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01告白
「なぁ、俺とお前とでカップルになるとしたら、お前男役と女役どっちがいい?」
「なんだよ、その不気味な質問」
「どっちがいい?」
「そりゃ、亮の方が背が高いから男役なんじゃないの」
「ふーん、じゃあ。智也は女役だな。決まり」
「それでなんなのその不気味な質問」
僕たちは高校三年生の十八歳で放課後に教室に食べ物をもちこんで話していた、そうしたらいきなり亮がそんなことを言いだした。男役と女役って今度の文化祭か、そういえば何か演劇の募集をしていた。
「高橋亮!! 川端智也!! いつまでも教室にいないで帰りなさい!!」
「あかりちゃん、またねーー!!」
「やっばい、灯先生だ」
僕と亮は急いで教室を飛び出した、そうして馬鹿話しながら帰った。僕が帰るのは普通の一軒家だ、ただし亮は違った。一体何人住んでるのと言いたくなるような大豪邸だった。学校の噂では財閥の息子だとか、御曹司だとか言われていた。そんな亮からラインがきた。
”演劇部の仮装で俺は男役な、それでお前は女役”
”あの不気味な質問の意味はそれか”
”劇は演劇部員が演じるから、俺たちは人集めの見世物だ”
”僕に何も言わずに引き受けるなよな”
”悪い、悪い、何か奢るからさ”
”高い物を頼んでやるから”
そんな会話をラインでした、演劇部の見世物とは正直言って面倒くさかった。でも亮の頼みなら仕方ないかと思った。僕の唯一の友達だからだ、僕は友達を作るのが下手だった。でも亮は何度も何度も僕に話しかけてくれた。本ばかり読んで友達のいなかった僕の友達になった。
「亮からの頼みじゃ断れないや、好きだもん」
僕と友達になってくれた亮を僕は好きになった、恋愛的な意味で好きになった。だから亮が望むことならなるべくなんでもしてやりたかった。あまり奇抜な仮装じゃありませんようにと思って眠りに落ちた。そうして翌日僕たちは演劇部で衣装あわせをされていた。
「……結構、本格的だね」
「そう、本格的な中国っぽい劇なの!!」
僕は衣装を着せられたが、本当に中国のお姫様のようだった。当日は化粧もするということで、僕は気が重かった。
「よぉ、みろよ。この俺の王子様の様子を」
「亮には似合っているね」
亮は本当に衣装が似合っていた、中国の皇帝みたいだった。そうして女の子に囲まれて褒められている亮を見ると複雑な気持ちになった。しばらくして衣装は脱がされて僕たちは自由になった。
「ああ、肩こった。文化祭当日が楽しみだな」
「僕は今から胃が痛いよ」
「そんなに緊張することじゃないだろ」
「亮と違って僕は繊細なの!!」
そう言い合いながら僕たちは教室に向かった、大学受験に向けて今は授業がなく自己学習になっていた。僕は受ける大学を決めていた、亮は受ける大学をなかなか教えてくれなかった。きっと僕とは違う大学だろう、亮との付き合いも高校まででお終いだ。
「自己学習しておこうよ、僕は大学を落ちたくない」
「そうだな勉強するか、俺も大学はいきたいしな」
「亮はどこの大学を受けるの?」
「ん-、お前と同じ大学を受ける」
「えっ、亮ならもっといい大学を狙えるんじゃ」
「いいんだよ、大学でも一緒だぜ俺たち」
亮が僕と同じ大学を受けると聞いて驚いた、それと同時に大学まで亮と一緒かと思った。そうするとこの片想いも続くので僕は素直に喜べなかった。だから静かに勉強に集中した。亮も真面目に勉強していた。休み時間になって一緒にご飯を食べていると亮が言った。
「しかし、俺はこの見た目で面接に受かるかな」
「亮のお母さんからの遺伝だから仕方ないでしょ」
亮は金の髪に青い目をしていた、外国人である母親からの遺伝だった。この高校でも初めのうちは亮は見た目で苦労していた。風紀委員から追い回されて、亮は医者からの証明書を提出していた。
「面接官に母親からの遺伝なんですって言えばいいよ」
「日本人は金髪は染めたもんだって、すぐに決めつけるからな」
「堂々としていれば面接官も納得するよ」
「面倒くせぇ、あー、面倒くせぇ」
そうしているうちに文化祭が始まった、僕は衣装を着て化粧をされて驚いた。鏡をみると華奢な美少女がそこにはいた。亮も中国の皇帝みたいになっていた、そして僕の姿を見ると驚いていた。それから僕と亮は『二時から演劇部で開演!!』という板を持って歩いた。僕らは注目の的だった、僕を本物の美少女だと勘違いをして口説いてくる男までいた。そんな奴らは亮が追い払ってくれた。そうして文化祭は終わった、僕は衣装を脱がされて化粧を落とされ元の姿に戻った。そうして、教室で二人きりになったら亮から言われた。
「俺は智也が好きだ」
「はい、はい、ありがと」
「俺は真面目に言ってるんだ、智也。お前が好きだ」
「ど、どうしちゃったの。亮、いきなりそんな……」
僕は亮から好きだと言われて素直に嬉しかった、僕も亮が好きだったから幸せだった。亮はこれからのことについて僕に話してくれた。大学に受かったら二人暮らしをしていずれ日本で同性同士の結婚ができるようになったら、結婚するつもりだと言われた。
「あはははっ、亮は勝手だなぁ」
「お前だって俺のこと好きだろ!!」
「いや、僕は亮のことは友達だって思ってる」
「ただの友達かよ」
「そうだよ、ただの友達。だから亮も僕なんかやめときなよ」
「どれだけ俺がお前を好きか教えてやる」
そう言って亮から僕はキスをされた、僕はびっくりして声もでなかった。ハッと気が付いて僕は亮から逃げようとした、でも捕まった。捕まって僕は何度も亮にキスをされた、初めのうち僕は歯を食いしばっていたけれど、口をあけたとたん亮の舌が入ってきた。僕はむりやり亮を引きはがした。
「いきなりこんなことするなんて酷いよ」
「智也が可愛いから、好きだからしてるんだよ」
「僕は亮が好きじゃないから、放っておいて」
「智也!!」
僕は亮を置いて教室を出て走った、走って走って自分の家に帰った。家に帰ったら自分の部屋のベッドで僕は考え込んだ。いろんなことが起こりすぎて混乱した。でも亮にキスされたことは嬉しかった。嬉しくて嬉しくて僕は泣いた。やっぱり僕は亮のことが好きだった。
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