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「暁斗。いったい何をしているんだ?」
昴の不思議そうな声に振り向いた暁斗は、手にした杯を掲げて見せた。
「これは昴さま。月を、愛でておりました」
「月を?」
暁斗が体をずらして空けた場所に、昴は腰掛けた。
大きく開いた窓から天を仰ぐと、月が良く見える。
煌々と輝く満月は、確かに美しい。
だがしかし。
「月はともかく。このミートボールと、雑草は何なんだ」
これですか、と暁斗は照れ臭そうに微笑んだ。
「団子よりミートボールの方が、ビールに合いますので。花も、リンドウやススキがあればよかったのですが、季節が違いますので」
ふうん、と昴はミートボールをひとつ取って口に運んだ。
中秋の名月には、藤原家も大々的な宴を開く。
だが、そうでない時の満月を特別に見る暁斗は、ちょっと変わっている。
そんな風に、昴は思った。
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