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プロローグ
――好きです。
その言葉が聞こえてきたのは渡り廊下の中腹を通りかかったとき。
渡り廊下から見える奥の中庭を覗くと、同じクラスの親友が告白されたのが見えた。
顔の赤い女の子と少し狼狽えた表情の透也 。
なるほど、面白いものをみた。
教室に戻ってきたらからかってやろうと思う気持ちと、その反面でなぜか心が一瞬痛む。
透也がなんて返事をしたのかは知らない。
教室に戻ってきた親友は少しバツが悪そうにこっちを見て苦笑いをして、同じように苦笑いを返した。
透也が自分の手を見ながらグーとパーで握ったり開いたりを繰り返しながら自分の席へ戻る。
その行動が何を示しているのかは分からないけど、心がざわつく。
帰り道は同じはずなのに、さっきの話題は僕からも透也からも切り出すことはないまま別れた。
いつもと同じ帰り道、からかう気持ちはどこかに消えて残ったのはただ痛い気持ちだけ。
その痛みが自分の心の隅に黒い小さなしみができたことを、僕はまだ知らない。
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