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「では、失礼」
暁斗は、昴の白い頬に手を添えると、そろそろと顔を近づけていった。
我慢比べだ。
チキンレースだ。
どちらかが、怖気づいて顔を逸らすまでの、甘い遊び。
そしてそれは、絶対に昴の負けだと、暁斗は信じて疑わなかった。
だが、昴は思いのほか頑張った。
顔が近付き、鼻にかすり、唇がわずかに触れても、動こうとしない。
息を詰め、こぶしを握り、長い睫毛を震わせて上を向いたままだ。
ここまでくれば、こちらから降参するのは逆に失礼というものだろう。
(昴さまは、本当に。私に唇を許す覚悟なんだ)
いまさら笑ってごまかすなど、この誇り高い主人は許してくれないだろう。
もしこれが、昴の策略ならば、暁斗は失職する。
彼の父に告げ口されて、この屋敷を追い出される。
(しかし。この誘惑には、とても勝てそうにない)
もう、たとえそうなっても構わない、と暁斗は思った。
(この美しい方と、ほんのひとときでも愛し合えるのなら!)
ついに、二人は触れ合った。
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