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第6話〜確かな変化〜
後日の配信収録後。
紅が陽太へと軽く近づく
「ねえ陽太、なんか今日げんきなくない〜?」
と、頬をつつく
陽太は目を逸らし
肩をすくめてぷくっと頬を膨らませる。
「べつに、そんなこと…ない!」
──その言葉はしっかりとした反応を示していた
紅の頬つつきがもう一歩踏み込みそうになった
その瞬間──
蒼都が反射的に陽太を引き寄せた
紅の前に立ち、自分の胸に陽太をそっと押し込む
陽太は驚きとともに顔を赤らめ
「えっ──!」
と小さく声を漏らし、身体を強張らせる。
蒼都もそれに動揺し、頬が真っ赤
軽く目を逸らしながら、手を引っ込めて──
「ご、ごめん…つい、思わず……」
と、小声で
陽太は慌てて距離を取るように後ずさる。
「あ、うん…大丈夫…」
声がかすれ、視線は下向きのまま。
二人はそれぞれ体を引き
数秒後に顔を見合わせる。
どちらからともなく慌てて視線を逸らす
頬が紅潮しているのは明らかだった
──お互い
自分の心臓が跳ね上がったことを認めるように
その光景を、翠がじっと観察していた。
一方で紅は首をかしげ
首の後ろを掻きながら目をぱちぱちさせる。
「なぁんで〜? どうして二人ともそんなに慌ててるの?」
と不思議そうに問いかけ
その純粋さが場をさらにほんの少しだけ和ませる。
控え室には静かながらも充満する
“変化の気配”
紅の無邪気さが引き金となり
蒼都と陽太の間で可視化された確かな変化
翠の観察者的な視線と、紅の無邪気な質問が
それを一層際立たせていた
配信部屋を出た後、廊下を歩く四人
――翠、蒼都、陽太、紅
表情の端々に、沈黙と緊張が漂っていた。
そんな中で紅の
「……なんで空気、こんなに重いんだろ」
無邪気なその言葉がふと誰かの耳元へ届きそうで
3人の視線が交錯する
けれど誰も言葉を続けなかった
翠は内心で小さくため息をついた。
“配信直後で疲れてるのはわかる。でも、蒼都と陽太の距離がゆがんでる。絶対に普通じゃない――”
そこで翠は決断した
ピシリとした表情で2人を見つめる
「──蒼都、陽太」
ふたりをじっと見て、それから軽く息をついた。
「私はこれから一度ミーティングがあるから。
君たちは蒼都の部屋に行ってちゃんと話せ。
私が戻るころには……この空気が…
息が詰まってなければいいなって思う」
蒼都は軽く頷き
陽太は目を伏せたまま「うん」とだけ答える。
四人でいたのにいつの間にか二人になった空間に
二人ともぎこちなく沈黙した。
蒼都は一旦
「ごめん、部屋で待ってて」
と小さく耳打ちして、戻っていった。
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