメぇ」  毛布を爪で切り裂かれ、両手首を掴まれてしまう。 「何が? 見られたくない?」  頷くと、ルイは頭を撫でてくれた。 「恥ずかしがらなくていい。可愛いよ、天馬」  いや俺男だし。可愛いっていわれても嬉しくない。 「天馬、入れていい?」  頷くと、太ももを掴まれて持ち上げられ、ルイの性器を蕾の中に入れられた。 「んう!! いった……や、無理……あぁう、ひぃ」    痛すぎて、血が出たかと疑う。涙がものすごい溢れて、恐怖で逃げたくなる。でも前立腺にあたった瞬間に快楽に打ちのめされて、女々しい声しか出なくなる。  身体が動かない。腰と足が痛い。 「んあ? あひっ、あぁんぅ」  突き上げられて、思わず腰を揺らしてしまう。    痛いのに気持ちよくて、頭の中はパニックになる。目が開けられない。 また精液が溢れる。  全身が熱くて、身体のコントロールが効かない。    身も心もルイのものにされている。 「何度もいって……このままじゃお漏らしかな?」  耳元で囁かれた言葉を聞いて、心臓が高鳴る。 そんなのは絶対に見せたくない。 「もうやだ、やめ……あああん!!」  嫌だっていっているのに突き上げられて、胸を食われてしまう。 「らめ……っ、乳首吸うのらめ」  呂律が回っていない。 ガクガクしている手足を掴まれて動けなくさせられ、身体のいたるところを噛まれる。  こんなことをされたら歯形ができる。そうわかっていても、自分のものって印をつけられていると考えると嬉しさがすごくて、嫌がれない。 結局ずっと抵抗できなくて、やがて少しずつ性器から尿が溢れた。  恥ずかしすぎる。穴があったら入りたい。 「馬鹿」  性行為が終わると、天馬はすぐに毛布で身体を隠した。ルイに向かって枕を投げる。 「ごめん天馬、やめられなかった」 「ごめんじゃねぇよ! 服は破けてるし毛布はボロボロだし、どうすんだよこれ!」    ベッドシーツは洗えば証拠隠滅だけど、毛布と服は隠せないだろ。 「俺も一緒に謝るから……怒んないで?」 「もう怒ってない。でも……恥ずかしすぎて死にそう」   かけ布団の中に潜り込んで身体を隠す。 「俺女みたいだった。わけわかんない声ばっか出して」 「でも可愛かったよ」 「どこかだ!」  身体にかけていた布団を投げる。ルイに当たって、ポフッと布団は音を立てる。 「なんで俺がされる側……しかもハーフだから力じゃ敵わなくて抵抗できないし」  生まれつきの差を恨む。自分の方が歳上なのに、身長しか勝っていない。 「嫌? 天馬が俺を支配したい?」 「別にそうじゃない、支配されんのも愛されてる気がするからいいけど……こんな淫らになんの恥ずい」  ルイがそっと天馬に布団をかけてくれる。 「でも綺麗だし可愛いよ? 俺にはそう見えるから」 「……っ、離れるなよ。俺、こんな身体、お前以外に見せたくない」  腕を掴んで、そのままルイを抱きしめる。 世界に二人きりだったらいいのに。そしたらきっと、恥ずかしがる必要なんかない。 でもやっぱり、おばさんや父さんにも生きていて欲しいから、二人きりは嫌だな。 「離れないよ」  ルイに抱きしめられる。爪が食い込んで少し痛い。でもその痛みすら、少しだけ愛しい。 (了)

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