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「どうなさいました」 「今日……図書館の司書に、この腕に触られた。気持ちが悪かったんだぞ!」 「それは災難でございました」 「まぁ、こんなに美しい腕なら、触ってみたくもなるだろうけど」 「そうですね」 「君も……触りたくならないか?」 「触って欲しいのですか?」  意地悪な暁斗の言葉に、昴は違うと大声をあげたくなったが、ぐっと堪えた。  今夜は、意地を張ってはいけないのだ。  意地を張らなくても、暁斗に触れられると気持ちが悦いのかを、試しにきたのだから。 「別に、触っても……いいよ」  何とも素直でないことだ、と暁斗は心の中で笑っていた。  先程から、やたら腕を動かしていたのは、俺に触れて欲しかったわけか。 「図書館の司書は数名おりますが……あの小太りの男でございますか?」  暁斗は、そう問いかけながら昴の手を取った。  思い描いた司書は、日頃からセクハラで悪名高い輩だ。 「うん……」 「それはさぞ、気分が悪かったでしょう。私が清めて差し上げます」  暁斗は昴の腕をするりと一撫ですると、その手の甲に口づけた。 「あ!」  まさか、速攻でキスしてくるなんて!  

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