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昴がノックをしても、何の反応も返ってこなかった。
ここは、執事の間。
そして、暁斗の部屋の前。
「いないのかな……?」
ノブを回して押すと、ドアは静かに開く。
鍵がかかっていないのだから、暁斗はいるはずだ。
「この僕の訪問に、返事もしないなんて!」
プンプン怒りながら、昴は室内へ進んだ。
奇妙なことに、照明はひかえめに落とされている。
だが、窓から差し込む月の光で、昴は不自由なく歩くことができた。
その薄暗い室内の窓辺に、暁斗はいた。
何を考えているのか、窓際にソファとローテーブルを移動させ、そこで一献傾けているのだ。
テーブルの上にはビールの他に、皿に盛られたミートボールが。
そして、野草が数本グラスに活けてあった。
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